AI小説が増えたなら、審査もAIになる――もう日本で「AI一次審査」は売られていた
こんにちは、neonです。
日経で、生成AIの普及によって文学賞への応募が急増し、選考コストが問題になっているという記事が出ていました。
それを受けてSNSを見ていると、
「もう公募も応募料を取ったほうがいいのでは」
という意見を結構見かけます。
一作5000円なりを取れば、生成AIで大量に作品を作って、片っ端から公募へ投げるような応募は減る。
理屈は分かります。
ただ、私は逆のことを考えていました。
AIで大量に書けるようになったなら、審査する側もAIを使えばいいのではないか。
出版社は応募そのものを減らしたいのか
そもそも新人賞は、新しい書き手を発掘するための仕組みです。
500作しか集まらない賞より、5000作集まる賞のほうが、その中にとんでもない才能が混ざっている可能性は高い。
出版社にとって問題なのは、応募数が増えることそのものではない。
5000作品を人間が読まなければならないことかなと。
だったら入口に応募料を設定して作品数を減らすより、審査側の処理能力を上げればいい。
そんなことを考えて調べていたら、もうありました。
しかも海外ではなく、日本に。
公募ガイド社が、もう「AI審査」を売っている
2026年6月、公募ガイド社は公募・コンテスト運営システム「Kouboプランナー」に、AI審査(一次スクリーニング)機能を正式に追加しています。
これがかなりそのままです。
AIに審査基準を設定して、大量の応募作品を一次評価させる。
「テーマ性」「オリジナリティ」「技術力」などの評価項目を設定でき、さらに複数の「AI審査員」を組み合わせて評価することもできます。短文だけではなく長文作品にも対応しています。
公募ガイド社自身も、数千件規模のコンテストでは一次審査だけで大量の時間とコストが必要になるため、AIで条件違反やテーマから大きく外れた作品などを先に省き、人間の審査員が有望作品に時間を使えるようにすると説明しています。
さらに同社の解説を見ると、文章コンテストへの利用も明確に想定されています。
短編小説なら、ストーリー展開、キャラクター描写、文章の流れなどをAIで分析して評価する、としています。
つまりこれは、
「AI審査って、そのうち出てくるんじゃない?」
という未来予測ではありません。
もう日本で商品として提供されています。
しかも、作っているのが「公募ガイド」である
ここが一番面白いところです。
どこかの生成AIベンチャーが、
「文学もAIで採点できます!」
と言い始めた話ではありません。
作っているのは、公募情報を長年扱ってきた公募ガイド社です。
現在の「Kouboプランナー」は、募集告知、応募受付、審査、結果発表まで公募運営をまとめて管理するシステムになっています。
そこにAI一次審査が追加された。
つまり、公募という仕組みを外から眺めているAI企業ではなく、実際に公募を運営する側の業務を知っている会社が「ここはAIで処理したほうがいい」と判断したわけです。
これはかなり意味が違うと思います。
「AIで応募が増えたから金を取る」は本当に最適なのか
生成AIによって作品を作るコストが下がる。
応募作品が増える。
人間だけでは読めなくなる。
そこで応募料を取って、入口を狭くする。
もちろん、それも一つの方法でしょう。
でももう一つ、
入口は広いままにして、審査側をAIでスケールさせる
という方法もある。
しかも後者については、すでに日本国内でシステムまで売られている。
そう考えると、
「生成AIで応募が増えすぎて、公募が維持できない」
という話も少し見え方が変わります。
生成する側だけAI時代になって、審査する側だけ昔と同じ人数で全部読もうとすれば、そりゃ無理が出ます。
本当に揉めるのは、たぶんここから
もちろん問題もあります。
AIに一次審査させれば、
「私の小説、人間に一回も読まれず落とされたの?」
という応募者は必ず出てくるでしょう。
さらに怖いのは、AIが「整っている作品」を好む可能性です。
文章は少し変。
構成も妙。
既存ジャンルにもきれいに収まらない。
でも、なぜか読ませる。
新人賞で本当に拾いたいのは、そういう作品かもしれません。
だから最終審査まで全部AIにやらせる必要はない。
一次審査をAIに任せ、人間がその後を読む。
AIが落とした作品の一部をランダムに人間が読み、AIが変な作品を落としすぎていないか監査する。
そんな設計もできるでしょう。
重要なのは、
「AIに文学賞を決めさせるか」
ではなく、
「応募作品すべてを、最初から人間が読まなければならないのか」
という問いだと思います。
生成AIによって公募の入口が壊れるほど広がったのなら、審査の仕組みも変わる。
そして少なくとも、そのための道具はもう日本にあります。
「AI小説が増えたから応募料を取ろう」と議論している横で、公募ガイド社はすでにAI一次審査を商品化していました。
なんというか。
書く側だけではなく、読む側ももうAI時代に入っているようです。
