【21グラムの落とし物】#2 正論という名の支配、あるいは「鏡」を失った私
正論は、正義ではなかった。 正論は、ただの「証明」だった。
相手が言い返せなくなり、場が凍りつき、人が去っていく。 その「空っぽになった店」こそが、私の正論が「間違い」であったことの、何よりの証明。
私は、正しさを手に入れて、人を失った。
その時、私の手元に残った「21グラム」は何だったんだろう。
――あなたは今、誰かに「正しいこと」を突きつけていない? その先に、何が残るか見えてる?
飲食店をしている時、私は鬼店長だった。
バイトは怖がり委縮する。
優越感を得たいと言うより、指摘されたことができない能力へのいら立ちが、言葉に出る事が多かった。
20人いたバイトも最後は7人まで減った。
原因の一部は自分にある。
ただ、そこには、バイトで雇っているだけだと言う心無き暗黙ルールが私の中にはあった。
今思うと、ただの傲慢で、なぜできないかを考えてはいなかったのが原因。
相手は、雇われている以上文句が言えない。言えないからやめる。
中には文句を言ってくる人もいた。
じゃーどうすればよかったんですかって。
たんたんと答える。
その時は、ランチの忙しい時間帯。
レジに人が並び始めた時、その子は言った。
「オーナー、レジお願いします」
この言葉に私が反応した。
あの言い方。
たぶん普通に聞いたら、ただの一言。
でも私は、違うふうに聞いた。
――「私、ちゃんと見えてます」
――「仕事できてます」
そういうアピールに聞こえた。
その言い方、変えて。
じゃーどうすればよかったんですか
お客さんに言って。今すぐ参りますのでって、オーナーに聞こえるように言って。
その言い方は、雇われているあなたがオーナーに指図している物言いになってる。
で、その子は泣いた。
たぶん、悔しかったんだと思う。
ただ、言い逃れは出来ない。
お客さんに配慮して、オーナーに言う。ここまではいい。
ただ、配慮すべき対象がお客さんなら、お客さんに配慮した言葉を放つべき。
しかもその当時で、その子が一番新人のバイト。
分からないのなら聞け。
ただ、それができない人もいるということを、ラーク自身も気づいていなかった。だから、言葉がきつくなった。
正論を盾に、相手を追い詰めていたあの時の私は、 一体どこに、何を置いてきていたんだろう。
――もう一つ、分かったことがある。
私は、何も渡していなかった。
分からない人がいる前提で、
「こういう時はこうする」という形を、先に置いていなかった。
だから、相手は自分のやり方で動くしかなかった。
その結果に対して、
あとから“正しさ”を被せて、潰した。
次は、あなたの番。 あなたが握りしめているその「正論」、
その先に、何が残るか見えてる?
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