鍋おじやが教えてくれた—「水分」こそ最強の栄養素かもしれない話
先日、急に寒い日が続いたある夜のこと。
キッチンの台の上を見ると、
数日前から「あごだし」と書かれた調味料が置いてある。
ずっとそこにあるのは知っていた。
でも奥さんは何も言わない。
これはもしや……と思っていたら、
その日の朝方、ひと言。
「今日は寒いから夜は鍋ね」
…きたか!
僕は鍋が大好きです。
寒い日に家に帰ってきて、
テーブルにぐつぐつ煮えた鍋が置いてある。
それだけでその日のテンションが上がる。
寒い日の一番の楽しみと言っても過言じゃない。
なんなら暑い時期でもいいぐらい好きです。
これだけは中年の主張として言わせてください。
たまに
「鍋は切って入れるだけだから料理とは言いづらい」という人がいます。
僕は、鍋は立派な料理だと思っています。
手間をかけることだけが料理じゃない。
素材を選んで、
出汁を選んで、
火加減を見て、
食べるタイミングを考える。
素材と出汁の力を最大限に引き出す、
れっきとした一品です。
それに、奥さんが家族のために準備してくれるという行為そのものに、
何より価値があると思っている。
その日の鍋は、
シンプルにあごだし。
白菜、
長ネギ、
エノキ、
しめじ、
豆腐、
ニンジン、
鶏肉
あごだしだけでも十分すぎるほど美味しい。
あごだしはトビウオからとっただしで、
上品な甘みと旨味がある。
それだけで素材が引き立つ。
後半からポン酢を少々かけると、
また別の顔が出てくる。
さっぱりとした酸味が加わって、
これがまたいい。
その日はあえて〆のおじやは我慢して、
白米でいただきました。
正直、おじやにしたかった気持ちもあったけれど、翌日のお楽しみにとっておいた。
そして翌日——余っただし汁でおじや。
これがまた、最高だった。
一晩置いたことで、
野菜や鶏肉の旨味が
さらにだし汁に溶け込んでいる。
そこに白米を入れて
ほどよくとろみが出たおじやは、
優しくて、深くて、
体にすっと入ってくる感じがした。
鍋ってすごい⁉︎という気づき
おじやを食べながら、なんとなく考えていた。
野菜、肉、水分、、一つの料理で、
世間で「摂ったほうがいい」と言われているものがほぼ全部摂れる。
しかもうまい。
完璧じゃないか。
タンパク質は鶏肉で摂れる。
食物繊維やビタミンは野菜で摂れる。
そして汁を飲めば水分も摂れる。
栄養士に献立を考えてもらったわけでもないのに、鍋という料理は自然とバランスが取れている。
でも、そこでふと立ち止まった。
「水分は……汁を飲んでいるといっても、ごくごくとはいってないかも?」
鍋の汁って、
料理の一部として飲んでいる感覚で、「水分補給している」という意識はほとんどない。
コップ一杯の水を飲むような感覚とは、
ちょっと違う。
いや、でも、、おじやにしたら話が変わる。
白米が汁を吸い込んで、
その水分ごと体の中に入っていく。
固形物として食べているようで、
実は水分もしっかり補給できている。
なんてすごい料理なんだ。
一人でじわじわと感動しながら、そのことをしばらく考えていた。
翌日、筋トレをしにジムへ行った。
なんか体が軽い。
調子がいい気がする。
気のせいかもしれないけれど、これは鍋の効果か?いや、おじやか?それとも水分か?
気になってしょうがなくなってきた。
井上尚弥選手のリカバリー飯
そう考えていたら、テレビで観たエピソードを思い出した。
ボクシング世界チャンピオン・井上尚弥選手。
みなさんご存知の「モンスター」と呼ばれ、世界中の強豪を倒し続けている日本が誇るボクサーです。
試合に向けて体を絞っていき、
計量という関門をクリアした瞬間、
体は極限まで消耗しきっている。
その状態から、試合本番までの数時間でどこまでコンディションを戻せるか。
これがリカバリーというの勝負どころ。
そんな井上選手が、
計量クリア直後に必ず食べるリカバリー飯として番組で紹介されていたのが、
お父さん特製のスーパーパワー鍋おじや
※すっぽんのエキスを入れてるとか聞いた気がします。
世界最高峰のアスリートが、極限状態からの回復に選ぶのが「鍋おじや」。
これを聞いたとき、
最初は「あ、家庭的でいいな」
井上選手が食べてる姿をみて「おれもたべたいな」くらいにしか思っていなかった。
でも今改めて考えると、これは偶然じゃない。
栄養の吸収率、水分補給の観点から見ても、
これ以上ないリカバリー食なんじゃないかと思う。
失った水分と電解質を、だし汁で補給する。
枯渇した糖質を、おかゆになった白米でゆっくりと補充する。
壊れた筋肉を修復するタンパク質を、
鶏肉や卵で補う。
消化に負担がかかりにくい形で、必要な栄養素が一皿に凝縮されている。
シンプルな料理の中に、科学がある。
そう思ったら、もっと深く知りたくなってしまった。
実は、みんな水分が足りていないかもしれない
最近、サプリメントやプロテインといった補助食品がかなり身近になってきた。
ドラッグストアに行けば、
プロテインバーからBCAAまで種類が豊富に並んでいる。
「タンパク質が足りない」と感じたら
プロテインを飲み、
「疲労回復に」ビタミンB群のサプリを買う。
不足している栄養素を手軽に補える、素晴らしい時代だと思う。
でも
その前提として、水分はちゃんと摂れているだろうか?
