20歳で税理士試験に合格した私の「上塗り暗記法」:ゲームに2000時間使っても受かった理由
「理論を覚えても次の日には忘れている」「1日10時間勉強しているのに合格できない」。税理士受験生なら誰もが抱える悩みです。私も中学生の頃は暗記が苦手で、塾に1人だけ1時間残されることもありました。
この記事では、暗記が苦手だった私が20歳で合格できた「上塗り学習法」を公開します。しかもダークソウルに2000時間費やしながら。
現在は税理士法人ハンズの所長として実務に携わっています。受験時代は簿記論・財務諸表論・消費税法を1回目で合格、法人税法・相続税法を2回目で合格し、専門学校3年目の20歳で全科目合格しました。
注 おそらく普通に大学受験されていた方からしたら、当たり前すぎて何を今さらと思われると思います。念のためご注意を
中学生時代の失敗:「1題ずつ完璧暗記」が最悪だった理由
私が通っていた進学塾では「暗記しないと帰れない」というルールがありました。他の生徒が次々と帰る中、私だけが1人、1時間も塾に残されていたのです。
正直に言うと、私はそもそも単純な暗記がすごく苦手でした。
暗記が得意な人は、テキストを何度か読めばスッと頭に入るのでしょう。でも私は違った。何度読んでも頭に入らない。これは単なる勉強法の問題ではなく、自分の特性だと感じていました。
当時の私のやり方は「1題を完璧に覚えてから次へ進む」というものでした。一見、丁寧で確実な方法に思えますが、これが最悪の選択だったのです。
結果はどうだったか?
1週間で2題しか覚えられない。この効率の悪さは、完璧主義と単純暗記の苦手さが組み合わさった結果でした。1題を完璧にしようとするあまり、反復の回数が圧倒的に少なくなっていたのです。
記憶は「完璧に1回」ではなく「薄く何度も」が原則です。この失敗が、後に私が発見する「上塗り学習法」のきっかけになりました。
税理士試験は、まさに忘却曲線との闘いです。
一度覚えた直後は80%くらい頭に残っていても、翌日には30%程度、さらに次の日には20%程度まで落ちてしまう。これが記憶の現実です。
ただし、20%まで落ちたタイミングで再度覚え直すと、次は90%くらいまで回復します。その後もまた50〜60%、40%と下がりますが、繰り返すたびに忘れるスピードは少しずつ緩やかになります。
つまり、上塗り学習法とは「忘れない方法」ではありません。
忘れる前提で、忘れかけたタイミングにもう一度塗り直す方法です。

冬休みの奇跡:2週間で45題覚えた「上塗り学習法」
税理士試験の1年目、税法最初の受験に向けた冬休みに大きな壁に直面しました。
消費税法・法人税法・相続税法の3科目を受験予定でした。
課題:税法3科目の理論15題ずつ、計45題を2週間で覚える
当時の私は1週間で2題がやっとのペース。
計算上、45題を覚えるには22週間以上かかる。つまり、従来の方法では絶対に無理だったのです。
「やり方を変えるしかない」
そこで私が試したのが、45題全てを毎日薄く繰り返すという方法でした。
具体的なやり方
1日目:45題全てに目を通す(ほぼ覚えられない)
2日目:ほとんど忘れているが、もう1回上塗り
3日目以降:毎日45題を上塗り
ポイントは「内容理解を優先し、ちょっとずつ上塗りしていく」感覚です。
1題1題を完璧にしようとはしませんでした。
その代わり、45題全体をざっと理解し、それを毎日繰り返す。忘れかけたところに上塗りする過程で、記憶が定着していくのです。
結果:2週間で45題全ての暗記に成功
これが「上塗り学習法」の誕生でした。
税理士試験の理論暗記は、この方法で進めないと覚えられないことを確信しました。
単純な暗記が苦手な私でも、この方法なら記憶に定着させることができる。1年目の受験に向けて、この方法で勉強を進めました。

脳のメモリを節約する:「タイトルだけ書く」暗証法
名作『HUNTER×HUNTER』でヒソカが放った一言。メモリの無駄使い。
暗記が苦手だった理由も、メモリを無駄使いしていたからでした。

