美輪明宏「あなたのオーラは…」横のデブ「…」美輪明宏「黄色ね」横のデブ「ですね」
すっかり大人になったものの、脳内の悪ふざけ回路だけは24時間フル稼働中の石塚です。
大人になっても夜更かしの癖は一向に治る気配がありません。
最近、ふと昔流行ったあのスピリチュアルな番組を思い出しました。
大御所の美輪さまと、その横に鎮座するお上品な横のデブ。
このお二人が織りなす、流れるような様式美。
今改めて思い返すと、あの二人のコンビネーションが神がかっていて、一人で腹抱えて笑っちゃうのよね。
美輪さまが怪しげなパスを出せば、横のデブが絶妙に空気を読み合って、さらに狂ったように前向きなトーンで乗っかっていく。あの二人の呼吸、ちゃんちゃらおかしいくらいに完璧なんだわ。
ちょっと俺の脳内で、シミュレーションしてみたから付き合ってよ。
美輪明宏「あなたのオーラは……」
芸能人「……」
横のデブ「……」
美輪明宏「黄色ね。とても深い、重みのある黄色だわ」
横のデブ「ですね。ただの黄色じゃありません。例えるなら、長年放置された廃墟のトタン屋根から滲み出るような、なんというか、やるせないオーラが立ち上っている黄色です」
芸能人「えっ……廃墟のやるせない黄色ですか!?」
美輪明宏「そう、それも、前世のあなたが18世紀のフランスで、冷え切ったスープを毎日トロンとした口調で愚痴りながら飲まされていた囚人だったからなのよ。フフ」
横のデブ「ですね。当時のあなたは看守に向かって、スープは冷めてるより熱い方がいいわな、と反抗して、左肩をドスドスと棍棒で小突かれていたんです。その時の記憶が、今の、肩が重いというシグナルに繋がっているんです」
芸能人「だから私、フランス料理のスープを飲むと、いつも左肩がズキズキ痛むんでしょうか!?」
美輪明宏「宿命の糸は、どこまでも繋がっているの。お分かり? でも、亡くなったお母様がそんなあなたを心配して、さっきから左肩にピタッと寄り添っていらっしゃるわ」
横のデブ「ですね。すごく笑顔の素敵なお母様で。今、そのお母様があなたに、これ以上無理をしちゃダメよって、振り絞ってメッセージを送っているのがひしひしと伝わってきますもん。トロンとした口調でね」
芸能人「お母さん……! 私のために、そんな……」
美輪明宏「ふふ、お母様だけじゃないわ。あなたの背後には、室町時代の高名な絵師もついているのよ。その絵師が、あなたの芸術的な感性をずっと守ってきたの」
横のデブ「もっと言うと、その絵師が、あなたにお部屋の模様替えをしなさいって仰っているんです。特に、北東の角ね。そこに置いてある古いものが、霊的な磁場を狂わせているんです。ベッドの位置もね、その磁場のせいでちょうど良くない場所にありますよ。北西でしょ?」
芸能人「えっ! なんで分かるんですか!? 実は昨日、ベッドの位置を変えようか本気で悩んでて……」
美輪明宏「あなたの守護霊が、風通しを良くしなさいって仰っているの。そこに古い雑誌とか、ゴミが山積みにされていないかしら? そこから、闇が漏れ出しているのよ」
芸能人「あります! 数年前のファッション誌が山積みに!」
美輪明宏「それを今すぐ、多摩川で焼却処分しなさい。ふふ」
横のデブ「ですね。すぐ燃やす方向に走るのが、開運のコツです。灰にすることで、ニヤつく悪霊を退散させる効果もありますから」
芸能人「不法投棄とか大丈夫ですかね……あ、でも、燃やします!」
美輪明宏「すると不思議。お母様が、左肩から右肩へ、お引越しされるわ。ふふ」
横のデブ「ですね。先ほど、ちょっと左が凝ったから右に行くわね、と仰っていました。お引越しが完了した瞬間、あなたの運命は、藍より青い素晴らしい未来へとシフトします。まさに、あっぱれの一言です」
芸能人「なんだか、話を聞いているだけで、急に肩が軽くなった気がします……!」
美輪明宏「それは前世の囚人のあなたも、今のあなたの活躍をとても喜んで、微笑んでいるからよ。全ては、必然なのよ」