実は、現代人の多くが慢性的な水分不足状態にあると言われている。
のどが渇いたと感じる時点で、すでに体は水分を欲している状態。
つまり渇きを感じてから飲むのでは遅い。
どんなに良質なプロテインを飲んでも、
どんなに栄養バランスを整えた食事をしても、
体内の水分が足りなければ、
栄養素はうまく運ばれず、吸収効率も下がる。
高価なサプリメントを毎日欠かさず飲んでいるのに、水分不足のせいで体に届いていない。
そんな状態になっていないだろうか。
もしかしたら、サプリを見直す前に、
まず水分摂取を見直すべきなんじゃないか。
そんな疑問が頭から離れなくなった。
水分摂取が筋トレ・健康に与える影響
改めて整理してみると、
水分補給の重要性は想像以上に多岐にわたる。
① 筋肉のパフォーマンスを左右する
筋肉の約75%は水分でできている。
骨や脂肪と比べても、筋肉は特に水分を多く含む組織だ。
体重のわずか2%の脱水状態でも、
筋力・持久力・集中力が明らかに低下するといわれている。
体重70kgの人なら、たった1.4kgの水分不足でパフォーマンスが落ちるということだ。
逆に言えば、しっかり水分が補給された状態こそが、筋肉が本来のパフォーマンスを発揮できるベースになる。
ジムでいつもより重いものが上がった、
いつもより多くこなせた
そういう好調の日の背景に、実は水分補給が関係していることは十分あり得る。
② 栄養の吸収と代謝を助ける
食事やプロテインから摂ったタンパク質・糖質・ビタミン・ミネラルは、
水分を媒介として血液に溶け込み、細胞へ届けられる。水はいわば「栄養を運ぶトラック」のようなものだ。
水分不足はこのトラックの数が減るようなもので、栄養の吸収効率を下げ、
筋肉の回復を遅らせる原因になる。
せっかくトレーニング後にプロテインを飲んでも、水分が足りなければその効果が十分に発揮されないこともある。
③ 体温調節・疲労回復に直結する
トレーニングで発汗によって水分を失う。
この汗は体温を下げるための重要な仕組みだが、補給が追いつかないと体温調節がうまくいかなくなり、パフォーマンスの低下や疲労の蓄積につながる。
また、疲労物質の排出にも水分が関わっている。十分な水分があることで、代謝によって生じた老廃物が尿として排出されやすくなる。
疲れが抜けにくいと感じている人は、
水分不足が一因かもしれない。
④ 関節・筋膜のコンディションを保つ
あまり語られないが、
関節の動きにも水分は関係している。
関節液という潤滑油の役割を果たす液体があるが、これも水分から作られる。
水分不足が続くと関節が動きにくくなったり、筋膜(筋肉を包む膜)の滑りが悪くなったりする可能性がある。
筋トレや運動のパフォーマンスだけでなく、ケガのリスクにも影響してくる部分だ。
⑤ 腸内環境・免疫力にも影響する
水分不足は便秘や腸内環境の悪化を招く。
腸内環境が整うことで免疫力が高まり、体全体のコンディションに好影響を与えることが最近言われている。
「腸は第二の脳」とも言われるほど、
腸の状態は体全体の体調に影響する。
水分補給は、腸内環境を整えるための最もシンプルで効果的なアプローチの一つだ。
鍋おじやが理にかなっている理由
改めて「鍋おじや」を栄養の観点で分解してみると

水分・タンパク質・糖質・電解質を一皿でバランスよく、しかも消化されやすく吸収しやすい形で摂れる。
特に注目したいのは電解質だ。
運動後や脱水後は、水だけを補給しても体内の電解質バランスが崩れたままになりやすい。
だし汁にはナトリウムやカリウムなどのミネラルが含まれており、スポーツドリンクに近い電解質補給ができる。
しかも人工的な甘みや添加物ではなく、自然な食材からの補給だ。
おじやにすることで白米が水分を吸い込み、
固形物として食べながら同時に水分も摂れる。消化への負担も少なく、弱った胃腸にも優しい。
井上選手のお父さんのスーパーパワー鍋おじやが計量後のリカバリーとして機能するのは、
