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【3】真面目さが、自分を責めてしまうとき――彼女の失敗に"意味を見いだせる"管理職はいるだろうか?

前回、人は「どうせ変えられない」という無気力感を学習し、ある時、動けなくなってしまう、という話をしました。
今回は、そんな状態であっても、人がもう一度「やってみよう」と思えるようになる瞬間について、お話していきます。


1.大失敗した日

あるチームで起こった話です。
その事業は立ち上がってまだ一年ほどでした。
課題は山ほどありましたが、売上は日に日に伸びていました。
チーム全体にも勢いがありました。

そのチームに新しく配属された一人の女性が、
ある課題を解決するための施策を提案しました。
周囲も「もしこれが解決できるなら、この事業はさらに伸びるのではないか」と前向きな反応でした。

彼女は真面目な人でした。
入念に準備し、仮説を立て、企画書を作り込み、
関係者と調整し、「これならいけるのではないか」
と思えるところまで考え抜き、実行しました。

結果は、大失敗でした。
期待していた成果が出ず、数字もほとんど動きませんでした。

企画書そのものは論理的には正しそうなことを言っている。
周囲の人たちも、「できるかもしれない」と思った。
でも、人は理屈どおりには動きません。

その施策は、現場の感情や行動を十分に捉えられていなかったのです。
その結果の、失敗でした。


2.彼女が恐れていたもの

その結果をチームメンバーに報告する際、彼女は明らかに落ち込んでいました。

少しでも自分もチームに貢献したい、その思いで必死に取り組んできた企画で、結果的にチームに迷惑をかけてしまった。
期待に応えられなかった自分は、このチームに所属している価値がないのかもしれない、そんな風に思っている様子でした。
目には涙すら浮かんでいました。

彼女が、これまでの仕事で経験してきた仕事では、失敗は避けるべきものでした。

成果を出さなければならない。
ミスをしてはいけない。
失敗は評価を下げる。
失敗は無能の証明になる。

そんな空気の中で働いてきました。
過去の上司には「こんなミスをするようではとても昇格はさせられない」といったことも繰り返し言われてきました。

だから彼女にとって、今回の失敗は単に「結果が出なかった」ではなく、「自分の無能の証明」とまで思ってしまったのです。

彼女が恐れていたのは、「自分が所属している価値が無いのではないか」「また否定されるのではないか」という状態だったのです。


3.予想外だった反応

彼女の報告に対し、リーダーである管理職はこう言いました。
「なるほど。このやり方ではうまくいかないんだね。」
「じゃあ次はどうしようか。」

チームのメンバーも、そこに前向きな質問をかぶせていきます。
責める人も、失敗を正当化する人もおらず、ただ、全員が前を向いていました。

彼女は戸惑ったそうです。
「慰めてくれているのだろうか。気を遣ってくれているのだろうか。」
そんなふうにも思ったと言います。

でも、どうもそれだけではありませんでした。
チーム全体が本気で、そこから何を学べるかを考えていたのです。

彼女は、そこから、企画を練り直しました。
ただし、今度は「人は想定通りに動かない」という前提から考え直し、うまくいかなかったときのプランまで考えた、現実的で実効性のある施策になっていました。


4.なぜ彼女は、もう一度挑戦できたのか

あの日、彼女を変えたのは成功ではなく、失敗でした。
もっと言うなら、リーダーや周囲のメンバーが「その失敗をどう意味づけたか」でした。

実は、リーダー自身も内心は焦っていました。
この施策の失敗は、とても上層部に説明できるものではありませんでした。
それでも、この言葉をかけることが大事だと思ったのです。

もしあの日、「なぜそんなことをしたんだ」と責められ続けていたら、
彼女は、二度と挑戦しなかったかもしれません。
目立った反抗もせず、不満を口にする分けでもなく、ただし提案もしないままひっそりと時間が過ぎ、やがて異動を願い出ていたかもしれません。

この話を聞くと、「失敗への許容が大事」という話に思えるかもしれません。

しかし、それだけでは足りません。
このチームが見ていたのは、個人の成果ではなく、「事業全体の前進」だったからです。

全員が、この事業にはまだ正解がないことを知っていました。
だから誰か一人の失敗も、「あの人の失敗」ではなく、「チームが一つ学んだこと」として受け取られていました。

単なる慰めではなく、誰かの学びが、必ず次の前進につながるという成功体験をチームとして持っていたからなのです。

だから、彼女はもう一度試すことができました。
そして、チーム全体の試行錯誤のスピードもさらに上がっていったのです。


5.管理職が見落としがちなもの

多くの管理職は、成果を見ています。
ただでさえ忙しい中で、成果や目に見える進捗を管理することで精いっぱい、そんな人も多いでしょう。

しかし、成果だけを見ていると、
人は挑戦しなくなり、試さなくなり、学ばなくなります。

そして少しずつ、「どうせ変わらない」という無気力状態を学習していきます。

見過ごされがちではありますが、管理職の役割は、
「部下を失敗させないこと」やではなく、
「失敗に意味を見いだすこと」なのです。

もちろん、全てのメンバーの状況をリーダーが具に見ることは難しいでしょう。だからこそ、そういう空気感を作ることができるかが重要です。

あなたのチームで誰かが失敗したとき、メンバーから最初に出てくる言葉は何でしょうか。
「なぜ失敗したのか」でしょうか。
それとも、「何が分かったのか」でしょうか。

その違いが、次の挑戦を生むのかもしれません。

「どうせ変わらない」を学習する組織になるのか、
「もう一度やってみよう」を学習する組織になるのか、
その分岐点は、そんな小さな言葉の積み重ねに表れるのです。


(参考)本記事は、「なぜ、誠実な人ほど止まるのか―変革停滞論を考える」というマガジンの第3話となります。


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