第1章⑥母が壊れた日
そんな生活が続いた頃、
母は体調を崩した。
今思えば、
心も体も限界だったのだと思う。
義理の父の酒乱。
暴力。
逃げるように夜道を歩いた日々。
そんな中で、母は少しずつ壊れていった。
そして、私が5歳から7歳くらいの頃、
母は入院することになった。
子どもの私には、
何が起きているのか、よく分からなかった。
ただ、
母がいない。
それだけが怖かった。
母がいない家。
母がいない夜。
子どもながらに、
心細さを抱えていた。
でも、そんな中でも、
母は私を心配していた。
本当は外泊許可が出ない時だった。
それでも母は、
病院を抜け出して会いに来た。
理由は、私のことが心配だったから。
私はその頃、
義理の父に時々殴られていた。
夜になると暴力を受け、
顔には青あざができていた。
体にも、あざがあった。
母は、そんな私を見た。
そして泣いた。
泣きながら、
私の顔を見ていた。
今でも、その時の母の顔を覚えている。
どんな気持ちだったんだろう。
悔しかったのか。
苦しかったのか。
自分を責めていたのか。
それは今でも分からない。
でも、あの時、
母が泣いていたことだけは覚えている。
そして母を病院へ送る時間になった。
私は笑顔で「バイバイ」をした。
本当は寂しかった。
本当は泣きたかった。
でも、泣けなかった。
泣いたら怒られると思ったから。
必死に涙をこらえていた。
だけど、
涙がこぼれた瞬間――
私は蹴られ、殴られた。
母は泣きながら止めていた。
あの日のことを、
私は今でも忘れられない。
