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市長が産休を取る。そのニュースを、簡単には語れなかった

「子どもをもうけたければ、立候補しない」
京都府八幡市の川田翔子市長が産休を取るというニュースに、ある町議が寄せた言葉だ。
さすがに厳しすぎる。
そう思った。
けれど、そのまま「古い考えの人たちが怒っている」と片づけるのも、少し違う気がした。
もし自分の会社で、重要な仕事を担っている人が「4カ月休みます」と言ったら、僕の頭にも仕事の心配は浮かぶ。
納期はどうするのか。
誰が判断するのか。
取引先への説明はどうするのか。
最初から何の不安もなく、「大丈夫、ゆっくり休んで」と言えるか。
正直、分からない。
だからこの話を、賛成する人と反対する人にきれいに分けて考えることができなかった。
休む権利と、残る人の負担
川田市長は35歳。現職の女性首長として全国で初めてとみられる産休に入り、その間は副市長が職務を代理する。
権限を引き継ぎ、重要事項については報告を受けられる体制を整えるという。
仕事を放り出して、突然いなくなるわけではない。
一方で、市民が「本当に市政は回るのか」と気にするのも、不自然ではないと思う。
市長は選挙で選ばれた人だ。会社の役職者とは立場が違う。本人が不在になることについて、説明や引き継ぎを求められるのは当然だろう。
難しいのは、その心配が、
「どうすれば市政を止めずに休めるか」
ではなく、
「休む可能性があるなら、市長にならなければいい」
へ変わってしまうことだ。
妊娠や出産は、仕事の都合に合わせて正確に予定できるものではない。
病気、介護、事故も同じだ。
それらが起きない人だけをリーダーに選ぶなら、リーダーになれる人はずいぶん限られてしまう。
ただし、休む権利さえ認めれば、それで解決するわけでもない。
誰かが休んだ仕事は、多くの場合、残った人へ渡される。
引き継ぎが不十分なら、副市長や職員の負担が増える。会社なら、同僚の残業や取引先へのしわ寄せになるかもしれない。
休む人だけを応援して、支える人の負担を見なければ、別の無理が生まれる。
この点は、きれいごとにしたくない。
僕の会社なら、どうなるだろう
もし僕が明日から4カ月、会社を離れたらどうなるだろう。
見積、価格判断、資金繰り、取引先との調整。
止まる仕事は、おそらく一つではない。
その状態で、市役所にだけ「トップがいなくても回る仕組みをつくるべきだ」と言うのは簡単だ。
自分の会社でできているのかと問われれば、胸を張れない。
だから今回の出来事を、市長の決断が正しいか間違っているかだけで見たくない。
副市長への引き継ぎは実際に機能したのか。
職員の負担は増えなかったか。
市民はどこで困ったのか。
市長本人は本当に休めたのか。
うまくいった部分だけでなく、困ったことも残してほしいと思う。
それが分かれば、次に別の首長や経営者、社員が病気、介護、出産で仕事を離れるときの材料になる。
今回の産休は、「こうするのが正しい」という完成形ではない。
日本の組織が、休む人と残る人の両方を守れるのかを確かめる、最初の事例なのかもしれない。
僕もまず、自分が4カ月いなくなったら止まる仕事を、一つだけ書き出してみようと思う。
誰かを批判するより先に、自分の会社の不安なところを見る。
そこからなら、このニュースを少し自分の問題として考えられそうだ。
休める組織とは、休む人だけに優しい組織ではなく、残る人にも無理を押しつけない組織なのかもしれない。
あなたの職場では、休む人と残る人のどちらに、無理が偏っているだろう。

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