NVIDIAはなぜ、最上位GPUのメモリを「12層」から「8層」に減らそうとしているのか?

これは私のメルマガ「週刊Life is beautiful」で紹介している記事の要約・解説です。要約をこちらに書き、リンクを貼った上で私のコメントを書くというスタイルで、メルマガ本体のボリュームを減らして読みやすくすることを目的としています。

Rubin Ultra配置的HBM4e若由12層下修為8層的影響

台湾の調査会社TrendForceの分析をもとに、NVIDIAが次世代の最上位GPU(画像処理半導体。もともとは3Dゲームの描画用でしたが、今ではAIの学習・推論の計算に使われています)「Rubin Ultra」に載せるメモリの構成を、当初予定より控えめなものに変更しつつある、と伝える台湾・理財周刊の記事(2026年8月12日)です。メモリの供給不足がAIチップの生産量そのものを左右し、しかもそれが「スペックを下げると出荷数が増える」という一見逆説的な形で効いてくる、という構図を具体的な数字で示している点が興味深いので紹介します。

まず前提から説明します。AI向けのGPUには、HBM(High Bandwidth Memory=広帯域メモリ。メモリのチップを何枚も垂直に積み重ね、GPUのすぐ隣に置くことで、大量のデータを一気にやり取りできるようにした特殊なメモリ)が使われています。AIの計算そのものは掛け算と足し算の繰り返しで、演算装置は非常に高速ですが、その材料となる大量の数値(AIモデルの「重み」と呼ばれるパラメータ)をメモリから読み出すのが間に合わなければ、演算装置は手を止めて待つことになります。つまりAI用GPUの実力は、演算装置の速さだけでなく、メモリがどれだけ速く・どれだけ大量にデータを供給できるかで決まります。HBMがAI半導体の要と言われるのは、このためです。

NVIDIAは、現行のBlackwell世代に続く次世代アーキテクチャとして「Rubin」、そのさらに上位版として「Rubin Ultra」を計画しており、Rubin Ultraには最新世代のHBMである「HBM4e」を搭載する構想を示してきた、という経緯があります。記事が扱っているのは、その搭載の仕方、具体的には「何枚積むか」の部分です。

当初の計画では、HBM4eをチップ12枚積み(記事の表記では12Hi、Hiはhigh=積層数)で載せる想定でした。ところが記事によれば、この12層品には、動作検証と量産時の歩留まり(作った製品のうち、不良品ではなく実際に使えるものの割合)に不確実性が残っています。積層数が増えるほど、貫通穴を通した配線や熱の問題が難しくなり、途中の1枚でも欠陥があればその積層品全体が不良になるため、層を増やすことは技術的には一直線に難しくなっていきます。

もう一つの事情が、DRAM(コンピュータの主記憶に使われるメモリ半導体。HBMもDRAMのチップを積み重ねて作ります)市場全体の需給です。記事は、世界的な供給不足が2027年まで続くとの見通しを挙げています。つまり、たとえ12層品の技術的な目処が立ったとしても、そもそも材料となるメモリの量に上限がある、という状況です。

こうした事情から、NVIDIAは2026年第3四半期以降、Rubin Ultraのメモリ構成を12層一本に絞らず、複数の案を並行して評価する方針に切り替えた、というのが記事の中心的な指摘です。並行評価されているのは、次の三案とされています。

  • HBM4e の8層積み(8Hi)

  • 一世代前のHBM4 の12層積み(12Hi)

  • HBM4 の8層積み(8Hi)

ここでNVIDIAが最優先しているのは、メモリの容量ではなく、I/O転送速度(GPUとメモリの間でデータをやり取りする速さ)を14〜16Gbpsの水準に保つことだと記事は述べています。前述の通り、演算装置はデータが届くのを待っている間は何もできないため、搭載できる容量を多少削ってでも、データの流れる速さを確保する方が、GPU全体としての計算効率は高く保てる、という判断です。積層数を減らすことは容量を減らすことですが、1秒あたりに流せるデータ量には直結しないため、この優先順位のもとでは「削ってよい部分」になります。

そして、供給量の面ではこの下方修正が大きな意味を持ちます。同じ枚数のウェハー(半導体の材料となるシリコンの円盤)から取れるHBMの個数が、積層数を12層から8層に減らすことで、理論上は50%増えるからです。1個あたりに使うメモリチップが12枚から8枚になれば、その分だけ多くの個数を作れる、という単純な算術です。加えて記事は、層が少ないほうがパッケージング(複数のチップを一つの部品にまとめる工程)の歩留まりも上がる点を挙げています。

TrendForceは、この効果によってGPUの実質的な出荷量が約18%増え、個数にして約25万個の上積みになると見込んでいます。スペックを下げることで、供給不足というボトルネックが緩み、結果として市場に出回るAI用GPUの数が増える、という関係です。

記事が最後に指摘するのは、この増加がGPUメーカーだけの話では終わらない、という点です。GPUの出荷が増えれば、それを搭載するAIサーバーの台数も増え、サーバー1台ごとに必要な部品も同じ数だけ必要になります。記事は具体的に、放熱板(均熱板)、水冷ユニット、液冷用の継手といった冷却関連の部品を挙げ、これらのメーカーにとって「乗数効果のある大きな追い風」になると結論づけています。AI用GPUは消費電力と発熱が非常に大きく、空冷では追いつかずに液体で冷やす方式への移行が進んでいるため、こうした部品はAIサーバーの中でも需要の伸びが大きい領域です。

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