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できないことで上手くいく...


私は語学の学習が好きだ。
過去いろんな言語に挑戦してきた。


今でも英語と韓国語は継続して学習しているし、学習時間は少なくなっても中国語へのパッションは失ってはいない。


しかし、語学を仕事にしているわけではないので、その言語運用能力はたかが知れている。


ただただ学習することが好きなのだ。


ビール好きの人が、仕事が終わった後に冷えたビールを飲む時の幸福感と同じ感覚を、私は語学学習で味わっている。


だから、同じ語学学習好きの人に会うと、私は話が止まらなくなるので、自分だけずっと喋っていないか、自分でいつもチェックしている(笑)


語学学習ほど自分の世界を広げてくれるものは他にないと思うし、そう強く信じている。


言語は、他者とのコミュニケーションツールである。
話す相手があってこその「言葉」である。


私は、言語学習礼賛論者だけど…


しかし、ある種の人間関係、会社においては言語能力がない方が物事が上手くいくという経験をしたことがある。


ものすごくレアケースだと思うが、
異なる言語、異文化コミュニケーションの一筋縄ではいかない複雑さを感じたのでここに記しておきたい。


昔、タイ料理レストランでアルバイトしていた。
私は、キッチンに所属していて、タイ人男性の料理人と一緒に仕事をしていた。


私は、沖縄県出身で顔形は東南アジア系で、性格も日本人というよりはそっち系により近い(笑)


だから、タイの料理人の人たちは、私を日本人のようで日本人ではないどちらかといえばタイ人寄りの人間として、受け入れてくれていたようだ。


日本人で、私だけに炒め物のソースのレシピを教えてくれたりした。
私以外の日本人には秘密だったらしい(笑)


そんな感じの職場で1番盛り上がるのが、日本人店長の悪口だ。


みんなブチギレていることがよくあった。
いつもキッチン内、一触即発状態では…と心配になることも度々あった。


私はどうすれば日本人とタイ人が仲良くできるか悩んだりもしていた。


我がレストランの日本人店長はタイ語が全くできないし、
タイ人の料理人たちもそんなに日本語ができるわけではない。
それに労働、仕事に対する考え方も両国は違う。


私は、言語や文化の相違からくるディスコミュニケーションを毎日痛烈に感じていた。


私なりの解決策は…
日本人店長がタイ語やタイの文化を学んで、タイ人料理人達の考え方や感じ方を理解して、なんとか歩み寄るしかないのでは…という常識的で普通の意見を持っていた。


そんな頃に、タイ人と日本人のハーフの方と知り合いになった。


話の流れで…
私が勤めていたタイレストランの、日本人とタイ人のディスコミュニケーションの話になり、私は…


「日本人店長はタイ語を学ぶべきで、もっとタイの文化にも関心を持つべきだ!」


と持論を述べた。


私の持論に対する知人の答えに私は驚いた。


「日本人店長は、タイ語は勉強しなくていい。お店は今のまま何も変える必要はない。」


ことの次第はこういうことだ。


もし、日本人店長がタイ語が流暢で、そのことを、タイ人料理人達が知ると、表面的には仲良くなれる。


しかし、それは裏を返せば、不満がある時にタイ語で悪口が言えないことになる。


タイ人料理人たちは、お店の営業時間中はおとなしく口をつぐむしかない。
が、不満や鬱憤はそのままあるから、仕事が終わった後に朝まで飲み明かすことになる。


もし、そんな状況が続いた場合、どんどん仕事に対するモチベーションが下がっていって、
結果として料理人が突然みんなやめてしまうこともある。


だからタイ語が流暢な店長だったとしても、一言も喋れないフリをしている人もいるらしい…


ある意味、日本人店長がタイ語ができないということで、タイ人料理人達は営業時間内でガス抜きができていることになる。


私は、知人の言葉に深く納得していた。


お店では、日本人とタイ人との間に境界線があって、それぞれお互いの領域に深くは入り込まない雰囲気があった。


それが理解できるのは、私が沖縄人ということで、日本人とタイ人との境界線上に位置していたからだ。


確かに、日本人店長に対して、怒りが爆発していたこともあったけど、それはその日の営業時間内に終わることが多かった。


そして、辞めていく料理人はいなかった。


翌日には店長と冗談を言い合っていることもあった。


事実として、お店はとても順調だった。


もちろんこの一例を持って、コミュニケーションという巨大なテーマに何か結論的なものを言えるわけではない。


ただ…
私の浅はかな知識でコミュニケーションというものの全体像を理解できるはずもなく、
特に、異なる言語、異文化との接触は単純ではないということが分かった経験だった。



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