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「何を書けばいいかわからない」を突破するためには:ライティング活動の実践例

思考の変換プロセスの紹介をしましたが、今回はライティング活動の実践事例を1つ紹介してみようと思います。参考にしていただけると嬉しいです。

私の勤務している学校で実施した実態調査では、記述式問題に対して約9割(90.7%)の生徒が「苦手」と感じているという衝撃的な結果が出ました。

「英単語を覚えていないから書けない」 生徒も教師もそう思いがちですが、詳細なアンケート結果を分析すると、実は学力層ごとに異なる「思考の壁」が隠れていることがわかりました。

今回は、全校アンケートの結果から導き出した、「日本語→日本語→英語」というプロセスを可視化する指導実践についてご紹介します。

1. アンケートから見えたA層〜D層のリアルな困り感

まず、生徒たちが記述式問題のどこに難しさを感じているのか、学力層(A層〜D層)別に分析したところ、興味深い事実が見えてきました。

【上位層:A層B層】自走できるが「洗練」に課題

  • A層(上位層):記述式を「得意」と答える生徒の多くがこの層です。単語のつなげ方や文構造を自分なりに理解しており、自己分析能力が高いのが特徴です。

  • B層(中上位層):ある程度の文章は書けますが、接続詞などを活用して論理構成を整える「レベルアップ」の段階で課題を感じています。

【苦戦層:C層D層】「単語さえあれば」という思い込み

  • C層(中下位層):「書きたいことはあるが、英語に変換できない」層です(全体の約66%)。頭の中にある複雑な日本語をそのまま英語にしようとして行き詰まっています。

  • D層(下位層):「そもそも何を書けばよいのかわからない」層です(全体の約25%)。思考のスタートラインで立ち止まってしまい、以前は白紙で提出することも少なくありませんでした。

興味深いのは、CD層の生徒のほとんどが、書けない理由を「単語を覚えていないから」だと思い込んでいたことです。しかし、実際に単語を調べていい条件で書かせてみても、文章は完成しませんでした。彼らに必要だったのは、単語の暗記ではなく、「英文を組み立てるプロセス」の指導だったのです。

2. 思考を可視化する「3つの戦略的アプローチ」

全層の生徒が「書ける」実感を持つために、アンケート結果を踏まえて以下の3つの柱を立てました。

① 「わからなかった単語帳」のデジタル蓄積

GIGA端末を活用し、自分が調べた表現をリストにストックしました。単にその場で調べて終わりにするのではなく、「次回のライティングで自分が使える武器」として蓄積させることで、語彙の定着を促しました。

② 英文構造(主語・動詞)のマーク付け

ALTの英文を読み、主語(S)と動詞(V)にマークを付ける活動を徹底しました。これにより、英文の骨組みを意識させ、自分が書く際にも「まず主語と動詞を決める」という習慣を付けさせました。

③ 日本語を「英語にしやすい日本語」に変換する(J→J→E)

生徒が頭に浮かべた「自然な日本語」を、一度「英語にしやすい簡単な日本語」に変換する(J→J→E)ステップを指導の核に据えました。

3. 実践の核:6段階のライティング・プロセス


生徒が迷わずにステップアップできるよう、以下の6段階のプロセスを定義し、ALTのデモンストレーションを交えて提示しました。

1. Natural Japanese / English:まずは自分の言葉で自由に考える。
2. Make it easy:【最重要】 英語にしやすいよう、日本語を極限まで簡単に言い換える。
3. Try your best:辞書に頼りすぎず、今の自分の力で書いてみる。
4. Fix your sentences:スペルや文法のミスを自分で探して訂正する。
5. Use translation:ここで初めて翻訳ツールを使い、自分の英文をチェックする。
6.Level up:さらに良い表現や、接続詞を使った分かりやすい文章に磨き上げる。


このプロセスを、ALTがリアルタイムで英語から日本語を作成し、あえてミスをして生徒に指摘させるデモンストレーションを行うことで、生徒たちは「こうやって考えればいいんだ!」という実感を持ちました。
(ALTは日本語の勉強中だったので、母国語である英語から日本語学習をしている生徒目線でデモをやってくれました)

4. 実践ツール:「日本語→日本語→英語 チャレンジシート」

このプロセスを日々の活動に落とし込むため、「日本語→日本語→英語 チャレンジシート」を活用しました。シートには、自分の意見を「日本語①(自然な表現)」から「日本語②(簡単な表現)」へ変換し、最後に「英語」に落とし込む欄を設けています。

★取り組む内容によって柔軟にシートを変えてやりました。たとえば、記事を読んで自分の考えを書くような取り組みだと、画像のように短文をつけて、読み取った内容などの項目をつけながらやりました。教科書の内容などにも対応できるので、やり方はさまざまです。

  • AB層への活用:読み取った内容からキーワードを抜き出し、接続詞を使って文章のレベルを上げる訓練に使用。

  • CD層への活用:日本語②のステップを丁寧に行うことで、思考を整理し、自力で英文を書く「スタートライン」に立つために使用。

5. 驚くべき成果:白紙提出ゼロと意識の変化

年間を通した継続的な取り組みの後、再度アンケートを実施したところ、全層に劇的な変化が現れました。
数値に表れた変化

85%の生徒が「以前より英語で文を書けるようになった」と実感。
91.4%の生徒が「これからもライティング活動を続けたい」と回答。

生徒の生の声(層別)

A層:「日本語から英語にするときに、難しく考えすぎないようになれた」
B層:「主語と動詞を整理することで、筋の通った文を書けるようになった」
C層:「言いたいことを簡単な日本語にしてから書くという方法を知り、前より自分の言いたいことが書けた」
D層:「この活動がなかったら白紙で提出していた。自分なりに考えて書くことができた」

以前は「単語を覚えるしかない」と諦めていたCD層の生徒たちが、「日本語を簡単な言葉に変換する力が身につけばもっと書けるようになる」と、自らの課題を具体的に捉えられるようになった点は大きな成果です。

6. まとめ:ライティング指導は「思考を整理し、伝えられる形に編集する力」


今回の実践を通して再確認したのは、英語を書く力とは単なる知識量ではなく、「思考を整理し、伝えられる形に編集する力」だということです。

特に学習に課題を抱える生徒にとって、複雑な日本語を「主語と動詞があるシンプルな形」に噛み砕くプロセスは、英語学習のみならず、あらゆるコミュニケーションの基礎となります。

「英語が苦手だから書けない」と諦めてしまう前に、まずは「日本語を整理するステップ」を可視化して提示してみませんか?生徒たちのペンが動き出すきっかけになるかもしれません。

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