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一人に戻る時間がないと壊れてしまう


人といるのが嫌いなわけじゃない。

ちゃんと話したい人もいる。
大事にしたい人もいる。
一緒にいて安心できる人もいる。

誰とも関わりたくないとか、社会から完全に離れたいとか、そういうことを言いたいわけでもない。

ただ、ずっと人の中にいると、だんだん自分が薄くなっていく感じがする。

朝、職場に行く。
挨拶をする。
誰かと話す。
電話が鳴る。
メールが来る。
急に話しかけられる。
会議に出る。
ちょっとした雑談に反応する。
相手の顔色を見る。
失礼がないように言葉を選ぶ。

一つひとつは、たぶん大したことではない。

でも、それが一日中続くと、帰る頃にはもう中身が空っぽになっている。

仕事が終わった瞬間、ほっとする。
でも同時に、もう何もできない。

誰かに連絡を返す気力もない。
好きなことをする元気もない。
家に帰ってからも、しばらく一人になりたい。

ただ黙っていたい。
何も聞かれたくない。
何も答えたくない。
何も判断したくない。

そういう時間がないと、心の中がずっとざわざわしたままになる。

でも、これを人に説明するのはけっこう難しい。

「一人になりたい」と言うと、冷たい人みたいに聞こえる気がする。

「疲れたから話したくない」と言うと、相手を拒絶しているように聞こえる気がする。

「今日は誰にも会いたくない」と言うと、人間嫌いみたいに思われる気がする。

だから、なかなか言えない。

本当はただ、少し静かに戻りたいだけなのに。

人と関わるのが嫌なのではなく、人と関わったあとの自分を回復させる時間がほしいだけなのに。

私は昔から、一人の時間がないとだめだった。

友達と遊んだあとでも、楽しかったはずなのに、家に帰るとぐったりしている。
飲み会の帰り道、ようやく誰にも話しかけられない時間になって、やっと息ができる。
職場の昼休みも、本当は一人でぼーっとしたい。
休みの日も、予定が続くと楽しいより先に疲れが来る。

たぶん、外から見ると分かりにくいと思う。

その場では笑っている。
相づちも打っている。
会話もしている。
別に怒っているわけでもない。

でも内側では、少しずつ電池が減っている。

誰かの話を聞く。
反応する。
表情を作る。
言葉を選ぶ。
場の空気を読む。
自分が変なことを言っていないか確認する。

それだけで、けっこう力を使っている。

たぶん、人といるだけで元気になる人もいるのだと思う。

話すことで気分転換になる人。
誰かと会うと明るくなれる人。
大勢の中にいる方が安心する人。

そういう人を否定したいわけじゃない。

ただ、私はたぶん逆なのだ。

人と関わると、ちゃんと消耗する。
たとえ楽しい時間でも、電池は減る。
好きな人といても、帰ったあとは一人に戻りたくなる。

それは、相手のことが嫌いだからではない。

自分を保つために、静かな時間が必要なだけだ。

でもこの感覚は、なかなか分かってもらえないことがある。

「せっかく誘ってくれたのに」
「たまには顔出せばいいのに」
「そんなに一人でいて寂しくないの?」
「もっと人と関わった方がいいよ」

そう言われると、自分が悪いような気がしてくる。

付き合いが悪いのかな。
冷たいのかな。
協調性がないのかな。
社会人としてだめなのかな。

そんなふうに考えて、無理に予定を入れる。

行きたくないのに行く。
疲れているのに笑う。
本当は帰りたいのに、もう少し残る。
一人になりたいのに、平気なふりをする。

その場はなんとか乗り切れる。

でも帰ったあと、どっと疲れる。
次の日まで引きずる。
何もする気が起きなくなる。

そして思う。

やっぱり、自分は人付き合いが向いていないのかな、と。

でも最近は、少し違う見方をしたいと思っている。

人付き合いが向いていないのではなく、自分に合った関わり方を知らなかっただけかもしれない。

ずっと一緒にいるのは苦手。
大人数は疲れる。
急な誘いはしんどい。
雑談ばかりの場は消耗する。
でも、一対一で静かに話すのは嫌いじゃない。
気を遣わなくていい人といる時間は、むしろ大事にしたい。
短い時間なら、楽しく過ごせることもある。

