No choice but to fight
戦場に出れば、誰もが死にものぐるいで戦うしかない。
僕は、いつの間にか戦士になっていた。
いや。
或いは、兵士だったのかもしれない。
そもそも、戦場に出るつもりなんてなかった。
僕の手元にあったのは、小さなナイフ一本だけだった。
誰とも争いたくない。
誰とも競い合いたくない。
僕はただ、部屋で一人、音楽を聴いたり、本を読んだりしていれば、それで十分だった。
それなのに。
気が付けば、僕は戦場にいた。
友達の何人かは、既に死んでいた。
薄暗い目をして、それでも鈍く輝かせながら言っていた。
「俺たちは適応したんだ」
「成長したんだよ」
僕には、それが死んだ人間の言葉にしか聞こえなかった。
それでも僕も、とうとう観念しなくてはならなくなった。
小さなナイフ一本では、どうにもならない。
僕は、よく分からない大きな剣と拳銃を与えられた。
そして、戦場へ向かった。
その先には、なぜか男が三人、椅子に座っていた。
彼らは僕に、いくつか質問をした。
僕が答えると、
「面白いね」
と言った。
そして、何か契約書らしきものを書かされた。
気が付けば僕は、
白くて大きな建物の中にいた。
空調の効いた、快適な部屋だった。
窓の外には、青空が広がっている。
銃声は聞こえない。
血も流れていない。
誰も死んでいない。
それでも僕は、
今日も戦争に巻き込まれている。
銃声の代わりに鳴り響く、打鍵の夥しい音。
机の上には、大量の書類が積まれている。
斥候から届けられた報告書のようだった。
今日も営業は、別の軍事組織へ交渉に向かう。
仲間の何人かは、心を壊し、戦線から離脱した。
人事は欠員を補充するため、
「仕事よ、こんにちは」
という名の戦場へ、新しい兵士の徴兵をかける。
血の代わりに流されるのは、時間と精神力か。
そして僕たちは今日も、
白くて快適な建物の中で、
誰にも血を流させることなく、
誰の命も奪うことなく、
それでも確かに、
殺されかけている。

