酒を飲む①
酒は美味いものだ。
子どもの頃、それを信じて疑わなかった。
食卓で酒を飲む父はいつも満足げだったし、子どもで酒が飲めないながらもいつも居酒屋に連れて行ってもらった。
決まって食べるのはたこわさ、塩辛。
自他とも認める将来の酒飲みは、もうこの時点で既に英才教育が施されていたようなものだ。
どれほどうまいんだろう、ビールは。ハイボールは。日本酒は。
抱えきれないほどの期待を持って私は大人になった。
ところで、初めてお酒を飲んだ時のことを覚えているだろうか。
ほろ酔いなどの低アルコールサワーを除けば最初から「美味しい」と感じた人は少ないだろう。
例にも漏れず私ものその1人。
初めて飲んだ日本酒は甘いようで苦くて、飲み込むことに苦労したのが今でも記憶に残っている。
抱えきれないほどの期待を持って20歳になった私に待っていたのは
「そんなに酒を美味いと思わない」
残念な現実だった。
飲み会は好きだし、酔っ払うのも快感。
だが、実際好きかと問われれば首を横に振るし、もちろん毎日飲むなんてことはありえない話だった。
いったいいつからだろうか。
飲まずにいられなくなったのは。
酒の味にあれこれ言いたくなったのは。
私には酒に溺れるきっかけとなる明白な分岐点が存在していた。
続く
