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違和の記録|部長の知っていること

放課後、部室には自分と部長だけだった。

 珍しく、誰も来ていなかった。

 部長はいつもの席で本を読んでいた。

 少ししてから、こちらを見た。

「今日、何か変わったことはあった?」

 突然だった。

 思い当たることは、特になかった。

「別に、何も」

「……そう」

 それだけ言って、また本に目を落とした。

 しばらくして、鞄の中の物を整理していると、違和感があった。

 見慣れないものが入っていた。

 小さなメモだった。

 折りたたまれていた。

 開いてみる。

 短い文字が書かれていた。

 ——帰りに話したこと、忘れないで。

 誰の字かは分からなかった。

 でも、どこかで見たことがあるような気がした。

 その日の帰り道を思い出す。

 特に何もなかったはずだった。

 誰かと話した記憶も、なかった。

 メモをもう一度見る。

 内容は読めるのに、

 それに対応する記憶がなかった。

 気づくと、部長がこちらを見ていた。

「それ」

 視線がメモに向いていた。

「どこで入ったの?」

「分かりません」

 正直に答える。

 少しだけ間があった。

 部長は視線を外さずに言った。

「じゃあ、それを書いたのは誰?」

 答えられなかった。

 しばらくして、部長は本を閉じた。

「……思い出さなくていいわよ」

 静かな声だった。

「思い出したら、多分合わなくなるから」

 意味が分からなかった。

 何と何が合わなくなるのかは、聞かなかった。

 そのまま帰ることになった。

 家に着いてから、もう一度メモを開いた。

 さっきと同じ文字だった。

 書かれていることも変わっていなかった。

 でも、

 その字が、少しだけ自分の書き方に似ている気がした。

 ペンを持って、同じ言葉を書いてみる。

 形が、ほとんど同じだった。

 いつ書いたのかは、思い出せなかった。

 帰りに何を話したのかも、分からなかった。

 ただ、

 思い出さない方がいい理由だけが、少し残っていた。

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