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山の夕べのコンサート|村の音楽隊

ミュンヘンで乗り継いだ列車の車窓が徐々にチロルの山の景色に変わっていく。定刻で山間の町 Wörgl(ヴェルグル)に着いた。
滞在中はレンタカーで移動することにしていた。駅で受け取り、宿へ向かう。

ヴェルグルから20分ほど、Wildschönau(ヴィルトシェーナウ)はチロル地方らしい小さな村だ。主に4つの集落から成り立っている。

大好きな木製のバルコニー



荷解きをし、ウェルカムメッセージとともにテーブルにあった案内パンフレットを見ていたら、夏季には毎週、地元の楽団のコンサートがあることがわかった。こういった山の村にはいわゆる吹奏楽団が結成されていることが多い。

驚くことに、この村では4つの集落それぞれに楽団がある。人口4500人ほどの村に4つの楽団。ただのバンドというよりはほぼ自治会、インフラといった感じだろうか。
私たちが滞在した集落の楽団のコンサートは毎週火曜日に開催されるらしい。その日はちょうど火曜日。これは行くでしょう。


開演は20時。少し前に着く。
かなりちゃんとした屋外ステージがあり、手前にはお祭りのときなどにおなじみのテーブルと椅子が並んでいた。



コンサートは無料だが、そこに座るにはワンドリンクの注文が必要なようだ。どこにも書いていないものの、暗黙の了解といったところ。

炭酸アップルジュースとオーストリアのビール「Zipfer」


伝統衣装に身を包んだメンバーは、道路のあちら側からやってきた。三々五々、演奏しながら渡ってくる。
伝統的な山の音楽あり、ラテンミュージックや映画音楽あり、2時間たっぷり聴かせてくれた。手抜きというわけではないのだろうが、ゆるく演奏している曲もあれば、突然魂の入った演奏になったりと、「そつがある」のが良すぎる。
足元にビールのびんやジョッキを置いて、隙を見て飲みながら演奏しているのもまた一興なのだった。我らにも彼らにも、これはお祭りの夕べだ。


コンサートの中盤にアナウンスが入った。シュナップスが振る舞われるという。その際に任意で寄付をいただければうれしい、とのことだった。

楽団員と同様、トラハト(伝統的な衣装)を身につけた女性が何人かテーブルを回る。たすき掛けにした小さな樽から注いでくれる。

背中の文様はヴィルトシェーナウのもの


すず製に見える脚付きの小さな杯


こちらの杯は指の間に4つ挟んで持ち運ばれていた。一気に飲み干されて戻ってきた杯は、手持ちのピシッと糊づけされた真っ白なクロスできゅっきゅっと拭かれ、次の人に渡っていく。アルコール度の高いシュナップスだからこそできることだろう。


終盤にはアルプホルンも登場。山の雰囲気がさらに増す。


近くに座っている白髪で長身のおじいさんの赤ワインは3杯目だ。愛おしそうにグラスを口に運ぶ。その前に座るおばあさんはオレンジ色のカクテル「アペロール・スプリッツ」派のようで、こちらも3杯は召し上がっているようだった。演奏中でもわいわいやっていて、みなさんパワフルだ。

もうひとつ印象的だったのは、地元のお子さんたちが常に巡回して空のグラスやびんを回収していたことだ。背が小さいので舞台を遮ることなく、小回りもきく。なによりかわいい。
男の子たちが職務遂行とばかりに眼光鋭く近寄ってきたりする一方、女の子は微笑みを浮かべてちらっと確認する。山の女性は賢く如才ない、という印象だ。
もちろん大人(女性たち)が監督しており、21時をすぎた途端に子どもたちは終業となるあたりも、なかなかしっかりしていてよかった。

地元の人たちと、訪れた人たちと。一緒に作られた時間はとても和んだものだった。
この夜に出会った人たちとは、後日また会うことになる。


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