【4】なぜ、誠実な管理職ほど変化を止めてしまうのか?――JTCに広がる「合理的停滞」
「変化を止めている人」は誰なのか。
こう聞かれると、保守的な人や抵抗勢力が変化を止めていると思う方が多いのではないでしょうか。
しかし、私が見てきた現場では、真面目で誠実な人たちが、変化を止めている場面が数多くありました。
これは、なぜ起こるのでしょう?
今回は、その構造を分析していきます。
1.組織の「変化を止める」のは誰なのか
ある管理職の話です。
その人は、職場の課題をよく理解しており、折に触れてこう言っていました。
「この業務は変えた方がいい」
実際、自分でも改善案を考えていました。
部下も同じ問題意識を持っていました。
ある日、部下が言いました。
「この施策を試させてもらえませんか?」
すると、その管理職は少し考えてこう答えました。
「良い案だと思う。でも、やるならちゃんと成功させたいんだよね」
「中途半端に初めて、全体に迷惑をかける訳にはいかないし」
続けて、「関係部署にも説明しないと」
数週間後。
「影響範囲を整理してからの方がいいかもしれない」
さらにその後。
「部長にも一度話しておこうか」
しかし、部下は、その施策を進めるための理屈がまだ手元に無いからこそ、試したいと願い出たのです。
小さく試してみなければ分からない。だから試したかったのです。
しかし管理職は逆でした。試す前に、説明できる状態にしておきたかった。
2人とも、組織を良くしたい、変えたいと思っていました。
これは共通しています。
しかし、少しずつズレが大きくなっていき、
気がつけば、その取り組みは止まっていました。
その管理職は、決して反対していたわけではなく、
むしろ実現したいと思っていました。
だからこそ、軽率に進めたくなかったし、周囲に迷惑をかけたくなかった。
しかし、それが故に、変化を止めてしまうのです。
こういう場面は、よくあるのではないでしょうか。
企画部門でも、営業部門でも、人事でも。
新規事業部門ですら、見られます。
2.「変化を止める人」の解像度を高める
そこで私は、こんな整理をしています。

変化に向けて動くことができていない人の行動には、
本人なりの合理性があります。
失敗すれば評価が下がるかもしれない。
説明責任も増える。
余計な仕事を抱え込むかもしれない。
場合によっては、もうこれ以上面倒なことに関わりたくないと思うこともあるでしょう。
そう考えると、止まることには合理性があります。
このような状態を「合理的停滞」と呼んでいます。
しかし、この「止まる」の解像度を高めていくと、
組織の中で実際に多く見かけるのは、
単純に変化を嫌っているから止まるというよりも、
真面目で誠実だから止まる、というケースが多いのではないでしょうか。
変化を嫌っているわけではない。
むしろ良くしたいとすら思っている。
それなのに止まってしまう。
今回のようなそのケースを、
合理的停滞の中でも「誠実停滞」と呼びます。
良くしたいと思っている。責任感もある。それなのに動けない。そんな状態です。
「もう少し整理してから」
「もう少し説明できるようになってから」
特に、管理職がこのような状態に陥っていると、
各所で生まれた「変化の種」を摘んでしまいます。
ここに、現代の組織が抱える難しさがあるように思うのです。
3.「変化を止める人」を変える突破口
この視点を踏まえると、「誠実だからこそ停滞する人を責める」ことで変化が進む訳ではない、ということに気づきます。
組織が動き出すための重要な突破口は、
「真面目な人が真面目なままで動ける状態をどう作るか」にあるのです。
それが「変化を実現する組織のマネジメント」なのではないでしょうか。
実は、私自身も、真面目に考えるが故に止まる傾向があります。
だから、決して他人事ではなく、自分自身も前に進み続けるために、実務家の立場からこの表を整理しています。
あなたの職場では、「誠実だからこそ止まってしまった」場面はありますか?
ぜひ、みなさんからのご意見もいただければ幸いです。
次回は、さらに深掘りして、
上司と部下それぞれが停滞しているとき、
最初に何から始めれば良いのかについて、
具体的にお話しします。
(参考)本記事は「なぜ、誠実な人ほど止まるのか―変革停滞論を考える」というマガジンの4話となります。
