地域のオモロい公務員を紹介! Vol.3 宇都宮市 間中 美徳さん
地域で仕事をするLETTにとって欠かせないのが、その地域の活性化のために奮闘する自治体職員の皆さんの存在。その中でも、ひときわ情熱を持ち、そして「オモロい」個人にフォーカスし、LETT代表の志岐が根掘り葉掘り深掘りして紹介していくコーナー。
第3回は栃木県宇都宮市の間中美徳さんです。
CIC Tokyoを拠点に宇都宮市に興味を持ってもらう「窓口」の役割
志「今日はよろしくお願いします。まずは、間中さんの現在のお取り組みやミッションについてお伺いできますか?」
間「昨年度(2025年度)の4月から現在の部署である「宇都宮市 東京オフィス」に異動になり、現在は虎ノ門ヒルズビジネスタワー内にある「CIC Tokyo」を拠点に活動しています。宇都宮市のPR全般をベースにしながら、様々なイベント等に足を運ばせていただき、宇都宮に興味を持っていただいたスタートアップ企業さん等、事業者さんが持つ技術やサービスを、宇都宮市に繋ぐ「窓口」のような役割をしています。
ただ、単なる窓口だと本当に繋ぐだけになってしまうので、市役所側が受け取りにくい部分をコーディネートしたり、逆に事業者さん側の"行政についてわからない部分"をフォローしたりしています。事業者さんからの提案が少し"営業チック"に見えてしまうような部分を、"こういう案内をしたら、一緒にやりましょうという共創として捉えていただけますよ"といった感じに、間で入らせていただいて、伴走・コーディネートをしています。
最近は官民共創だけでなく、民民(民間企業同士)のマッチングみたいなこともやり始めています。軸足は産業振興の分野にありますが、総合政策(企画部門)の立ち位置も持たせていただいて、広く地元でも活動できるような立場でやらせていただいています。東京ではイベントに参加させていただいて、ご縁を作る、ネットワーキングをさせていただくというのがメインの仕事で、ここから派生したものをどんどん宇都宮に繋いでいくという仕事をしています。」
志「東京オフィスにはいつ頃から拠点を構えているのですか?」
間「東京オフィスは、2020年の10月に「CIC Tokyo」が開業した際に、同時に開設しました。当時、東京に拠点を置いていなくて、宇都宮は良くも悪くも東京に近いので「拠点は要らないのではないか」という意見も多かったみたいなんです。
市長が民間出身という背景もあり、ビジネスの動きに敏感で「東京には人・物・情報、そして『コト』が集まる。自分たちで一次情報を取りに行かないと遅れてしまう」という想いから、東京にサテライトオフィスを構えました。」
志「実際に東京オフィスを拠点にされて、今までと違う景色は見えましたか?」
間「そうですね。市役所にいると、民間の事業者さんとやり取りする機会は、そんなに多くはありません。宇都宮にいた時は「営業されるんじゃないか」「すごいゴリゴリ来るんじゃないか」という警戒感がすごく強かったんです。でも、実際に東京でお会いしてみると、「宇都宮市さんと一緒に何かやりたいんです」とか、「宇都宮市を良くしたいし、それによって自分のところにもメリットがある」というようなアプローチでご挨拶をいただく方が多くて。そこは意外だったというか、もっとゴリゴリ来るんじゃないかと思ってました。田舎もんなんで、東京怖いみたいなイメージがありまして(笑)」
「余談になるのですが、私は栃木県から出たことがなかったんです(笑)。高校も大学も地元で、実家から通っていて。県外に出るという生活を初めてしているのが、この1〜2年なんです。もう新しいことばかりです。」

20代は現場で奮闘する日々
志「間中さんご自身のキャリアについて少しお伺いしたいのですが、大学を卒業されてからずっと宇都宮市役所に?」
間「民間経験もなく、それはもう生粋の市役所のおじさんです(笑)。」
志「どうして公務員になりたいと思われたのですか?」
間「明確にどうしてって言われると難しいんですけど、不安定な時代、いわゆる「就職氷河期」と言われていた世代になります。「安定」を求めていたというところもあって。まあ、そこを「ない」って言ったら嘘になるよね、という感じで、面接の時も「なんで公務員志望なんですか?」って聞かれて、「いや、安定してるからです」って答えてしまって(笑)。
とはいえ、振り返ってみると「誰かのためになる公務員という仕事が向いているんじゃないかな」というのも今となってはありますね。グイグイ誰かと競争して前に出てのし上がってというよりは、みんなと協調して仕事を進めていくスタイルの方が、自分の中で性格に合ってるのかなというのは、最近思うようになりました。」
志「採用されて最初に配属された職場はどちらだったのですか?」
間「農業系で、生産調整を担当している部署です。「お宅はこれだけ米を作っていいよ」という割り当てが来て、その面積をちゃんと満たしているか、それ以上作っていないかを確認する仕事です。米の価格を維持するための生産調整という政策をやっていたのですが、それを満たさないと補助金が支給されないんです。
