人生は「逆」にできている。頑張るほど遠ざかるものがある。
人生は「逆」が多いに共感した話。
そんなわたしは、いつもこう思っていた。
成果を出したければ、もっと働く。
自由になりたければ、もっと手に入れる。
強くなりたければ、自分一人で乗り越える。
評価されたければ、弱みを見せない。
成長したければ、優秀な人と自分を比べる。
失敗しないために、準備が整うまで動かない。
一見すると、どれも正しそうである。
僕自身も、そう思っていた。
もっと頑張ればいい。
もっと持てばいい。
もっと強くなればいい。
もっと完璧になればいい。
ところが、ある程度まで走ってみると、人生は少し違う構造をしていることに気づく。
前に進もうとして力を入れれば入れるほど、逆に遠ざかってしまうものがある。
人生には、直感とは逆方向に進んだ方がうまくいくことがある。
今日は、そんな「思考と結果の逆」について考えてみたい。
① 休むほど、成果が出る。
若い頃は、
「休んでいる人より、働いている人の方が成果を出す」
と思っていた。
もちろん、一定量まではその通りである。
しかし、ある地点を超えると逆転する。
仕事の成果は、
労働時間 × 判断の質
で決まる。
極端な例をいうと、
10時間働いていても、判断力が50%なら実質5時間分である。
一方、しっかり休んで6時間働き、その6時間を100%の判断力で使えるなら、後者の方が成果は大きい。
経営者になるほど、この差は大きくなる。
経営者の仕事は、作業量ではない。
誰を採用するか。
何をやめるか。
どこに投資するか。
誰と組むか。
一つの判断が、数百時間の労働より大きな価値を生む。
だから休むことは、仕事をしていない時間ではない。
良い判断をするための投資なのである。

② 捨てるほど、自由が増える。
人は自由になるために、増やそうとする。
収入。
肩書。
人脈。
仕事。
選択肢。
所有物。
しかし、増やせば増やすほど管理するものも増える。
仕事が増えれば責任が増える。
人間関係が増えれば気を使う相手が増える。
事業が増えれば意思決定が増える。
自由とは、
「何でも持っている状態」
ではない。
「持たなくても困らない状態」
なのだと思う。
本当の自由は、
何を持っているかではなく、
何を捨てられるかで決まる。

③ 頼るほど、強くなる。
昔の僕は、
「人に頼らない人が強い」
と思っていた。
自分で考える。
自分で決める。
自分で解決する。
確かに、それも一つの強さである。
しかし仕事の規模が大きくなればなるほど、一人でできることには限界がある。
そこで必要になるのが、
「頼る力」
である。
相談する。
任せる。
教えてもらう。
助けてもらう。
これは弱さではない。
自分の限界を正確に認識できる強さである。
一人で100までできる人より、
10人の力を借りて1000を作れる人の方が、結果として大きなことができる。
強い人とは、
何でも一人でできる人ではない。
自分だけではできないことを理解している人なのだと思う。

④ 弱みを見せるほど、好かれる。
完璧な人間は、一見魅力的に見える。
仕事ができる。
失敗しない。
悩まない。
弱音を吐かない。
でも、そんな人を見ていると、どこか距離を感じることもある。
逆に、
「実はこれが苦手なんです」
「このときは本当に失敗しました」
「正直、分からないので教えてください」
と言える人には、人間らしさがある。
人は完成された人間に惹かれるのではない。
少し欠けている人に、自分との接点を感じる。
弱さを隠すことが信頼を作るのではない。
弱さを扱えることが信頼を作る。
ここには大きな違いがある。

⑤ 比較をやめるほど、伸びる。
比較は便利である。
あの人より売上が低い。
同期より出世が遅い。
同年代より年収が少ない。
フォロワーが少ない。
数字で測れるから、分かりやすい。
ただ、比較には副作用がある。
それは、
「自分が本当に進みたい方向」
が分からなくなることである。
他人との比較を始めると、他人のゲームに参加してしまう。
本来、
人生は別々の競技をしている。
経営者と会社員。
東京と地方。
20代と40代。
独身と子育て中。
条件が違うのに、同じ物差しで測っても意味がない。
見るべきなのは、
他人との差ではなく、
昨日の自分との差である。
比較をやめると競争から降りるように見える。
しかし実際には、そこから初めて自分の成長が始まる。

⑥失敗するほど、上手くなる。
失敗したくないから準備する。
準備するから動けない。
動けないから経験が増えない。
経験が増えないから、さらに失敗が怖くなる。
これはかなり危険な循環である。
反対に、
早くやる。
小さく失敗する。
修正する。
またやる。
この人は、どんどん上手くなる。
仕事ができる人を見ると、
「最初から上手かった」
ように見えることがある。
でも実際には、
人より早く失敗して、
人より多く修正しただけなのかもしれない。
成功とは、
失敗しなかった結果ではない。
失敗からの修正回数が増えた結果である。

⑦小さな勇気ほど、人生を変える。
人生が変わる瞬間というと、
会社を辞める。
起業する。
結婚する。
移住する。
そんな大きな決断を想像する。
しかし、本当に人生を変えるのは、その前にある小さな行動だったりする。
一本電話をする。
一人に会いに行く。
「やりたい」と言ってみる。
「助けてほしい」と伝える。
誘われた場所に行ってみる。
たった一通のメッセージ。
たった一回の食事。
たった一つの挑戦。
その瞬間は人生を変えるほど重要だとは思わない。
しかし人生を振り返ると、大きな変化の入口には、だいたい小さな勇気がある。
人生は、
大きな決断によって突然変わるのではない。
小さな勇気の積み重ねによって、気づかないうちに方向が変わる。

人生は、足し算だけではない。
若い頃は、人生は足し算だと思っていた。
経験を増やす。
能力を増やす。
収入を増やす。
人脈を増やす。
肩書を増やす。
しかし30代になって感じるのは、人生には引き算も必要だということである。
休む。
捨てる。
頼る。
弱さを見せる。
比較をやめる。
失敗する。
完璧を諦める。
言葉だけを見ると、どれも「後退」に見えないだろうか?
でも実際には、その後退のように見える行動が、人生を前に進めることがある。
人生は不思議である。
追いかけるほど逃げていくものがあり、
手放した瞬間に手に入るものがある。
だから、
うまくいかないときほど、
「もっと頑張る」
だけではなく、
「逆をやったらどうなるだろう」
と考えてみてもいい。
休んでみる。
捨ててみる。
頼ってみる。
弱さを見せてみる。
比較をやめてみる。
与えてみる。
失敗してみる。
小さく挑戦してみる。
完璧を手放してみる。
人生を変える答えは、
いつも自分が向かっている方向の先にあるとは限らない。
もしかすると、
真逆にあるのかもしれない。
追伸
この記事に書いたことは、全部、僕自身が失敗してきたことである。
働きすぎて判断を間違え、抱え込みすぎて動けなくなり、比べすぎて自分の行き先を見失った。
だからこれは誰かへの助言ではなく、
20代の自分に宛てた届きはしない手紙だ。
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