つまり、人が嫌いなのではない。

人との距離感に、かなり繊細なだけなのだと思う。

近すぎると苦しい。
長すぎると疲れる。
多すぎると圧倒される。
急すぎると固まってしまう。

でも、ちょうどいい距離なら、人と関わることもできる。

この「ちょうどいい距離」を、自分で守ることが大事なのだと思う。

でも真面目な人ほど、それが下手だ。

誘われたら断れない。
相手が話していたら、最後までちゃんと聞こうとする。
疲れていても、感じ悪く見えないように反応する。
本当は帰りたくても、場の空気を優先する。

そうやって、自分の限界を後回しにする。

そして、あとから一人でぐったりする。

誰かが悪いわけではない。

相手は普通に話しかけただけかもしれない。
普通に誘ってくれただけかもしれない。
普通に一緒に過ごしたかっただけかもしれない。

でも、こちらにはこちらの電池の減り方がある。

それを自分で分かってあげないと、誰にも分かってもらえないまま、静かに削られていく。

だから最近は、一人の時間を「余った時間」ではなく、「必要な時間」として考えたいと思っている。

暇だから一人でいるのではない。
友達がいないから一人でいるのでもない。
寂しい人間だから一人でいるのでもない。

自分に戻るために、一人でいる。

人の声から離れる。
通知から離れる。
誰かの期待から離れる。
役割から離れる。
ちゃんとした人のふりから離れる。

そうやって、ようやく自分の輪郭が戻ってくる。

何を感じているのか。
何が嫌だったのか。
本当は何をしたかったのか。
どこまでが大丈夫で、どこからが無理だったのか。

人の中にいると、そういう自分の声が聞こえにくくなる。

だから一人になる。

それは逃げではないと思う。

回復だ。

もちろん、ずっと一人でいられるわけではない。

仕事もある。
家族もいる。
生活もある。
人と関わらずに生きることはできない。

だからこそ、完全に一人になることを求めるのではなく、少しずつ「戻る時間」を持ちたい。

昼休みに少しだけ一人になる。
帰り道に音楽も動画も止めて、ぼーっとする。
家に帰ってすぐ話せないときは、少しだけ黙る時間をもらう。
予定を詰め込みすぎない。
誘いを全部受けない。
返信を急がない。
一人でいる自分を責めない。

小さなことでいい。

誰かと関わったあとに、自分に戻る時間をちゃんと用意する。

それだけで、少し生きやすくなる気がする。

人が嫌いなわけじゃない。

ただ、人といると疲れる。
疲れるから、一人になりたい。
一人になって、また人と関わる力を少し取り戻したい。

それだけのことなのだと思う。

でも、その「それだけ」が、なかなか言えない。

冷たいと思われたくない。
変わっていると思われたくない。
大げさだと思われたくない。

だから無理をする。

でももう少しだけ、自分に正直でいていいと思う。

今日は人と話す余裕がない。
今日は一人でいたい。
今日は早く帰りたい。
今日は返信を明日にしたい。
今日は何も聞かれず、ただ静かにしていたい。

そういう日があってもいい。

誰かを嫌いにならなくても、距離を取っていい。
大切な人がいても、一人の時間をほしがっていい。
社会の中で生きていても、静かな場所に戻りたくなっていい。

あなたは冷たい人ではない。

ただ、たくさん感じて、たくさん考えて、たくさん受け取ってしまう人なのだと思う。

だから、人より少し多めに静けさが必要なのかもしれない。

人が嫌いなわけじゃないあなたへ。

無理に社交的にならなくていい。
無理に明るい人にならなくていい。
無理に誰とでもうまくやれる人を目指さなくていい。

あなたには、あなたの関わり方がある。

近すぎない距離で。
長すぎない時間で。
多すぎない人数で。
無理に盛り上げなくてもいい関係で。

そういう形なら、人とつながることはできる。

一人になりたい自分を、責めなくていい。

それは孤独を選んでいるのではなく、自分を守っているだけかもしれない。

そして、自分を守れる人の方が、きっと長くやさしく人と関われる。

だから今日は、少し一人に戻っていい。

誰かの声から離れて、誰かの期待から離れて、普通の人のふりから離れて。

静かな場所で、自分の輪郭を取り戻していい。

一人になりたい。

その気持ちは、誰かを拒絶する言葉ではない。

自分に帰るための、大切なサインなのだと思う。

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