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また熊か……と思って調べたら、悪いのは人間だった

定年後のひとりごと

定年退職して、ニュースを見る時間がやたら増えた。そりゃ週3日しか働いていないからですよね。

そしてすぐ気づいた。

テレビをつけると、どのチャンネルも熊である。

朝のワイドショーも熊。昼のニュースも熊。夕方のローカル番組も熊。 チャンネルを変えるたびに熊。「いっそ熊専門チャンネルを作れ」と言いたくなるほど熊だらけである。

熊が出る地域の方には大変深刻な問題だ。それは十分わかっている。
しかし、私の住む地域は、熊はいない(たぶん)。 だから毎朝「また熊か…」と思いながら、リモコンを手にする日々が続いている。

テレビの煽りすぎでしょ」と思いきや…

最初は「メディアの大袈裟報道」だと高をくくっていた。 ところが調べてみると、これが笑えない数字だった。

環境省のデータによると、クマの出没件数は年間5万件超。 しかも前の年が約2万件だから、1年で2.5倍に跳ね上がっている。

…テレビ、煽ってたんじゃなかった。本当にヤバかった。

日本の熊の総数は推計約5万4,000頭。しかも生息エリアはこの40年で2倍に広がっているとのこと。
つまり、人間様が「どんどん出ていってください」と言わんばかりに、山を手放してきた結果のようだ。

「なぜ出てくるのか」がまた面白い

GPS調査を行っている団体のデータによると、人里に出てくる熊は全体の約1割だそうだ。 残りの9割は、ちゃんと山の中でひっそり暮らしている「マジメな熊」なのである。

問題は、ドングリが大凶作の年。 食べ物がなくなったマジメな熊たちが、餓死覚悟で街へ降りてくるのだ。

「腹が減っては戦ができぬ」は、熊にとっても真実らしい。 出没5万件の正体は、そういうことだったのか。

熊を増やしたのは、実は人間だった

原因を調べると、人間側の「サボり」が見事に揃っていた。

まずハンターの激減。1970年代に40万人いた猟師が、今は約20万人に半減。高齢化に加えて、「下手な場所で撃ったら有罪判決」という空気も広がり、猟師さんたちも腰が引けてしまっているらしい。なんとも気の毒な話である。

次に里山の荒廃。かつては人間と熊の「緩衝地帯」だった里山や農地が、過疎化と高齢化でどんどん藪に戻り、熊にとって「都市への無料高速道路」が整備されてしまった。

つまり熊は、人間が作ったルートを歩いて、人間が減った場所に来ているだけなのだ。

熊問題=過疎化の問題?

テレビは衝撃映像を何度もリプレイして「大変です!」と騒ぐ。 東京のスタジオから「危険です!」と叫ばれても、こちらはどこか他人事に聞こえてしまう。

でも、熊ニュースの裏側に隠れているのは、 高齢化・過疎化・里山の消滅という、ずっと放置されてきた地方の問題が、ついに「熊の大行進」という形で表に出てきた、ということなのだろう。

熊は何も悪くない。 ただ、空いたスペースに引っ越してきただけである。

毎朝リモコンを握りながら「また熊か」とつぶやいていられるだけでも幸せである。

…我が家の周りに熊はきっといない(たぶん)。