【小説】霊感があって御曹司で陰キャな俺が、いきなり悪霊退治を頼まれてしまった件 03
こちら長編小説「遠い銃声」シリーズのスピンオフとなります、が!
小説を読んでなくても楽しめます。
「遠い銃声」とは…ネタバレなし、おおざっぱな解説↓
💎登場人物💎
小野田白夜(ハク)(13)

大企業 小野田ホールディングスの社長の一人息子
物心ついた頃から霊感をもつ。
都内の私立中学校に通う
父の会社の経営を継ぐよりも、整体師になることにあこがれる13歳
覚海(かくかい)

白夜が物心ついたころから背後にいた守護霊達の一人。
寡黙な30代の僧侶。
結城

石に封印されていた武者…悪霊っぽい…
神谷 如月

白夜の母方の従姉、白夜が霊感をもっていることを幼い頃から知っており、自分の運勢の占いなどに利用していた。いろんな出来事に白夜をまきこむことが多い美人の大学生。
エピソード01
前回↓ 02

03 かあさんと一の姫

翌日、授業を終えた放課後、白夜は運転手が運転する車に乗って病院に向かった。
そこには彼の母が入院している。
個室をノックして入ると、人工呼吸器をつけて弱弱しく呼吸しながら横たわっている女性に挨拶をした。
「かあさん…来たよ」
「白夜…」
白夜の母にしては若すぎるような感じがあったが、美しい女性が彼の腕を握った。
「よく来てくれたわね…」
檻ごしに結城は彼女を見つめて、白夜に聞こえぬように檻のそばにいる覚海に小声で言った。
(長くはもたないな…)
覚海は静かにうなずいた。
(ん……)
結城は、もう一度覗き込んだ。
(一の姫…まさか?)
白夜は複雑な顔をしながら、母親を見て何かを話そうとしたが、小さな声がそれをさえぎった。
「夢を見たのよ、白夜…、あなたのお兄さんの昴がね、俺は近くにいるから、もっと丁寧に探してって言ってたの…かあさん…嬉しかったわ」
「かあさん、兄さんは俺と父様が探しているから、そんなこと考えずに体を治すことだけに集中して」
結城は覚海に尋ねる。
(彼の兄、昴という男は?)
覚海は答える。
(生後まもなく誘拐され、今だに見つかっていない、白夜の兄だ…)
(なんと…)
覚海は複雑な顔をした。
(実は白夜の兄昴は……いや、まだお前には言うのはやめておこう……)
結城はまだ白夜の母を覗き込んでいた。
ぱん
檻を壊して結城の右手が出た。

