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96分|走る新幹線と爆弾、96分間の絶叫体験があなたを待っている

2026年3月13日、一本の台湾映画が日本に上陸します。

タイトルは「96分」

予告編を見たとき、思わず画面から目を逸らせなかったという方も多いのではないでしょうか。X(旧Twitter)では公開情報が解禁された瞬間から、

「これ絶対映画館で観るやつ」 「台湾映画が日本を殺しにきてる」 「ビビアン・ソンが出てるってだけで泣ける」

といった声が続々と並び、アジア映画ファンのタイムラインがにわかに熱を帯びました。

2025年、台湾映画の興行収入ナンバーワン作品。

この一行だけで、この映画の「本物感」は伝わりますよね。台湾の観客が劇場に足を運び続け、口コミを広め、「もう一回観たい」とリピートした結果がこの数字です。ハリウッドの大作が並ぶなかで、自国の作品がその頂点に立つというのは、並大抵のことではありません。

しかも監督のホン・ズーシュアンは、脚本の構想から完成まで9年をかけてこの作品を作り上げたと言います。9年です。子どもが小学校に入学して中学を卒業するほどの時間を、この96分間に注ぎ込んだ。

「映画館で観るその瞬間が、きっと忘れられない思い出になる」

そう感じさせてくれる映画が、また一つ現れました。




「止まれない列車」が作り出す96分間の地獄

舞台は、高速鉄道の密室

台北から高雄へ向けて疾走する台湾高速鉄道(台湾新幹線)。車窓の外には台湾の風景が流れ、乗客たちは思い思いに過ごしている。爆弾処理の専門家であるカンレンも、妻とともに穏やかな時間を過ごしていた、はずだった。

そこへ届く、元上司からの一本の連絡。

「列車内に爆弾が仕掛けられている。しかも、列車を止めると爆発する」

これは、スピード(1994年)へのオマージュではないかと言う人もいます。でも、本作が提示するのはそれ以上に過酷な状況です。なぜなら主人公は訓練された警察官ではなく、妻が隣にいる一人の人間だから。

映画館の暗闇のなか、あの密室感を全身で受け取ってほしいのです。

IMAXスクリーンに映し出される車内の圧迫感。 座席と座席の間をすり抜けるカメラ。乗客の視線と恐怖。疾走する車体の轟音が、スピーカーから全方向で迫ってくる。

スマートフォンの14インチ画面では、絶対に再現できない体験があそこにはあります。

ホン・ズーシュアン監督の「本気」が画面から滲み出る

本作のために、制作チームは台湾初となる高速鉄道車両用スタジオを建設しました。そしてハリウッドのバーチャルアート技術を導入し、走行中の車窓の景色をリアルタイムで再現。

「リアリティを追求した」という言葉を映画の宣伝文句でよく見かけますが、この作品は本当にその言葉の意味を体現しています。監督が9年間、何度も脚本を書き直し、技術的な限界を一つひとつ乗り越えてきた跡が、一カット一カットに刻まれているのです。

主演のリン・ボーホンについても少し触れておきたいです。

「僕と幽霊が家族になった件」でその幅広い演技力を見せつけ、「ナイト・オブ・シャドー 魔法拳」でアクションへの適性も証明してきた彼が、今度は爆弾と向き合う。その目に宿る焦りと、それでも諦めない意志の揺れを、ぜひ大きなスクリーンで受け取ってほしいです。

そして妻役を演じるビビアン・ソン。「私の少女時代 Our Times」を観て青春を泣いた方には、特別な感慨があるはずです。あの頃の彼女が、今、走り続ける列車のなかで夫と共に恐怖に立ち向かっている。その事実だけで、もう胸が熱くなりませんか。


ネットで囁かれる3つの考察と伏線の謎

考察1:「96分」という数字に込められた二重の意味

タイトルの「96分」は、台北から高雄までの走行時間であり、爆弾を止めるまでのタイムリミットです。でも、ファンの間では**「なぜ96分なのか、もう一つの意味があるのでは」**という議論が早くも起きています。

予告編をよく見ると、カンレンと元上司の関係性に、ただの師弟以上の何かが漂っているように見えます。「元上司が爆弾の情報を持っている」という設定が、物語のある時点で全く違う意味を帯びてくるのではないか。

もしこの説が本当だとしたら、物語の見え方が変わってきそうですよね。

考察2:妻はただの同乗者ではない

台湾映画には「家族の絆が物語の核心を握る」という構造が多く見られます。本作でもビビアン・ソン演じる妻の役割は、「守られる存在」だけに留まらないのではないかという声があります。

予告編の中の彼女の表情、特定のシーンでのカメラの切り方、そして夫婦の会話のトーン。どこか「彼女も何かを知っている」ような、微妙な緊張感が走っているように見えるのです。

