青空の山歩きとチーズ小屋
出発前に見ていた雨がちの予報から一転、青空のチロル地方。
さっそく山歩きをすることにした。
近くの山「マルクバッハヨッホ」に行ってみる。滞在したヴィルトシェーナウからロープウェイで海抜1500mの頂上付近まで行き、あたりをぐるりと回る計画だ。
滞在した宿から「ヴィルトシェーナウ・プレミアムカード」をいただいた。
各種アクティビティの割引が受けられる便利なカードで、なによりうれしいのは地域のロープウェイが無料になること。
多くの山の地方では夏に同様のサービスがある。やはり冬のスキーの時期に比べて夏の来訪は少ないのかもしれない。
8人乗りのゴンドラはゆったり。街が遠くなっていく。強い日差しに、中の気温は上がっているものの、開いた上部の窓から入る風はひんやり心地よい。

と、ここで気がついた。牛は? このあたりの山に牛はつきものだ。おかしいな。
海抜1500mにいても、この日は暑かった。

歩き始めるとすぐに牛に遭遇。やっぱりいるよね。

開放感はあるものの、このときは「ずっと日向かー」と、ため息も。

30分ほど歩いたところに、山小屋風の建物があった。
地元の乳製品を楽しめるちょっとしたレストラン兼店舗になっている。
正午少し前、さてどうする。
夫とふたりだったら「まだ早いでしょ」と却下されるところだが、娘ふたりがいると味方が増える。ここでひと息入れることにする。いや当たり前でしょう、ねえ。

中は意外にモダンで整然としている。

それではこちらでいただいたものを一挙公開!
長女の注文したベリーのヨーグルトドリンク。というか、濃厚なヨーグルトで「飲む」感じではないようだった。どーんと400ml。

牛乳やバターミルクなどもあったものの、乳糖不耐症ぎみな私は泣く泣く諦めてこちらを。「Skiwasser(直訳するとスキー水)」と呼ばれるもので、ラズベリー風味。スキーのゲレンデで飲まれる定番で、ジュースよりも薄くさっぱりしている。次女はこれのホルンダー(エルダーフラワー/ニワトコ)風味を。一気にのどが潤う。


チーズもだけれど、シンプルな「バターブレッド」というのが気になって注文。こちらの定番である無塩バターはあっさり香り高い。ライ麦配合のパンともよく合っていた。

次女はチーズをのせたもの。下にパンがちらりと見えるだろうか。
チーズを一枚もらったが、鼻に抜ける香りが絶妙だった。山の空気と共に、いいものが身体に入っていく。クララも回復するわけだ。

こちらは夫が注文したKaminwurz。Kaminは暖炉を表す言葉。山の地方で愛される、細身のドライソーセージだ。チーズと併せて、山の冬を過ごす知恵の結晶といえるだろう。

なんだかこの山の食事が記事のクライマックスのようになっているけれど、ぜひ続きもどうぞ。
これは、まさに「アルムおんじの家」ではないだろうか。

中ほどにぽつぽつと点のように見えるのは牛たち。

これだけ距離があるのに、カウベルの音はびっくりするほど近くに聞こえる。
このあたりには「こけもも」がたくさんあった。


山道の交わるそばに、木造の小さな礼拝堂があった。中にお邪魔してみる。

亡くなった方々が記された紙片が所狭しと貼られている。ごあいさつをして一枚写真を撮らせていただいた。
塵ひとつない調度品、滑らかな木の手触り、そして日に温められた堂内の香り。
この礼拝堂が、今ここに暮らす人々と、ここに暮らした人々の日常でありつづけていることに静かな感動を覚えた。

さらに登り、藪から抜けると眼下には来た道が見えた。

そんな「道」はなくなり、多くの人たちの踏み跡を辿ることになる。

登山道をふさぐように佇む牛さん。じーっとこちらを見ている。
「こんにちは、通してくださいね」と通り過ぎた。

この日はこんなTシャツを着ていたのでちょっと気になった。

この先にはまた礼拝堂があり、この道はキリストの受難を表す絵の並ぶ「十字架の道行き(Via Crucis)」となっていた。牛さんはその番人であるかのようだった。

意外にきつい坂を登り切ると礼拝堂。比較的最近建てられたものらしい。

ドアに掲げられた絵のテイストが妙に印象的。


ロープウェイ乗り場に戻る途中でこんな看板を見つけた。
「放牧地でのルール」が記されている。

触れたり餌を与えたりせず、安全な距離を保つ
驚かせないように落ち着いて静かに
母牛は本能的に子牛を守ろうとするため、犬は常にリードにつないでおく
犬は短いリードにつなぎ、もし襲われそうになった場合はすぐに放す
放牧地では決められた道を歩く
動物が道をふさいでいる場合は、できるだけ大きく迂回する
動物が近づいてきた場合は、落ち着いて背中を見せずに離れる
動物がいらだっている様子が見られたら、速やかにその場を離れる
柵のあるところでは扉を利用し、通った後は閉める
農業に従事する人、自然、また動物を尊重する
このようなことが書かれている。
こちらを見つめる牛さんのすぐそばで写真を撮っていた私は6.の項目に反していた。そう思って写真を見返すと、なんだか咎められているようも見える。
以後気をつけます……