白夜は振り向くことなく強い力で結城の体を檻の奥に押し込み白い光で体を縛り上げた。
白夜は微笑みながら、母親と話していたが、結城の頭の中にムチのような強い衝動を受けるような白夜の声が響いた。
(かあさんに触れるな!かあさんを傷つけるなっ!)
結城を縛りあげた白い光は生き物のように結城の体を締め付け、彼は思わず叫び声をあげた。
(結城、お前は白夜を甘くみている。彼は子供だが、こういう『神の強い力』をいとも簡単に使うことができるのだよ)
白夜が振り向くことなく檻は修復された。修復が終わると、結城をしばりあげていた白い光はいつの間にか消えていた。
(ふん)
結城はふてくされると二人の様子を黙って見ていた。
病室を出、再び車に乗り込んだ時、白夜は辛そうな顔をした。
「かあさん…」
泣きそうな顔になり、その顔を両手で覆った。
その姿を背後から結城が覗こうとした瞬間、ぱっと両手を離して白夜が振り向いた。
(!!!!!)
結城が身構えると、振り向いた白夜は微笑んでいた。
「結城さん、今、俺の悲しみを吸い込もうとしたでしょ……」
結城は、う…と小さくいうと(そうだ)と返した。
「悪霊のごちそうになる姿なんて、見せないよ」
白夜は笑うと言った。
(ふん、ガキはガキらしく大声で泣けばいいんだよ)
結城は白夜をにらんで言った。
(まったく…弱いのか…強いのか……優しいのか厳しいのか……わけわからん)
檻の格子を揺らして結城は叫んだ。
(それが、『神の強い力』を使うことができる白夜という子供の姿だ)
叫ぶ結城を見て覚海はあきれた顔をしながら言った。
自分の部屋に戻った白夜は結城に話しかけた。
「ね、かあさんのことや、お兄さんのこと、学校のこと、俺のことわかったでしょ?結城さん、今度は、あなたのことを俺に教えてほしいんだ……」
(やだね)
結城は手を組んで言った。
「何をあげれば教えてくれるのかなあ…悲しい感情とか怒りの感情とかなしでね、実は俺、激しく怒ることも、大声で泣くことも苦手なんだ…」
(ふん)
結城は後ろを向いてそのまま横たわった。
覚海は結城のふてくされた姿を見て白夜に言った。
(酒が欲しい…と言っている)
結城は急に起き上がって覚海を見た。
(俺はそんなことひとことも言ってないぞ)
(酔いでもしないと話せないだろう、お前が過去を語るのに)
白夜はうん、と頷いた。
さっと立ち上がると、階下のダイニングキッチンに向かった。
結城が入った檻も覚海もついてくる。
「ねえ、コップとか必要かな、覚海さん」
(コップは人数分あったほうがいいな、実際に飲むわけではないから、小さ
いものでかまわないぞ)
白夜は冷蔵庫から、棚から、何本か液体の入ったペットボトルやガラス瓶をつかんで、自分の部屋に持っていった。
「俺、まだ未成年だからよくわからないけど、うちのお酒ってこれくらいかなあ…」
結城の目の前にペットボトルの容器に入った、料理酒が置かれた。
「これ、お酒だよね」
覚海はがっかりした顔をした。
「え?違うの?」
(酒には酒だが……)
「じゃあ、これ、俺も時々飲むけど、『甘酒』て書いてあるから酒だよね」
(米麹で作られた甘酒だ。酒と名乗っているが、一般の酒とは全く違うものだぞ、だから未成年のお前が飲むことができる)
白夜はあ、そうかと理解ができたようだ。
「これはどうかな、お父様がこの前、誰かにもらったらしいんだけど、まだ開けてないみたい『山崎』って書いてある、山崎さんが作ったのかな…」
覚海は目を輝かせた。
(白夜、これだ、箱を開けて、中の瓶を見せてもらえるか?栓は開けなくともよいから)
「父様に怒られそう…でも仕方がないよね」
結城は叫んだ。
(この生臭坊主がっ!小僧、この僧侶は自分が酒を飲みたいあまりにこんな戯言をほざくのだぞ)
「え?そうなの?覚海さん」
覚海は顔をあからめて天井をみた。
(この僧侶が生きた時代はな、僧侶は酒を飲むのを禁じられていたんだぞ)
結城は言った。覚海はばつが悪そうに返す。
(これは般若湯だ…酒ではない……)
(それは昔の坊主が禁じられた酒に偽ってつけた名前だ)
白夜は二人が言いあう姿を見た。
(守護している子供にこのようなことをさせるとは、お前は守護霊として失格だな)
結城は腕を組んで覚海に向かって言った。
覚海は、ハハと笑った。
「あのう……」
白夜は言った。
「俺の家に来る和尚さんは、お酒も飲むし、肉も食べるんだ。だから……大丈夫だよ、覚海さん、飲みなよ…」

