運転する日の靴、どうしてる?ドライビングシューズの選び方とおすすめ5選
高速道路を三時間走った後、サービスエリアで車を降りて、右足の付け根がやけに疲れていることに気づく。
長距離を運転した日の、あの独特の疲れ方。腰でも背中でもなく、アクセルを踏み続けていた足首まわりだけがだるい。私はずっとこれを「運転とはそういうもの」だと思っていました。ところがある日、たまたま薄い底の靴で運転して、まったく疲れなかった。そこで初めて、原因が靴だったと気づいたわけです。
帰省や旅行で長時間ハンドルを握る機会が増えるこの時期に、運転する日の靴について整理しておきます。
運転しにくい靴には共通点がある
車を運転する足の動きは、歩くときとまったく違います。かかとを床につけたまま、つま先だけでペダルを踏んだり離したり、アクセルとブレーキの間を行き来したりする。この「かかとを軸にした回転運動」が、運転の基本動作です。
ここから、運転に向かない靴の条件が見えてきます。
まずソールが厚い靴。ペダルを踏んだ感触が足裏に伝わってこないので、どれくらい踏み込んでいるのか分かりにくい。厚底のスニーカーで運転していて、ブレーキの効き具合が掴めず「あれ」となった経験がある人もいるはずです。
次にかかとが角張っている靴。かかとを軸にしてつま先を左右に振るとき、底の後ろ側が四角いと引っかかって回りません。ドライビングシューズのかかとが丸く、後ろまでゴムが回り込んでいるのは、この動作のためです。
そして重い靴。数百グラムの差でも、足を持ち上げる動作を何千回と繰り返せば効いてきます。ブーツで長距離を運転した後の疲労感は、この積み重ねです。
最後に、脱げる靴。これが最も危険です。
サンダルやクロックスでの運転について
ここは強めに書いておきたいところです。
かかとが固定されないサンダルやクロックス、スリッパの類は、運転に使うべきではありません。理由は単純で、ペダルの下に潜り込む可能性があるから。ブレーキを踏もうとした瞬間に足元で靴が引っかかる状況を想像すれば、リスクの大きさは分かってもらえると思います。
法律面でも、多くの都道府県が道路交通法の規定にもとづく細則で、運転操作に支障をおよぼす履物での運転を禁止しています。表現や対象は自治体によって異なりますが、取り締まりの対象になり得るという点は共通しています。
とはいえ、夏場に海やキャンプへ行く日に、サンダルを一切履くなという話ではありません。運転用の靴を一足、車に積んでおけばいいだけです。目的地に着いたら履き替える。この習慣がつくと、安全面でも快適さでも得をします。
運転に向く靴の3つの条件
ソールが薄く、しなやかであること
ペダルの感触が足裏に届くこと。これが第一条件です。踏み込みの微調整ができると、運転そのものが滑らかになります。同時に、甲がしっかり曲がる柔らかさも必要。硬い靴だと足首まわりに余計な力が入ります。
かかとが丸く、床で回しやすいこと
かかとを支点にしてつま先を振る動作がスムーズにできるか。専用のドライビングシューズは、かかとのゴムが後ろから甲の下まで回り込んでいて、この動きに最適化されています。
脱げず、しかも脱ぎ履きしやすいこと
矛盾するようですが、両立している靴はあります。かかとがしっかり収まるスリッポンやモカシンがそれ。運転中は脱げず、サービスエリアで降りるときはさっと脱げる。長距離ドライブでは、この気楽さがかなり効きます。
おすすめ5選
1. Clarks ドライビングシューズ(定番として堅い一足)
クラークスの ドライビングシューズは、この分野で最も手に取りやすい定番です。イギリスのブランドらしく、実用一辺倒ではない品の良さがあります。
底には小さなゴムの粒が並んでいて、これが滑り止めとペダルの感触の両立を担っています。中敷きには通気性とクッション性を持つ素材が使われていて、長時間履いても蒸れにくい。そして何より、運転していないときも普通に格好がつく。ドライビングシューズは車を降りた瞬間に急に貧相に見えるものが少なくないのですが、これは目的地でそのまま歩けます。ドライブと観光がセットになる旅行に、ちょうどいい相棒です。
