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人生の成功者と迷走者が交差している東南アジアの街角

やっと苦行のような夏休みが終わり、久々のひとり外出時間。
午前休をとって市場で野菜を仕入れ、ネイルサロンでフットケアをしてもらって、カフェでまったりしている。

朝8時ごろ、駐在員家族が多く住むレジデンスの1階にあるカフェで軽い朝食を食べながら、人々を眺めていた。

レジデンスの入り口に、インターナショナルスクールのバスがくる。

そこへ集まってくるママさんたちが、4、5人のグループで家に戻っていく後ろ姿を眺めていた。

年間200万はくだらないインターナショナルスクールに子どもを通わせられる財力を持つ夫と結婚し、家賃20万以上の高級レジデンスに暮らしながら、海外で専業主婦をしている彼女たちは、人生の成功者だろうか。

私は、東京の資産家の息子と結婚した。

30代でマレーシアのリタイアメントビザを取得し、夫婦二人でコンドミニアムのプールで朝から泳いでいた私は、あの時きっと人生の成功者だっただろう。

あのままマレーシアで出産し、娘にもセレブで悩みの少ない生活をさせてあげたかった。

その世界線があったはずなのに。

私は浮かれていたのか、身内の本心に気づかず、そんな最高の結婚生活を手放すことになった。

わずか2歳の子を抱えて、世界のどこにも家などなくて、路頭に迷うことになった私に、

実は海外で優雅な暮らしをしている娘に嫉妬していた母は、自分の子育て時代と同じように団地暮らしを後押しした。

29歳の時、まだ海外暮らしを経験していなかった私は、当時交際していた彼と関西のURに半年ほど住んだことがある。

URは「綺麗な団地」のようなものだ。

でも、シングルマザーとなって地元の古い団地を見に行った私は、
海に近い3LDKのプール付きのコンドミニアムに住んでいた結婚生活とのあまりにギャップに、心が拒絶した。

だからまた海外に出た。

でも、当然夫がいた頃と同じレベルの暮らしをするには、私一人の稼ぎは圧倒的に少なすぎる。

元々私は就職氷河期真っ只中の世代で、大学卒業と同時にフリーターになり、そこからアルバイト、派遣社員、契約社員を転々とする安定とは程遠い生活を送ってきた。

そんな人間にとって、玉の輿結婚をすることは、これ以上ない幸運なことだったというのに、私はその希少性を十分に理解していなかったのだと思う。

人生のご褒美タイムを終えた私は、娘にそれなりにいい暮らしをさせてあげたくて、脳みそを搾り倒して住む場所と働き方を考え、必死に生きてきた。

優雅に見える駐在員家庭とは違って、現地採用の日本人は人生の挫折を経験してきている人が多い。みんなの過去を聞いたわけではないけれど、私が親しくなっていろいろ話をしてきた人たちは、

2回の離婚と数回の転職を経て中国に辿り着いた60歳前後のアメリカ人男性。
過去音楽の世界で少し有名だったけど、仕事で挫折し離婚もして、方向転換を余儀なくされてひとり海外暮らしをしている50代日本人男性。

20代30代完全に失敗したと自分で言っている40代日本人男性。
男性に全く興味がない独身主義でプライベートが謎に包まれているアラフィフ日本人女性。

ハニートラップに引っかかって職場を追われた30代アメリカ人男性。

何かしら、人生で大きな挫折を経験している人が多い。

海外に出れば、人生を変えられると思ったのか
日本で居場所をなくして出てきたのか
母国では変わり者扱いされて伸び伸び暮らせないから海外にいるのか

アメリカやヨーロッパの現地採用の人たちのことは知らないけれど
中国と東南アジアには、そんな人が流れ着きやすい印象がある。

駐在員は人生の成功者だと思う。
自分で働きながら海外で子育てをしてみて、駐在員として海外で働いているお父さんたちを心から尊敬している。

企業に長年勤めて成果を出し、会社から期待されて重要な役割を任されて
海外勤務をするなんて、どう考えても仕事ができるし、真面目でしっかりしているとしか思えない。

そんな男性と結婚した女性たちもまた優秀で美しく、幸運を掴むという才能がある。

そして何より、結婚生活を長く続けている人たちは、それだけで十二分に恵まれているし、才能があって忍耐力があって地に足がついていて、本当にすごいと思う。

今や結婚するもしないも自由だし、ひとりは楽な側面もある。
でも、海外で独身で現地で働いて50をすぎると、不安が襲ってくる。

世界のどこにもマイホームがない。
世界のどこにも家族がいない。

地球という広大な空間の中で、地図もなくひとり
彷徨っているようなものだ。

そんなふうにしか生きられない人種がいる。
それはそれで、本人が楽しければいいけれど、少なくとも私は、地に足をつけた生活をしてこなかったことを、少しだけ後悔している。

まあ、できなかったのだけど。

実際はいろいろあるにせよ、外から見れば人生成功したと思える人たちと
人生のある時点に大きな後悔を抱えて彷徨っている人たちが
交差している東南アジアの街角。

そんなことを思った久々のひとりカフェ時間だった。

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