ものは考えよう。〜日当たりの良い家が、突然「深海」になった日〜
うちの家は建売だ。
周辺には大きな土地に広い庭を構えた家々が並んでいる。
我が家は、その大きな土地を3区画に分譲したうちの1つ。
周りと比べれば小ぶりだが、自分たちにとってはこれで充分すぎるほど満足な我が家だった。
購入した当初、裏庭の奥にはお隣の広々としたお庭が広がっていた。
南向きで、早春には立派な枝垂れ梅が綺麗な花を咲かせる。その景色を「借景」として楽しませてもらい、実際の広さ以上の開放感を感じていた。
部屋の中に差し込む日差しは、眩しいくらいの採光。家族みんなで「いい家を買えたね」と喜んでいた。
ところが数ヶ月後、何やら様子が変わってきた。
裏庭の向こうを、工事業者がウロウロと行き来し始めたのだ。
楽しみにしていた梅の木はあっさりと切り倒された。
そして我が家の敷地ギリギリの場所に、青いブルーシートで厳重に囲われた、まるで巨大なサティアンのような建築現場が出現した。
その日を境に、我が家の世界は一変する。
部屋の中に射し込む光はすべて青くなり、家族の顔も青く染まる。
まるで深海の底に沈んでしまったかのような空間。
かつての煌々とした陽射しの世界はどこへやら、一瞬にして「青い世界」へと変貌を遂げてしまったのだ。
「こうなることが最初から分かっていたら、この家を買わなかっただろうか?」
薄暗くなった部屋で、何度か自問自答してみた。
答えは「……いや、やっぱり買ってたな」。
立地や間取り、自分たちの身の丈に合った心地よさ。トータルで考えたら、やっぱりこの家を選んでいたはずだ。
それなら、この先もここで住み続けていくわけだし、ウジウジ悩むのはやめて気持ちを切り替えていくしかない。
やがてブルーシートが外れ、南側には大きな家がドンと完成した。
1階のリビングは、午前中こそ明るいものの、昼過ぎからは割と暗くなる。
日当たりの変化によるメリットを一生懸命探してみたが……
「夏場、涼しくなった」
正直、考えつく良さはこれくらいだ(笑)。
欧米では南向きは人気ないらしいし。
けれど、もう言ってもどうしようもない。
日当たりが減ったなら、その分インテリアを工夫したり、家の中の居心地を整えたりすればいい。環境が変わったら、自分の捉え方を変えていくだけだ。
人生も家も、「ものは考えよう」
深海から見上げる光も、案外悪くないかもしれない。
