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初めての日、快感との出会い

あの日、部屋に満ちていたのは、夏の終わりのような、少し湿り気を帯びた午後の匂いだったと思う。
「性」という言葉が、まだ辞書の中の無機質な記号か、男子たちの下卑た笑い声の向こう側にあるものだと思っていた頃。
私は、自分の身体の中に、自分でも制御できない「熱」が潜んでいることに気づいてしまった。

きっかけなんて、驚くほど些細なことだった。
少女漫画の際どいシーン、あるいは映画やドラマの大人なシーン。そんな断片的な刺激が、私の下腹部に、じわりとした「重み」を落としていった。
それは食欲とも睡眠欲とも違う、もっと切実で、喉が渇くような感覚。
「触れてみたい」
その衝動は、好奇心というよりも、本能が突き動かす抗えない命令だった。
部屋のドアに鍵をかける。
カチリ、という金属音が、世界から切り離された合図のように響いた。
心臓の音がうるさくて、自分の呼吸が熱い。
私はゆっくりと、スカートの中に手を滑り込ませた。
初めて指先が「あそこ」に触れた瞬間、頭の奥で火花が散ったのを覚えている。
「ふっ」
声にならない吐息が漏れた。
自分のものなのに、自分のものじゃないみたいに熱い。
恐る恐る、けれど導かれるように、指先を動かしてみる。
教科書にも載っていない、誰にも教わっていないはずなのに、私の身体は「正解」を完璧に知っていた。
リズムを早めるたびに、意識が一点に集約されていく。
内腿が小刻みに震え、足の指先が丸まる。
カーテン越しに差し込む光が、やけに眩しくて、けれどそれがどうでもよくなるくらい、私は自分の内側から溢れ出す「熱」に溺れていった。
その瞬間は、突然やってきた。
下腹部の奥で、何かがパチンと弾けるような感覚。
身体中の筋肉が一度に収縮し、思考が真っ白な閃光の中に溶けていく。
指先が止まらず、腰が勝手に跳ねる。
「やめて」と「もっと」が、熱い塊となって喉元までせり上がってくる。
数秒、あるいは数分。
時間の感覚さえも消失した恍惚の果てに、私はシーツの上に崩れ落ちた。

嵐が去った後の部屋は、驚くほど静かだった。
さっきまであんなに激しく鳴っていた心臓が、今はゆっくりと、重いリズムを刻んでいる。
太ももに残る、微かな痺れ。
指先に残る、自分の身体から溢れ出た、ぬるりとした熱。
その時、最初に私を襲ったのは、快感の余韻ではなく、言いようのない「恥ずかしさ」と「罪悪感」だった。
「私、なんてことをしてしまったんだろう」
「はしたない。汚い。誰にも言えない」
鏡を見るのが怖かった。
そこに映る自分の顔が、今まで知っていた「お利口な自分」とは別の、何か得体の知れない生き物に見えたから。
私は急いで手を洗い、服を整え、何事もなかったかのように部屋を出た。
今、あの日の私に伝えたいこと
23歳になった今、あの日の私に声をかけられるなら、こう言ってあげたい。
「おめでとう。あなたは今日、自分の身体を愛する旅に出たんだよ」
あの時感じた罪悪感は、私が悪いのではなく、社会が私に押し付けた「呪い」だった。
あの日、私は初めて自分の欲望に蓋をせず、自分自身の快感に責任を持った。
それは、汚いことなんかじゃない。
生命として、あまりにも正しく、美しい覚醒だったんだ。
あれから何度も夜を越えて、私は私の愛し方を覚えてきた。
けれど、あの日感じた「真っ白な衝撃」だけは、今でも私の原点として、この身体の奥底に静かに息づいている。

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