続・お祭りの夜〜家族にはナイショが〜
「よし、今夜はみんなでお祭りに行くよ」
珍しく家族七人が揃っている、
朝食のリビング。
突然の嫁ちゃんのその言葉に、
僕は新聞を読みながら、昨夜の事を思い出し内心ドキドキしていた。
孫くんと次女は大喜びしている。
養女はこの後の段取りを考え始めたようだ。
長女の思考は既に屋台の食べ物達の事で涎の出そうな顔になっている。
僕と長男は顔を見合わせる。
「母さん、人混み苦手だから、最近行かなかったんじゃなかったの?」
「ま、そうなんだけどさ。
孫くんが大きくなって連れて行ってあげてないし」
「あと、ホットクと台湾カステラがどうしても食べたくてね」
あぁ、ここにも食いしん坊魔人が新たに現れたか。
いや違う、元祖だったw
養女と孫くん、それに次女は早速浴衣を買いに出掛けて行った。
長女は去年の夏祭りで着たものがあるらしい。
嫁ちゃんは着ない。
いつものお出掛け着だ。
実は浴衣そのものがあまり好きではないらしく、
僕も一度も見たことがない。
一回くらい見てみたい気もするが、
まぁいいだろう。
決して怖いもの見たさじゃない。
たぶん。
長男は僕の浴衣を貸してほしいと言う。 仕方ない。
今夜は甚兵衛か作務衣にしようか。
いつの間にか僕の服まで着られるようになった長男を見ていると、
少し感慨深いものがある。
……でも、
イケメン風味な長男が着ると妙に似合う。
なんか腹立つくらい似合う。
うん、やっぱり貸すのやめようかな。
祭り会場へ着いた瞬間から、
孫くんのテンションは上がりっぱなしだった。
甚兵衛姿であっちへこっちへ駆け回り、
ヨーヨー釣りに射的、輪投げと、
屋台を見つけるたびに目を輝かせている。
そして何より驚いたのがカタヌキだ。
「へぇ……未だにあるんだな」
子供の頃によく見かけた記憶はあるが
最近はすっかり見なくなったから、
無くなったのかと思っていた。
薄い板菓子を針で削りながら真剣な顔をしている孫くんを見ていると、
なんだか妙に懐かしい気持ちになる。
一方その頃。
嫁ちゃんはというと、早々にお目当てを確保してホクホク顔だ。
あれだけで祭りの目的の八割くらい達成した顔をしている。
長女は既に両手が袋やら食べ物やらで塞がっているにも関わらず、
焼きトウモロコシも食べていた。
器用だな、お前。
次女は二つ目のかき氷を食べている。
いや、好きに食べていいんだけどさ。
きっと、お腹壊すぞ。
そんな風に家族それぞれが祭りを満喫している中、
長女が突然声を上げた。
「あっ、お化け屋敷だ!」
祭り特有の、どこかチープな作りのお化け屋敷。
どう見ても怖そうには見えない。
長女は目を輝かせて孫くんへ向き直った。
「行こう!」
孫くんの顔が少し引きつった。
その瞬間、僕は察した。
あぁ、そうか。
孫くんの事、
結構"パーフェクト超人"なんじゃないか、と爺バカ全開で思っていたけれど。
苦手な物、あったんだな。
まぁ、次女も普段はあんな病み絵ばかり描いているくせに、
お化け屋敷は苦手なんだけどな。
しばらくして出てきた孫くんは少し涙目だった。
そして真っ先に養女の隣へ行き、
その手をぎゅっと握る。
養女は笑いを堪えながら頭を撫でていた。
なるほど、
そういう一面もあるのか。
家族になってから随分経つけれど、
こうしてまた新しい顔を知れるのは嬉しいものだね。
……まぁ、
孫くん。
仲良しのリス実ちゃんが今日いなくて、
本当に良かったね。

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