白銀の騎士【note準拠版】(18)
前回の話
6.白銀の騎士 act.3
その間にも、
メイン実験制御室では
騒ぎが起きているようだった。
『コウ、すぐに降りなさい!』
『冷静になって下さい、メイ主任。
今、我々を救えるのは
息子さんだけなんですよ』
『そうです。
彼に"WN(ヴァーン)"がもう使えるんだと
示してもらって、
軍部の誤解を解いてもらいさえすれば…』
コウは父の言葉を思い出していた。
「8ケタの最初は9、
あとはお前の生年月日だ。
操縦システム責任者の母さんが設定した」
最初の番号を「9」と打ち込んで、
コウは気づいた。
これは「q」…
自分の名前「Quou」の頭文字だ。
そして新暦3ケタから始まる生年月日。
『コウ君、起動コードは9270…きゃっ』
『やめて!
あの子を巻き込まないで…いやっ…』
『…コウ君、もう一度最初から言うわ。
起動コードは…』
「わかってます。もう打ち込みました」
『コード確認。操縦システム起動します』
緑色の字が点灯すると同時に、
視界がぱあっと開けた。
頭部の光認識システムからの映像だろう。
今度はモード選択を促すレイヤーパネルが
目の前に表示される。
“レスキュー”を選ぶと、
画面にいくつもの光点が表示された。
緑は安全な状態にいる生存者、
赤は早期救助を要する生存者、
黄色は生存の「可能性がある」者で、
色が薄れるにつれ
生存している可能性も薄い…
ゲームでは、そうだった。
様々に設定された状況に応じて、
どこから救助を始めるかを決める。
けど、
ゲームと現実とでは、
なんて違うんだろう。
前方の瓦礫の下に
いくつかの黄色い光点があり、
見る間に色が薄まっていく。
こんな残酷なシステムってあるものか。
「ごめん…!」
コウは思わず目をそむけ、
ゲームで何度もやったように
機体を操作する。
大きく一歩前へ出て向きを反転、
これくらいならもう身体が覚えている。
メイン実験制御室に向かって立つと、
さあっと顔の血の気が引くのが
自分でもわかった。
部屋の中に緑の光点はなく、
赤と黄色が密集している。
スコープを合わせると
『気温42℃・自力脱出不可能』
の文字が点滅しているから、
そのせいだろう。
生存者16名、可能性あり3名…
が、もう2名に変わった。
「くそっ…!」
こんなに胸がドキドキして
操作盤が汗で滑るなんて、
ゲームの時はあり得なかった。
そのせいだろうか、
先ほどから操作の感じが
どうも重い気がするのは。
脱出口をサーチする。
部屋の奥…は、難しい。
幸い、実験ドームのタラップに出る
非常口があった。
システムはその歪んだ扉を点滅させ、
最適と計算された「道具」を表示する。
「盾の裏側のレーザーナイフって…
こんな物が必要なのか?」
ゲームでは
“シューティング”モードの近距離戦で
使ったくらいで、
“レスキュー”で使うことは、まずなかった。
「今、こちら側の扉をこじ開けます。
下がってください」
通信の向こう側で歓声が沸いた。
『わかったわ。ありがとう、コウ君』
盾の裏側に右手をやり、
セラミック製の刀身を引き抜く。
一瞬遅れて、ヴィン…という音とともに
ナイフの刃の部分をレーザー光が彩った。
それにしても
システムの反応がまどろっこしい。
ただでさえ焦っているっていうのに。
その時、
耳を覆うほどの警告音が
ヘルムモニターの耳元で鳴り響いた。
いいなと思ったら応援しよう!
応援いただいたチップは、創作のために大切に使わせていただきます