現地確認に行ったり、面積をメジャーで測ったりしながら、長靴を履いて田んぼにお邪魔して。夏の暑い日に地元の農家さんと一緒に現地で確認作業をしたりしていました。あとは、今は「ろまんちっく村」という道の駅になっているのですが、農林公園の管理運営の窓口をやったり。農業部門でも現場系のお仕事と、企画調整的な部分を担当したのが最初のキャリアです。それが3年ですね。」
志「次はどの部署へ?」
間「次は保健所です。保健所で、予防接種や感染症予防の担当、それと精神保健の担当。係異動で2つの仕事を担当しました。予防接種の注射の委託を医師会にしたりとか、感染症予防の啓発、お子さん連れの子育てママさんたちへの対応をしていました。精神保健の担当では、精神疾患をお持ちの方の対応を昼夜問わずで各所と連携していました。病状によっては病院と連絡をして、緊急入院の手続きを取る、というような仕事をしていました。」
志「20代は農業から始まり、現場で奮闘する仕事をされていたんですね。」

企画・調整部門の経験が「市役所全体を見渡す」キッカケに
間「その後、5年間は教育委員会へ。社会教育とか生涯学習と言われる分野の担当をしました。ストレートな学校教育ではなく、どっちかというと周辺の「大人の学び」みたいなところです。「今こういう学びが求められているよね」というところの計画作りなどを担当しました。
東日本大震災があった時期で、例えば「放射線」について、必要以上に恐れたり風評被害をもたらしたりしたらダメだから、正しい知識が必要だよね、といった「今、学びとして何が必要か」というのをとりまとめ、地元の公民館みたいなところで講座を企画・実施する仕事を5年間やっていました。」
間「教育委員会で計画作りをしたのがキッカケの一つとなり、企画部門の「政策審議室」へ。そこに馬場さん(前々・東京オフィス所長)が上司でいまして、砂田さん(前・東京オフィス所長)も上司でいました。その時の出会いですね。その時の「団子3兄弟」が(笑)、東京オフィスにみんな来たという感じです。人事課の陰謀かもしれません(笑)」
間「政策審議室では、さまざまな仕事を担当しました。基本業務として環境部や上下水道局などといった担当部局を持って、庁内の調整を行うのですが、個別業務としては、庁内の最高決定機関である『庁議』(市役所内で決め事をする時に必ずやる)の運営や、「実施計画」という、いわゆる事業査定みたいなもののとりまとめの全体進行担当などをやっていました。これらの経験で、結果として市役所全体が見えるようになりました。「ここでこんな課題持ってそうだな」「ここでこんな業務やってるよな」といったことから、「新しくこんな事業で予算取りに行こうとしてる」、ということまで見えるようになりました。加えて、国に補助金のこんなのがありそうだよとか、国にこういうの要望してみたらとか、そんな内部調整の仕事は6年間やっていました。」
志「20代は現場での仕事を多く経験し、ここから内部調整の仕事が多くなったんですね。その後は?」
間「地域政策室という、似たような名前のところに2年間いました。中心市街地の活性化、商店街振興など、街なかの活性化を担当させていただきました。それが組織改編で「都市整備部」に仕事ごと異動になりました。
都市整備部でも基本的には街なかのにぎわいづくりは変わらずで、宇都宮市を「ウォーカブルなまち(居心地がよく歩きたくなるまち)」にするためには?という視点で仕事をしてましたね。人通りがある通りで車道を部分的に封鎖して、ベンチとか人工芝を敷いたりしてしつらえて。東京の丸の内ストリートパークみたいなこと(笑)を、社会実験的に実施しました。地元の商店街の皆さんやステークホルダーの皆さん、有識者や学生を巻き込んだ実行員会組織を作ったり、近隣店舗の皆さんに「ここは通行止めになるんで、ご迷惑おかけします」といった話を説明しに行ったり。そんな仕事を合計4年担当しました。
そして現在の仕事につながる「産業政策課」にきました。宇都宮でのアクセラレーションプログラムや、オープンイノベーションプログラムなどの運営を係長として1年だけ担当して。そしたら「東京行ってこい」って言われて(笑)「まさか1年で異動はないだろうな」と思っていたので、驚きつつ今に至ります。」
東京オフィスで感じた「宇都宮の強み」
志「20代は現場仕事で身体を張り、そこから計画作りや市役所全体を動かす大きな絵を描く仕事に移られて、今度は東京でスタートアップやベンチャーというこれまでと異なるステークホルダーと向き合うことになりました。ここでの戸惑いや学びはありましたか?」
間「絵を描く系の仕事は、実は自分にはあまり向いてないと思っています。手触り感がないというか、自分がやった感があんまりなくて。結果として「人と絡む仕事が好きなんだな」というのは見えてきましたね。
あんまり自分に強みがないと思っていたんです。すごい後ろ向きな人間なんですけど、大して特技もないし、英語も喋れないし…と思ってたんですけど、最近東京でよく言われるのが、「距離感が絶妙だよね」とか「飛び込んでいくのが上手いよね」「距離詰めるのが早いよね」とか。人たらしなのかな、こいつって自分でも思うんですけど(笑)。
