見出し画像

静かな夜に少し似ている

昔は、
安心という言葉がよく分からなかった。

不安がなくなることなのか。

誰かに守られることなのか。

答えはずっと見つからなかった。

でも今なら、
少しだけ分かる気がしている。

その人と過ごした時間を思い返す時。

記憶に残っているのは、
特別な出来事じゃない。

長く話した夜や。

何気ないやり取りや。

一緒に笑った時間だったりする。

何かを解決してもらったわけじゃない。

人生が変わるような出来事があったわけでもない。

それなのに。

その時間を思い出すと、
少しだけ肩の力が抜ける。

不思議なくらい自然に。

最近になって気づいた。

自分が求めていたのは、
正しい答えじゃなかったんだと思う。

全部を理解されることでもなかった。

ただ。

そのままの自分でいても大丈夫だと思える時間。

それが欲しかった。

安心は、
何かを与えてもらうことじゃない。

安心は、
自分を少しだけ許せることなんだと思う。

その人と過ごした時間は、
きっとそんな場所だった。

静かな夜みたいに。

特別じゃないのに、
気づけば帰りたくなる場所だった。



※この文章は『孤独と安心のあいだで』の一篇です。他の記事はマガジンにまとめています。

いいなと思ったら応援しよう!