いままでずっと覚海と一緒にいて、酒を飲むなどと言い出したのは初めてだった。賢い僧侶だから、それなりになにか策があっての発言なのかもしれないと白夜は思って山崎の外箱を開けた。茶色の液体の入った瓶を見た時、覚海は嬉しそうな顔をした。
「生きている時はお酒が好きだったんだね、覚海さん」
白夜は持ってきたプラスチックの二つのコップに注ぎ込む真似をして、覚海と檻の中の結城に入れた。
(おお、いい香りがする。お前も飲め、結城)
(この不良坊主が……)
そう言いながら、結城もコップを手にして飲んだ。
(あ…なんだ…麦くさい酒だなあ……)
(麦で作った酒だからな)
結城は少し口に含み、微笑んだ。
(ん、うまい)
白夜と覚海が覗き込んでいる気配を感じると、すぐに、その微笑みを消した。
少し考えたような顔をした後、結城は白夜に話しかけてきた。
(お前に聞きたいことがあった、お前の母親はどういう家系の出か?)
白夜は意外そうな顔をした。
「夏休みに調べて家系図を作ったことあったけど、代々商人の家系…。それより前は知らない…」
(武家ではないのか?)
「商人だよ」
白夜は返した。
「ね、結城さんこそ、室町時代の人だって聞いたよ。どのあたり?織田信長とか、武田信玄とか見た?」
(そうだな…似たような時代だ…だが、俺のいた国は、そんな彼らが攻め入られれば、あっという間に滅んでしまいそうなほどの小さな小さな国だった。実際、滅ぼしたやつも俺たちの国とさして大きさも勢いもかわらない小さな国の領主だった)
覚海がコップを白夜に差し出すので、また白夜は封の開いていない山崎を注ぐふりをした。何も入ってないコップの端を口につけてなぜか美味しそうに彼は飲んだふりをしている。
(一の姫はその、お前の国の姫だな)
(ああ、俺はそこの領主に仕えていた。一の姫はその娘、とても美しく優しい女性だった)
少しずつすすっていた結城は、白夜にコップを差し出して、酒のおかわりをした。白夜は先ほどした時と同じように封のついたままの山崎を傾け、結城のコップに注ぐ真似をした。
(攻め込まれて亡くなったのか?)
(一の姫とその一族はな…俺はその前に……)
結城は眉間にしわを寄せた。
(裏切り者として処刑された)
「えっ…」
(俺は領主の食糧庫と、武器庫の管理を任されていた。ある日、食糧庫と武器庫があらされた…その時、鍵を持っていた俺が疑われたのだ)
「犯人は誰だったの……?」
(俺の古くからの友人、同じ武器庫と食糧庫の番を任されていた男だ。彼は隣の国がせめてくる情報をどこからか先に仕入れて、武器と食料を隣の国の領主に差し出して、自分の家族たちだけ助けてくれるよう命乞いをした…そして、自分が犯人にならぬよう、俺に濡れ衣を着せた…)
「ひどい……」
白夜は叫んだ。
(いきなり、取り囲まれて縛られて、切りつけられた、死体は山奥に捨てられた。なぜ殺されたのか知ったのは死んだ後だ、霊となってさまよい、やっとの思いで領主さまの屋敷に戻ってきたら、屋敷は焼け落ちていて、そこには首のない、一の姫たちの死体があった。幼子、女、老人、全く関係ない。隣の国の領主は皆殺しにした後、滅ぼした証として、彼らの首を奪っていったのだ)
白夜は泣いた、涙をこぼした。
覚海は紙を取り出し、筆で何かを書いていた。
ふっと、覚海の隣に、小坊主が二人姿を現した。
(頼むぞ)
覚海は書いた紙を小坊主の一人に渡した。
小坊主二人は、旅人の姿に着替えると、消えた。
(その、裏切った男の一族を三百年かけて全滅させたのだな……。わかった。お前のくやしさはわかる……だが、なぜ、今も成仏せずに悪霊としているのか…、もうお前のくやしさははれたはず……)
結城は下を向き、白いコップを眺めた。
(うるさい…お前にはわからねーよ、生臭坊主……)
白夜は結城を見た。
結城の姿が輪郭がぶれていた。
(あれ?俺…目が悪くなったのかな?)
白夜は目をこすり、もう一度見た。
結城の後ろに、何か白いものが動いているのが見えた。
(あ…復讐と言う思いを遂げられたのに、成仏せずに、悪霊となっている原因…いた……)
白夜は結城の後ろで動いているものを調べ始めた。
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