理論の勉強にはいろいろなやり方があります。
全部紙に書いて覚える人もいます。テキストを閉じて、頭の中だけで最初から最後まで暗証する人もいます。ひたすら読む人、声に出して読む人もいます。
私が意識していたのは、必要な負荷はかけるけれど、不要な脳のリソースは使わないということでした。
税法理論は、結局は長い文章です。たとえばテキスト2ページ分の理論でも、よく見ると大きな塊ごとに見出しがあり、その中に小さな箇条書きや要点があります。
本文を全部書こうとすれば膨大ですが、タイトルや見出しだけなら5行前後に収まります。
そこで私がやっていたのは、まず何も見ずに、その理論のタイトルだけを紙に書くことでした。大きな見出し、小さな箇条書き、文章の骨格になる部分だけを先に書き出します。
その後、その紙を見ながら中身を暗証していきます。
ゼロから暗証しようとすると、「今どこまで言ったか」「次に何を言うか」「全体の流れはどうなっているか」まで、全部頭の中で保持しなければなりません。これがかなり脳のメモリを使います。
でも、タイトルだけを紙に出しておけば、全体の地図は紙が持ってくれます。頭の中では、そのタイトルの中身を思い出すことだけに集中できます。感覚としては、脳の負荷が半分くらいになるイメージでした。
これがかなり大きかったです。
脳が疲れにくいので、1日に回せる理論の量が増えます。紙は捨て紙で十分です。とにかくタイトルだけを何度も書く。最終的には、タイトルだけを書いた紙が山のようにできました。
このやり方のおかげで、理論を何百周も回すことができました。

スケジュール管理がストレスを減らす:ダークソウルに2000時間を費やす
実は、受験生時代の私の勉強時間は1日10時間もしていませんでした。
なぜなら、ダークソウルに学生2年半で約2000時間を費やしていたからです。他のゲーム(ノベルゲーム、アクションゲーム、格闘ゲーム)もめちゃくちゃやっていました。※未だに色あせない名作なので是非
「それで合格できたのはなぜか?」
答えはスケジュール管理です。
上塗り学習法を実践するには、綿密なスケジュールが必要になります。
例えば、150回上塗りすると決めたら
試験日から逆算して、何日前から開始するか
1日あたり何回上塗りするか
どの理論をどのタイミングで上塗りするか
これを全て計画に落とし込みます。

スケジュール管理のメリット
ストレスが減る:スケジュール通りに進めれば合格できる実力が身につくという確信が持てる
メリハリがつく:スケジュールの部分が終われば、自由時間(ゲーム・遊び)を罪悪感なく楽しめる
精度が上がる:やるべきことが明確なので、集中力が高まる
スケジュールより先に進める理由もないし、遅れる理由もない。この割り切りが、ストレス少なく精度の高い勉強を可能にしました。
結果として、ゲームに2000時間使いながらも、効率的な勉強で20歳での合格を実現できたのです。
実際の受験結果と「理解」の重要性
上塗り学習法を発見し、初めての受験に臨みました。
1年目の結果
消費税法:合格
法人税法:B判定(当時は不合格にAからDまでの判定がありました)
相続税法:A判定
全科目合格とはいきませんでしたが、上塗り学習法のおかげで理論暗記はかなりできていました。単純暗記が苦手な私でも、それなりに勉強ができたのです。
受験を通じてさらに重要な気づきを得ました。
「理解していないと暗記ができない」
ただ機械的に上塗りするのではなく、内容を理解しながら暗記する。そして暗記した理論を、計算問題に落とし込むところまで実践する。この一連の流れが重要だと気づきました。
2年目の戦略
暗記以外の時間を、税法の条文を読むことに使いました。
「この場合はどうなるだろう?」
「この規定の趣旨は何だろう?」
条文を読む力、法律の全体構成を、他の受験生より深く勉強できました。上塗り学習法で暗記を効率化できたからこそ、この時間を確保できたのです。
2年目の結果
法人税法:余裕を持って合格
相続税法:余裕を持って合格
最後の税法合格時には、専門学校の全国直前答練でも結果が出ていました。正確な回数は記憶ベースですが、全10回弱ほどあった専門学校の答練は、すべて全国1位でした。
このときは、問題を見てから考えるというより、どの論点が出ても「どの条文の、どの趣旨の、どの処理を聞かれているのか」がすぐに見える状態でした。
理論を丸暗記していただけではなく、条文の構造や計算とのつながりまで理解できていたので、初見に近い問題でも迷わず答案に落とし込めたのです。
もちろん、もともと暗記が得意だったわけではありません。むしろ暗記が苦手だったからこそ、全範囲を毎日上塗りし、忘れかけたところを何度も塗り直しました。
その結果、直前期には「覚えているかどうか」ではなく、「本試験形式で安定して点を取れるかどうか」という段階まで精度を上げることができました。
不合格になるイメージは全くありませんでした。
そして専門学校3年目、20歳で全科目合格を果たしました。
まとめ
税理士試験の理論暗記は「1回で完璧」を目指すのではなく、「100回200回上塗りする」前提で進めることが重要です。
忘れかけたところに上塗りする過程で記憶が定着します。これは脳科学的にも正しい学習法です。
そしてスケジュール管理により、ストレスなく効率的な勉強とメリハリのある生活が両立できます。
今の勉強法を一度見直してみてください。
「1題ずつ完璧暗記」になっていませんか?
「全題を薄く毎日上塗り」に切り替えるだけで、記憶の定着率が劇的に変わるはずです。
