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こんなに可愛い草薙素子、見たことない 新作『攻殻機動隊』は「古参ファン」と「ミリ知ら」にも刺さる本格SFアニメ

士郎正宗による漫画『攻殻機動隊』(講談社/1991年刊行)と聞くと、難解なSFを想像する人が多いかもしれない。

AI、電脳、義体、ゴースト、公安9課——作中の用語を並べるといきなり専門書のように見える。

だが、ざっくり言えば『攻殻機動隊』は「人間の身体や脳がテクノロジーとつながった未来で人間とは何かを問う作品」である。

舞台は西暦2029年。ネットワーク技術が発達し、人間の脳もネットにつながる。身体の一部、あるいは全身を人工の身体に置き換える人もいる。主人公の草薙素子(くさなぎもとこ)も、その一人だ。

草薙素子は、人間由来の脳を持つ「義体」のサイボーグである。つまり、身体のほとんどが機械だ。

けれど、そこに宿っているものは何なのか? 原作漫画では、作者がゴーストを「霊魂」と説明している。つまり、「この人はこの人だ」と感じさせる核のようなものだ。

2026年7月7日からカンテレ・フジテレビ系全国ネットで放送が始まった新作TVアニメ『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』(監督:モコちゃん)は、この複雑な世界を一気に見やすい作品として描いていた。

そして、筆者は驚愕した——こんなに可愛い草薙素子をこれまで見たことがない。

強くて、賢くて、ふてぶてしい少佐

主人公である草薙素子少佐(声:坂本真綾)は強い。また、圧倒的思考能力の持ち主で、意思決定が早い。正義感もある。

そしてお馴染みのセリフ——「そうしろと囁くのよ、私のゴーストが」

これが出てきた瞬間は、やはり鳥肌が立った。

ただし、本作の素子は、ただクールで神秘的な女戦士ではない。上官の命令に対して、平然とふてぶてしい態度を取る。桜吹雪の中で一杯やりながら反抗する——「やなこった。へへーん!」と。

ここには、士郎正宗の原作漫画にいた素子の空気がかなり濃く出ている。

これまでのアニメ版『攻殻機動隊』では、草薙素子はどこか「完成された存在」として描かれることが多かった。特に押井守監督版の印象が強い人にとって、素子は哲学的で、無機質で、近寄りがたい人物かもしれない。

だが、原作漫画の素子はもっと俗っぽい。よく怒る。よくふざける。表情も崩れる。部下たちとの距離も近い。今回の新作は、そこをかなり丁寧に拾っている。

電脳化&義体化しても、恥ずかしいものは恥ずかしいらしい

特に象徴的だったのが、素子の電脳に同僚たちが入り込む場面だ。

電脳とは、簡単に言えば、脳がネットワークにつながっている状態である。だから他人の電脳にアクセスするということは、他人の頭の中に入るようなものでもある。

その場面で、同僚であるバトーたちは素子の電脳に対して無遠慮にコメントする。

「ノイズが多いな、お前の脳は」「何すか?この苦いの。鎮静剤っすか?」

それに対して、たちまち素子は恥ずかしがる。顔を赤くし、汗をかき、怒りながら照れる。ここが可愛い。

ちなみに、原作漫画ではこの場面について、素子が「生理だからだよ」という台詞がある。今回のアニメではその説明はカットされていたが、知っていると場面の意味は分かりやすい。

つまりこれは、単に「ネットに接続された脳」の話ではない。電脳化しても身体の感覚や体調は消えないのだ。

普段は圧倒的に強い素子が、自分の頭の中を他人に覗かれて、思わず素の反応を見せる。そういう感情の揺れがあるから、草薙素子はただの高性能サイボーグではなく、一人の人間として見えてくる。

平成初期の漫画を現代の映像文法で再起動したアニメ

本作の面白さは、平成初期の漫画らしさにある。

第1話では、懐かしのブラウン管テレビのような画面演出が多用されていた。走査線が入り、画面の端がわずかに湾曲する。

さらに、原作漫画にあった細かな注釈や説明文のような情報が、テロップとして画面に入る。これは原作ファンにはかなりニクい演出である。

また、キャラクターの表情も近年のアニメ版とはかなり違う。

怒った顔には怒りマークがつく。言い争いの場面では口元からツバが飛ぶ。「やれやれ」という顔の眉毛はくるりんとする。本来はシリアスなSFなのに、ところどころ平成初期の漫画的なデフォルメが入る。

近年の『攻殻機動隊』は、どのキャラクターも洗練され、かなり端正な顔立ちになっていた印象がある。だが素子の上司である荒巻部長は、原作漫画どおり「サル顔」だ。ここも嬉しい。

ただし、映像の作りは完全に現代のアニメである。

輪郭線は繊細。構図も新しく、歩いているキャラクターをローアングルで追いかけるようなカメラワークがある。冒頭の秘密会議の場面では、手持ちカメラのようなわずかな揺れが入り、まるで隠し撮りを見ているような緊張感がある。

また、XRゴーグルを覗いて索敵する場面では、VFXが駆使されている。

古いモニター風の画面と、現代的なデジタル演出が同じ作品の中に並んでいるのだ。

つまり本作は、「昔の攻殻」をそのままなぞっているわけではない。士郎正宗の原作漫画を、2026年の映像文法で再起動している。

怖すぎない、暗すぎない——だから入門編として強い

『攻殻機動隊』というと、大人向けの作品という印象がある。もちろん、扱っているテーマは重い。政治家の陰謀、ネットワーク犯罪、電脳への侵入、身体の改造……。

それでも、本作は暗くなりすぎない。

なぜかというと、先述のとおり、デフォルメされた表情が入る。バトルシーンでも、BGMはジャズやロック。そして、King Gnuによるオープニングテーマ『GO GHOST』も、作品全体に疾走感を与えている。

また、『攻殻』的な残虐描写や露骨な性的描写は、第1話を見る限り、かなり抑えられている。少なくとも、過度に刺激的な描写で初見の視聴者を突き放すタイプの作品ではない。

そして、セリフや文字などの情報量もちょうどいい。だから、一番入りやすい『攻殻機動隊』かもしれない。

2026年に新作『攻殻機動隊』を見る意味

AI、ロボット、VR、メタバース、サイバーセキュリティ。2026年の現実は、『攻殻機動隊』が描いた未来に少しずつ近づいているようにも見える。

だが、この第1話を見て改めて思った。『攻殻機動隊』は、未来技術のカタログではない——身体が機械になっても、脳がネットにつながっても、人間はどこまで人間なのか?

新作『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』は、その大きな問いを抱えながらも、本格SFでありながら、気軽に見られるエンターテイメントとして仕上がっていた。

古参ファンは、細かな演出まで原作回帰を楽しめる。初めて触れる人には、意外なほど見やすい入門編だ。

そして何より、草薙素子という主人公の魅力を、もう一度発見できる作品になっている。

今年の新作、かなり期待していいと思う。

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