こうした理由が積み重なっているからだと思う。
経験と愛情から生まれた「父の味」が、科学的にも理にかなっているというのが、なんとも感慨深い。
水を飲むのが苦手な人へ
ここで一つ、正直に向き合いたいことがある。
「水を飲むのがそもそも苦手」という人が、一定数いる。
味がない、
飲むタイミングがわからない
気づいたら一日に全然飲めていない
トイレが近くなるのが嫌……
わざわざ水買うのがなんか勿体無い
水をスーパーで買うのめんどくさい
理由は人それぞれだ。
ただ、めんどくさがりな僕からすると、
どれも気持ちがわかります。
そういう人にとって
「1日2リットル飲め」というアドバイスは、
頭ではわかっていても実践が難しい。
義務感だけで水を飲み続けるのは、長続きしない。
だとしたら、発想を変えてみるといいかもしれない。
「水を飲む」のではなく、「食事から水分を摂る」アプローチ。
鍋、スープ、味噌汁、煮物
日本の食卓には、
水分を含む料理が豊富にある。
これらを日常的に取り入れるだけで、
意識しなくてもかなりの水分が補給できる。
水が苦手でも、美味しい汁ものなら自然と飲める。
食事を楽しみながら、同時に水分補給もできる。
また、飲みやすくする工夫として、
常温の水から始めてみる。
お気に入りのマイボトルを使う。
朝起きてすぐに一杯飲む習慣をつけるといったことも効果的だ。
ちなみに、ぼくは、
水道水を入れるだけのウォーターサーバを利用している。
それによって、水を買いにいくめんどくさいはなくなりました。
また、
出かけるとき水筒に水を入れもち歩いている。これにより、いつ飲めばいいかがなくなりあるから飲むにしている。
「美味しく、もしくは無理せず継続して飲める状況を作る」ことが、継続のカギになる。
水分補給は、
根性論ではなく習慣の問題だ。
自分に合った方法を見つければ、無理なく続けられる。
具体的に、1日どれくらい飲めばいいのか
「じゃあ実際どのくらい飲めばいいの?」という疑問も出てくると思う。
一般的には成人で、
1日1.5〜2リットルの水分摂取が推奨されているが、これは食事からの水分も含めた数値だ。
食事から約1リットル程度の水分が摂れるとすると、飲み水として追加で0.5〜1リットルを意識するイメージ。
ただし、
筋トレや運動をする日はこれに発汗分が加わる。
30分の有酸素運動で500ml以上の水分を失うこともあるので、
運動前・運動中・運動後のこまめな補給が大切だ。
目安として
起床後: コップ1杯(睡眠中に失った水分を補う)
食事ごと: コップ1〜2杯
トレーニング前後: それぞれコップ1〜2杯
寝る前: コップ1杯
これだけ意識するだけでも、
1日を通じた水分補給がかなり変わってくる。
まず「水分」を見直してみる
サプリやプロテインを揃える前に、
一度立ち止まって考えてみてほしい。
今日、水分は足りていますか?
どんなに高価なサプリを飲んでも、
体の中で栄養を運ぶ「水」が不足していては本末転倒になってしまう。
水分はすべての栄養素の前提条件とも言える。
筋トレのパフォーマンスを上げたい。
疲れを早く抜きたい。
健康的な体を維持したい。
そういった目標に向けて取り組んでいる人ほど、意外と水分摂取が盲点になっていることがあるのではないでしょうか?
奥さんが作ってくれた「ただの鍋」が、
水分・栄養・回復のすべてをカバーしていた。
翌日の筋トレでその答えを、身体が教えてくれた気がした。
世界チャンピオンのリカバリーにも鍋おじやが選ばれている。
先人の知恵と現代の栄養学が、
同じ答えにたどり着いている。
シンプルなものほど、実は本質に近い。
難しいことから始めなくていい。
今日の食事にスープや汁ものを一品加える。
ジムに行く前にコップ一杯の水を飲む。
それだけでいい。
水分摂取を、今日から少しだけ意識してみてください。
きっと体が応えてくれるはずです。
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