君はクズじゃない!
「俺はダメな人間だ、
そう言って、自分を責めるんじゃなくて
うーん……そうじゃなくて
『俺はクズな人間だ』
と言ってくれよ
親友だろ!
頼むよ!」
「じゃ、……俺はクズな人間だ」
*
仕事で失敗した。
誰かに迷惑をかけた。
期待に応えられなかった。
だから自分には価値がない。
本当にそうだろうか。
私は、そんな君に一つだけ伝えたい話がある。
⸻
宇宙は約138億年前、ビッグバンによって始まったと考えられている。
しかし、その頃の宇宙には、ほとんど水素とヘリウムしか存在していなかった。
人間の身体をつくる炭素も、酸素も、カルシウムも、鉄も、まだ宇宙には存在していなかったのである。
では、それらはどこで生まれたのか。
答えは、星だ。
恒星の内部では、何億年、何十億年という時間をかけて核融合が起こり、水素からヘリウム、ヘリウムから炭素、酸素、カルシウムへと、生命に欠かせない元素が次々と生み出されていった。
そして巨大な恒星は、その一生の最後に超新星爆発を起こす。
その壮絶な爆発の中で鉄などの重い元素が誕生し、宇宙の彼方へと放たれた。
君の骨をつくるカルシウム。
君の血液に流れる鉄。
君の筋肉や脳をつくる炭素や酸素。
その原子の一つひとつには、何十億年も昔、どこかの星で生まれたという壮大な歴史が刻まれている。
長い宇宙の旅を続けたそれらの原子は、やがて地球となり、生命となり、
今、やっとやっと
「君」という存在になった。
だから君は、ただの人間ではない。
君は、星のかけらからできている。
⸻
ここで大切なのは、「クズ」と「かけら」の違いだ。
「クズ」とは、価値のない残り物という意味を持つ言葉だ。
一方、「かけら」とは、もとの大切な存在の一部を意味する。
君の身体をつくる原子は、かつて本当に恒星を構成していた一部だった。
だから、どれほど小さな原子であっても、それは星のクズではない。
星のかけらなのだ。
天文学者カール・セーガンは言った。
「We are made of star-stuff.
(私たちは星のかけらでできている)」
これは美しい比喩ではない。
科学が教えてくれた事実である。
⸻
だから、もし君が失敗して、
「俺はクズな人間だ」
そう思ったなら、思い出してほしい。
たった一度の失敗で、何十億年もの歴史を持つ原子の価値が消えることはない。
失敗は行動の結果であって、存在そのものの価値ではない。
君はクズなんかじゃない。
君は星のかけらなんだ。
⸻
*
ある日、私は落ち込んでる友人に言った。
「私に『俺はクズな人間だ』って言ってみて」
友人は少し戸惑いながらも、小さな声で言った。
「……俺はクズな人間だ」
そして
私は滔々と流暢に話し続けたのだった。
「違う。だから君はクズなんかじゃない。君は星のかけらなんだ」
友人が呆れて言う
「それを言いたかっただけだろ」
私は苦笑しながら肩をすくめた。
「まぁ、そうなんだけどね」
「ありがとう」
「気持ちよかったよ」
「お前ほんとクズな人間だな」
「いや、星のかけらです」
「……」
完
