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目先の利回りより「産業の胎動」を見よ──都市の成長と資産価値を見極める眼

先日、日本経済新聞で「韓国半導体の投資上乗せ100兆円 サムスン、「産業不毛の地」に工場群」という記事を目にした。

最近、思わず「凄い!」と感心してしまった記事がこれである。

今も昔も、地域の活性化や不動産価値の維持・向上は、まず産業ありきであるというのが私の持論である。人が集まり、雇用が生まれ、所得が消費や住まいに回ることで初めて街は持続可能な成長を遂げる。

韓国が今まさに推し進めようとしているプロジェクトは、その原則を驚くべき規模とスピード感で具現化したものだ。

今回の舞台は隣国の韓国である。報道された数行の情報からだけでは、韓国政府やサムスン電子、SKハイニックスといった当事者の細かな思惑まで完全に読み解くことはできない。

しかし、国の屋台骨である半導体産業を核に据え、特定の地域にこれだけの巨額投資を集中させるというスケールの大きさには、率直に言ってやられたという悔しさにも似た感覚を覚えた。

韓国政府が主導するメガクラスター構想の中心地の一つが、京畿道龍仁(ヨンイン)市である。もともと製造業の基盤が薄かった地域に、サムスン電子などが工場群を建設し、世界最大規模の先端半導体拠点をゼロから作り上げようとしている。まさに産業不毛の地に新たな心臓部を埋め込むような大事業である。

もちろん、我が国でも手をこまねいているわけではない。戦略分野への重点投資として、2040年までに官民合わせて370兆円規模の投資を行う計画が掲げられ、熊本のTSMC進出や北海道千歳のラピダスなど、各地でクラスター形成の動きが急ピッチで進んでいる。

分野で見ればかなりの投資額であるが、
個別プロジェクトに落とすと…

国を挙げた産業基盤の再構築という方針そのものは極めて重要だ。

しかし、新聞紙面などを通じて具体個別のプロジェクトを眺めていると、1つのプロジェクトあたりの投資額や集積度において、どうしても小ぶり感が否めないと感じてしまうのは私だけだろうか。

限られた国家予算や支援策を多くの地域や分野に公平に配分しようとするあまり、インパクトが分散してしまう傾向があるように思える。

一方で、韓国の政策運営にはリスクも伴う。サムスン電子やSKハイニックスといった一部のメガ企業に支援と資源を集中させる手法は、特定の大企業ばかりが恩恵を受けているという批判や、富の偏在を助長するという反発を招きやすい。

国民感情や政治的なバランスを重視する今の日本では、これほど大胆な政府と特定大企業の二人三脚体制を打ち出すのは容易ではないかもしれない。報道の仕方に配慮の余地はあったとしても、世論の反発を招く危険性は常に孕んでいる。

それでも私が評価したいのは、半導体という国家の命運を左右する基盤産業に対し、特定地域へ100兆円規模の投資を断行するという決断の重みそのものである。

韓国において半導体産業がサムスン電子とSKハイニックスの2社を抜きにして語れないのは紛れもない事実である。富める者を優遇してさらに富が集中するという批判を押し切ってでも、国と地域の将来的な発展を見据え、勝負どころへ徹底的に資源を集中させる。その割り切りの良さと実行力には拍手を送りたい。

半導体産業は、現代の製造業において最も水平分業化とサプライチェーンの裾野が広がっている分野の一つである。

巨大な製造工場を建設すれば、それだけで完結するわけではない。前工程から後工程に至るまで、装置メーカーや素材メーカーなど、国内外から無数の先端企業が集積してくる。さらに、そこで働く数万人規模の高度人材やその家族が移住してくることで、住居、商業施設、教育施設、インフラといった都市機能が急速に整備されていく。

かつて何もない平地だった場所が、わずか数年で最先端産業の聖地へと変貌し、様々な需要が創出される。不動産投資や中長期の資産形成を考える上で、この産業の胎動を捉える視点ほど確かなものはない。

不動産の価値は、単なる建物のスペックや目先の利回りだけで決まるものではなく、その土地が持つ産業の持続可能性と直結しているからだ。

定年後の資産形成やFIREを見据えて不動産投資に取り組む際、私たちはどうしても個別の物件情報や目先の利回りに目を奪われがちになる。しかし、真に価値を維持し続ける資産を見極めるためには、国家や民間の大規模な資本がどこへ流れ、どのような産業が人を呼び込んでいるのかという大きな構造変化を捉える眼差しが欠かせない。

韓国の半導体クラスターのニュースは、単なる海外の経済トピックにとどまらず、地域の価値がどのように創造されるのかという本質を改めて示してくれた。

我が国においても、限られた予算の中でより大胆に投資を集中させ、世界と伍していく強力な産業拠点が次々と生まれることを期待したい。

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