これは実はすごい強みなんじゃないかと、再認識をして。意外と今の行政に求められている「AIにできないこと」なんじゃないかなと、すごい前向きに、勝手に自己肯定感を上げたりとかしています。」
志「東京でベンチャーやスタートアップの人たちと関わる中で、刺激を受けることはありますか?」
間「皆さん、とにかく前向きなので。「できない理由を考えるんじゃなくて、どうしたらできるか」を考える習慣がみんなついているというか、そもそもそういう人たちなのか。行政の職員として学ばなきゃならんなというところがあります。
自分は、市役所の中では前向きな人間なんだろうと思っていたんですけど、まだまだこういう界隈にいる人たちに比べると…。「条例も法律も変えちゃえばいいじゃん」くらいの、本当にそういうレベルの人たちもいるんで(笑)。それは学びだし、気づきだし、自分に足りないなと思ったところです。」
志「他の自治体の東京事務所の職員さんたちとの繋がりでも、刺激はありますか?」
間「皆さん面白い視点を持っていて。例えば仲良くさせてもらっているところだと、桑原さん(豊橋市)とか、すごく人間味やユーモアがあって真似できないなと思うし。あとは、堺市の羽田さんも、イベントや事業者をご紹介いただいたり、面倒見のいい兄貴分みたいで。それでいて「影羽田、何人いるんですか?」っていうくらい色んなところにいる。活動量が皆さんすごいなと思って。そこはいつも感心させられています。」
宇都宮は「ちょうどいい街」
志「 不特定多数の人と会う仕事になって、改めて発見した「宇都宮市の良さ」や、外からどう見られているかという気づきはありますか?」
間「ピッチやプレゼンの場でも使わせてもらっているんですけど、「ちょうどいいよね」って言われます。まちのサイズ感とか人口規模(約50万人)、多様な産業構造、都内からの距離など。
色んなアセットがあって何でもできちゃいそう、色んな実証実験ができるよねって。それを言葉を選ばずに言えば、言い方悪いけど「ちょうどいい」。『ちょうどいい街、宇都宮』みたいな(笑)。
出会うスタートアップの皆さんは、「宇都宮で実績を出すことができれば、規模の小さい都市でもいけるし、逆にもうちょっと頑張れば政令指定都市とかでもいけるし」という感触を持ってもらえますし。場所としても、東京から新幹線で48分と近い。リモートでもできるし、リアルでも行けるし、どっちも行けそうだよね、という意味で使い勝手がいいのかなと感じています。そこはちょっと前面に押し出して売り込んでいこうかなと思っています。」

注力テーマは「女性活躍と地方の課題」
志「今年度、「宇都宮市をこういう風に使ってくれ」とか、こういう企業とコラボしたいというイメージはありますか?」
間「宇都宮市は絶賛「女性活躍推進中」です。昨年度、女性活躍部門が新設されましたし、フェムテック、共働きや共育ての支援など、そういった分野でご一緒できるところがあればと。「この技術」というピンポイントなものはないのですが、一緒にストーリーを作れる人、「宇都宮市の女性活躍に貢献したい」という人とお話をしていきたいです。
宇都宮の女性人口減少していて。地方都市はどこも似ているのですが、10代から20代の、進学や就職のタイミングで、東京にも近いこともあり、若い女性が県外(主に東京)に行ってしまいます。
一方で、男性は、宇都宮市の産業構造が製造業寄りで、工場やR&D(研究開発)部門が多いので、進学したあとも仕事の関係で戻ってくるんじゃないかなと思ってます。生産年齢人口ベースで、男性のほうが1万人多いなんて言われてます。50万人規模の都市で、男女の人口が1万人違うのは、結構な話なんじゃないかなと。そうすると、婚姻数も増えないし、必然的に子どもも…というところが出てきてしまうので、「宇都宮が女性に選ばれる街」になるように頑張っていく。そのために、女性活躍の分野で何か一緒にできる方、あるいは男性の家事・育児への参画促進や子育て支援など、そういう視点の方たちと一緒に組めると、宇都宮市の魅力が高まっていくのではないかなというのを感じています。「何が課題ですか?」と聞かれると、課題はたくさんあって難しいのですが、最近はそれを挙げています。
志「最後に、このnoteを読んでいる人たちにメッセージをお願いします。」
間「この記事を読んだ、面白いことをやっているそこのあなた!まずは気軽に声をかけてください。宇都宮に餃子を食べに来ていただくのも、もちろんいいんですけど、「餃子だけじゃない宇都宮」ということで、LRT(次世代型路面電車)とか、プロスポーツとか、私とか(笑)。面白いこともいっぱいありますし、面白い人もいっぱいいますんで、まずは一緒に、ゆるく繋がりましょう!これからも宇都宮をご贔屓によろしくお願いいたします!」

2003年宇都宮市役所入庁。農業振興、保健福祉、社会教育、企画調整、中心市街地活性化、産業振興など幅広い分野の業務を経て現職。現在は東京オフィスにおいて、企業やスタートアップとの連携・共創を通じた産業振興や地域課題の解決に従事
