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享年が変わる歌姫【テレサ・テン】

1995年。

私は夜の街で働いていた。同じ店で働く女性が一冊の週刊誌を開き、無言で私に差し出した。

そこに、目を閉じて横たわるテレサ・テンさんがいた。私は記事を読まなかった。

享年41

その数字だけが私の目に焼き付いた。

ワイドショーで詳しく報じられるだろう。そう思ってページから目を逸らした。

あれほどの歌姫の死。テレビは彼女の話題で溢れかえるはずだった。しかし訃報が流れることは一度もなかった。

ワイドショーは、何事もなかったかのように流れていた。司会者たちは別の話題で笑い、別の事件を報じ、テレサ・テンさんの名前を口にしなかった。

世間がどれほど悲しんだか、どんな言葉が飛び交ったか、彼女の死がどのように語られたのか。その全てを、私はリアルタイムで何ひとつ目撃していない。

私の中のテレサ・テンさんの死は、週刊誌の一ページと41歳という数字だけだった。

時は流れた。

テレビでテレサ・テンさんの特番があれば観てきた。そして画面には、いつも変わらず刻まれていた。享年41と。

週刊誌で見た41歳。何度特番を観ても、41歳は41歳だった。

数字は変わらなかった。

ところが数年前、いつものように特番を観ていた私は思わず息を呑んだ。

42歳に変わっていた。

世界が書き換えられていた。それ以来、世界は42歳で統一されている。

2025年。

BSドラマ『テレサ・テン 歌姫を愛した人々』が放送された。

録画は溜まる一方で、観れそうになかった。私は第1話以外を観ることを諦め、第1話だけを再生した。しかしその中で思いがけないものを見つけてしまった。

物語の中、ニュース速報のシーンが流れる。「5月8日、タイで亡くなりました」各局が一斉に報じる。

そして「43歳でした」と。何度聴き直しても43歳にしか聴こえなかった。

わずか数秒後「まだ42歳なのに」と登場人物のセリフの字幕が出た。

そして報道資料というテロップとともに、当時の映像らしきシーンが映し出された。これは再現映像ではなく、本物の記録らしい。

2025年になって初めてテレサ・テンさんの柩を見た。30年の時を経てようやくその光景を目にした。

私が観たのは42歳で亡くなった映像ではある。でも43歳という声も聞こえた謎。

数字は変わった。

けれど、あの甘く透き通った歌声は変わらない。どの世界でも輝いていた。

アジアの歌姫 テレサ・テン♡


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