久しぶりに会った男友だちのキャップの下と、私の脳内シミュレーション
この期間、久しぶりに遠方に住む友人たちと会う機会が増えている。
ここ5年ほど、お盆も年末年始も関係のない環境で働いていたため、この解放感と念願の再会はまさに感無量だ。
しかし、5年という歳月は容姿に確実な変化をもたらす。
女性陣は美意識の高さゆえか当時の面影を綺麗に保っているのだが、問題は男性陣だ。
会った瞬間の変化に、思わず言葉を詰まらせることがある。
一番の変化は、毛髪だ。
一部の男性陣は何故か一様にキャップを被っており、その時点で大体の察しはついてしまう。
そして、誰もが口を揃えたようにこう言うのだ。
「いやー、実は髪、薄くなってきちゃってさぁー」
そう言って、キャップを脱いで見せてくるのだが、正直なところ私はこの瞬間のリアクションに一番困惑する。
脳内で高速の回答シミュレーションが駆け巡る。
「そんなことないよ〜」→あまりにも嘘くさい。
「えぇー?そうー?」→白々しすぎる。
「変わらないよ〜」→変わっているって!
「本当だね」→ド直球すぎる。
「大丈夫だよ」→何一つ大丈夫ではない。
「いいじゃん!」→何が良いのか説明できない。
「今、人工的なのあるじゃん」→余計なお世話の極み。
「やだー」→純粋に傷つける。
「……(凝視して黙る)」→これが一番最悪だ。
結局、困惑を悟られないよう相手の言葉に被せる勢いで、
「でさ!〇〇(兄弟)は元気にしてる!?」
と無理やり話題のハンドルを大きく切って事故を回避するのが精一杯だ。
昔ならいくらでもイジれたネタなのに、現実味を帯びた途端に取扱難易度が爆上がりする。
目の前には、なぜかドジャースとエンゼルスのキャップが乱立している。(大谷選手の影響?)
不思議なのは、一度自白して脱いで見せたのに、なぜまた被るのだろうか。
その一連の動作のせいで、こちらはまるで「開帳された秘仏」を拝んでしまったような気持ちになり、以降その話題は絶対不可侵の禁忌(タブー)と化す。
周りの友人たちも一切毛髪に、それどころかキャップのことにも触れなくなる。
もはや眉毛より上に視線を送ってはならないものとなるのだ。
全員、私と同じく秘仏を拝んだ心理的攻防を繰り広げているのだろう。
一人だけ潔く坊主にしている奴がいたが、それくらい振り切ってくれるとこちらも気を使わずにイジれるので本当にありがたい。
しかしまだ隠したい年頃の彼らを見ていると、「このまま抵抗を続けた結果、彼らはいずれバーコードに行き着いてしまうのでは……」と余計な心配をしてしまう。
そもそも、あのバーコードというスタイルは一体誰が最初に思いついたのだろう。
サイドの長い毛を横滑りさせるあの部分的なワンレングス。
そして何より、あの髪型の人がお風呂で髪を洗った直後、乾かす前の姿はどうなっているのか。
一度でいいから、その「素の状態」をお目にかかってみたいものである。
それこそ何十年に一度のご開帳の秘仏を拝むことと同様なのかもしれない。
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