**「守る側と守られる側が逆転する瞬間があるのでは」**という説を抱えて観に行くと、彼女のすべての仕草が別の意味を帯び始めます。

考察3:「台湾高速鉄道」という舞台の政治的文脈

これはやや深読みかもしれませんが、台湾映画を語るうえで無視できない視点です。

台湾高速鉄道は2007年に開業した、台湾にとって近代化の象徴的インフラです。その列車を爆破しようとする者の動機は何なのか。

予告編では犯人像が意図的にぼかされています。でも、この舞台設定をあえて選んだ監督の意図を想像すると、単なるアクション映画以上のメッセージが潜んでいるかもしれません。

「エンタメとして楽しんだ後で、ふと立ち止まって何かを考えてしまう映画」

そういう作品に仕上がっている可能性が、十分にあります。


観る前に知っておくと、感動が倍になる話

少し正直に言わせてください。

映画館に向かうとき、「なんとなく観てなんとなく楽しんで帰る」という体験と、「この作品の背景を少し知って、心の準備をして臨む」という体験は、受け取れるものの深さが全然違います。

本作「96分」は、監督ホン・ズーシュアンの2018年デビュー作「狂徒」を予習しておくと、演出スタイルや緊張感の作り方への理解が格段に深まります。「狂徒」は小予算ながら台湾映画界に衝撃を与えた作品で、あの映画で培った「息が詰まるようなリアリティの追求」が96分にそのまま昇華されているからです。

また、主演リン・ボーホンが出演した過去作を一本でも観ておくと、彼の演技の変化や成長が「ああ、ここまで来たんだ」という感慨とともに受け取れます。

知識ゼロで観るのと、背景を少し知って観るのとでは、物語から受け取れるメッセージの厚みが変わります。

でも、「観る前にわざわざレンタルショップに行くのは面倒」という気持ち、すごくよく分かります。

だからこそ、次の話をさせてください。


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最高の96分間を、あなたへ

3月13日、劇場が暗くなる瞬間を想像してみてください。

スクリーンに台湾高速鉄道が映し出され、列車が疾走しはじめる。あなたはその座席に座って、カンレンとともに96分間の密室に閉じ込められる。

準備万端で臨めば、きっと最高の時間になりますよ。

関連作を観て、少しだけ背景を知って、席についたとき。映像の一カット一カットが、全く違う密度で届いてくるはずです。

「映画は好きだけど、最近ちゃんと向き合えていなかった」という方にも、この作品は久しぶりに「映画ってこういうものだった」と思い出させてくれるかもしれません。

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関連作品ガイド|96分をより深く楽しむための5本

1. 狂徒(2018年/台湾)

監督:ホン・ズーシュアン

本作と同じ監督のデビュー長編作。マフィアの組織抗争に巻き込まれた若者の逃走劇を描いた作品で、限られた予算と環境のなかで生まれた緊張感は本物です。「96分」の密度と追い詰められる感覚のルーツがここにある、と言っても過言ではありません。監督の演出の癖や画面の切り方を掴んでおくと、本作の見え方がぐっと変わります。

2. 私の少女時代 Our Times(2015年/台湾)

出演:ビビアン・ソン

「96分」で妻役を演じるビビアン・ソンの代表作。1990年代の台湾を舞台にした青春ラブコメで、彼女の笑顔と涙がこれでもかというほど詰まっています。あのビビアン・ソンが恐怖と戦う顔を「96分」でスクリーンに映し出したとき、その落差が感情を揺さぶるはずです。台湾映画入門としても最高の一本。

3. 僕と幽霊が家族になった件(2022年/台湾)

出演:リン・ボーホン

主演リン・ボーホンが出演したラブコメ×ホラー作品。幽霊と同居することになった男の騒動を描いたジャンル混合作で、彼の「コメディとシリアスを自在に行き来する演技力」が確認できます。「96分」でギリギリの表情を見せる彼と、この作品で笑顔を見せる彼を並べると、俳優としての幅の広さに改めて気づかされます。

4. スピード(1994年/アメリカ)

監督:ヤン・デ・ボン 出演:キアヌ・リーブス

言わずと知れた「止まったら爆発するバス」の金字塔。「96分」の設定と比較しながら観ると、ハリウッドが1990年代に確立したアクション文法を台湾映画がどう咀嚼し、独自の血肉にしているかがよく分かります。アクション映画のリテラシーを上げる意味でも、観ておいて損はない一本です。

5. 新感染 ファイナル・エクスプレス(2016年/韓国)

監督:ヨン・サンホ

走る列車×密室パニックというフォーマットで、2016年に全世界を震わせた韓国映画。「96分」はこの作品と度々比較されますが、アプローチは全く異なります。韓国映画が「集団の恐怖とモラル」を描いたのに対して、「96分」は「一人の人間の孤独な戦い」を中心に据えているように見えます。両方観た上で比べると、アジア映画のバリエーションの豊かさに驚かされるはずです。

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