横のデブ「ですね。お見せできないのが非常に非常に非常に残念でならないほど、クリーンで綺麗な風景のような笑顔で微笑んでいますよ」
芸能人「あ、北東の角……。えっと、すいません、今思い出したんですけど、そこに置いてあるのって数年前のファッション誌じゃなくて、最近買った健康器具でした。昨日悩んでたベッドの位置も、よく考えたら南西でした。あ、記憶違いでした」
横のデブ「……」
美輪明宏「ふふ……いいのよ、それもすべては必然。あなたが南西だと思い込んでいるベッドの位置も、霊的な磁場によって歪められているのよ。お分かり? その北東にある健康器具が、すべての原因なの」
横のデブ「ですね! ですね! それです! むしろその健康器具こそが最大の罠なんです。健康器具のフリをして、実は『自分という闇』をブクブクと放出している物体に他ありません。室町時代の絵師も、北東にあるその機械を見て『なんじゃあのカラクリは、風通しが悪うて敵わん』と、激おこ状態でドスドス足を踏み鳴らしていますよ!」
芸能人「ええっ、そうなんですか!? すいません、でも、今さらによくよく思い出したら……その健康器具、先月友達にあげちゃったので、今そこには何も置いてないです。ただの壁です」
美輪明宏「ふふ、目に見える物だけが全てだと思ったら大間違いよ。物自体はなくなっても、そこには長年蓄積された『執着の記憶』がべっとりとこびりついているの。それを譲り受けたお友達との間にも、因縁の糸が絡み合っているのよ」
横のデブ「(一瞬、ピキッと引きつる)……そ、そうです! ですね! その通りです! あなたが手放したことで、今度はそのお友達が、あなたの代わりに負のエネルギーを引き受けてしまっている状態なんです。そのお友達の身にも、今ごろドスドスと災いが降りかかっているはずですよ」
芸能人「え、でもその友達、昨日ロト6で1等当たったって大喜びで連絡してきたんですけど……」
美輪明宏「それは一時的なあぶく銭、魔が差しただけよ。大きな幸運の裏には、必ずそれを相殺するほどの恐ろしい転落のカルマが潜んでいるの。前世の囚人だったあなたのように、一瞬の甘い汁の後に冷え切ったスープが待っているのよ。お分かり?」
横のデブ「(手元の資料を高速でめくり、冷や汗を流しながら)ですね! ですね! そのあぶく銭でさらに不浄なものを買い込んで、お友達の人生も破滅へと向かうわけです! 恐ろしいことです!」
芸能人「あ、さらにすいません! マネージャーから今カンペ出たんですけど、私、事前アンケートに書いた『北東の角に古いものがあって変な空気がする』ってやつ、完全にテレビ用に話を盛って書いた架空のエピソードでした! そもそも今のマンション、北東の角はクローゼットで、中には新品の服しか入ってないです! 完全な思い違いというか、真っ赤な嘘でした!」
横のデブ「(手元の資料をガシャーーーンと机に叩きつける。急にドスの効いた低い声になる)……ちょっと待って。あなたさっきから、打ち合わせの時と全然違うこと言ってるじゃない。事前アンケートにそうやってハッキリ書いたから、こっちはそれに合わせてフランスの前世とかお母様の話とか室町時代の絵師の話とか、全部つじつまが合うように構成を組み立てて喋ってるんですよ。何が架空のエピソードですか。台無しですよ!」
芸能人「えっ!? す、すいません……!」
横のデブ「(カメラ目線になり、スタッフを指差しながら怒鳴る)おい、カメラ止めろ。一回止めろって! こんなの、ただのこの人の虚言癖じゃないですか! もう一回最初からアンケート書き直させて撮り直しますからね!」
美輪明宏「(冷たい目で芸能人を見下ろし、扇子をパチンと閉じる)……ふふ。あなたのその『カルマ』を、今すぐ多摩川の水にでも流してリセットした方がいいんじゃないかしら。お分かり?」
まぁ、たまにはこういう現実離れした世界に身を委ねて、けだるさと睡魔から逃避するのも悪くないんじゃないでしょうか。
明日も適当にお気楽に生きていきましょう。