2. ECCO スリッポン(柔らかさで選ぶ一足)
エコーのスリッポン系は、デンマーク発のブランドが作る、とにかく柔らかい革靴です。
エコーは自社で革をなめし、ソールを直接アッパーに接合する製法を採っています。だから履き始めから硬さがほとんどない。この柔らかさが、運転時の足首の自由さにそのまま繋がります。ソールはドライビング専用ほど薄くはないものの、屈曲性が高いのでペダル操作を妨げません。むしろ「運転もするが、着いてから一日歩き回る」という使い方には、こちらのほうが向いています。運転専用と割り切れない人の現実解です。
3. REGAL モカシン(国産の足型で選ぶ)
リーガルの モカシン系は、日本人の足に合わせて作られた木型が武器です。
輸入もののドライビングシューズは細長い作りが多く、幅広の足だと小指が当たります。長時間の運転で足がむくんでくると、この圧迫がじわじわ効いてくる。その点、国産の木型は横幅に余裕があり、むくんでも窮屈になりにくい。革の質もしっかりしていて、履き込むと足に沿ってきます。帰省で年に数回しか長距離を走らないという人にとっては、普段のビジカジにも使える一足として買っておくと出番が増えます。
4. Vans スリッポン(薄底が効く変わり種)
バンズの スリッポンを、運転という文脈で挙げます。変わり種として選びました。
バンズはもともとスケートボードのブランドで、デッキの感覚を足裏で感じ取るためにソールを薄く作っています。この設計が、そのままペダルの感触の伝わりやすさになる。歩く靴としては「クッションがなくて疲れる」と言われる弱点が、運転では長所に反転するのが面白いところです。紐がないので脱ぎ履きも速く、値段も気楽。車に一足放り込んでおく運転専用靴として、これほど合理的な選択もありません。ただし歩き回る日は別の靴を持っていってください。
5. Crocs かかとストラップ付き(車内の履き替え用という変わり種)
クロックスをここに入れるのは、運転用としてではありません。降りてから履くための一足として、もうひとつの変わり種です。
前述したとおり、かかとが固定されない状態での運転は避けるべきです。ただし、キャンプ場や海辺、サービスエリアの短い散歩といった場面で、さっと履ける靴があると本当に楽なんですよね。クロックスならかかとのストラップを前に倒せばサンダルとして、後ろにかければ固定されるので、車内に積んでおく一足として優秀です。濡れても汚れても水で流せる気楽さもある。運転用と目的地用を分ける、という発想の象徴としてここに置いておきます。
靴以外にやっておくといいこと
まず、車に履き替え用を積んでおくこと。この記事でいちばん伝えたいのはここかもしれません。運転用と歩行用は要求される性能が正反対なので、一足で両方をこなそうとすると、どちらも中途半端になります。トランクに一足入れておくだけで、行動の自由度が変わります。
次に、長距離を走る日は休憩ごとに靴を脱ぐこと。狭い足元で同じ姿勢を続けると、足がむくんで靴がきつくなります。サービスエリアで一度脱いで、足の指を動かして、数十歩でも歩く。これだけで到着時の疲労がまるで違います。
そして運転席の下に物を置かないこと。靴の話ではありませんが、ペダルまわりの安全という意味では同じ話です。ペットボトルや荷物がペダルの下に転がり込む事故は実際に起きています。足元は常に空けておいてください。
まとめ
運転する日の靴は、歩く日の靴とは求められるものが違います。薄くて、しなやかで、かかとが丸くて、脱げない。この条件を満たす靴は、長距離を走った日の疲れをはっきり減らしてくれます。
定番で選ぶならClarks ドライビングシューズ、着いてから歩くならECCO スリッポン、幅広の足ならREGAL モカシン、割り切った運転専用ならVans スリッポン、目的地用の履き替えにはCrocsが候補になります。
そして、かかとの固定されない靴での運転だけは避けてください。安全は、快適さより先にあります。自分の足に合う一足が見つかることを祈っています。
