白銀の騎士【note準拠版】(12)
前回の話
4.白亜の殿堂 act.2
「“グランドビーム”、目標に命中」
この対艦砲は連射ができない。
エナジー充填と砲身の冷却に
約10秒を要する。
射撃間隔がここまで縮まったのは、
他ならぬ目標施設―――
『自由都市』中央研究棟が
総力を挙げた研究の成果である。
皮肉なものだ、とヘタレ中尉が思った時、
射撃兵の呟きが通信に流れ込んできた。
「…う、嘘だろ?」
主に戦艦・基地の破壊に使われる
“グランドビーム”は、
至近距離なら核シェルターさえ無力化する。
いくら頑丈でも、市街地の建造物なんて
薄い紙箱のようなもの…の、はずだった。
「どうした。状況は?」
「し、施設半壊。
目標地点にはシェルターらしき
固い壁が見えます」
「やはりだめか」
「やはりって…。
何なんですか、あの建物は?」
「『自由都市』中央研究棟、
中央特別実験室だ」
聞きたかったのは正式名称ではないのだが。
モニター映像の拡大スイッチを
操作しながら、
やはりこの上官はちょっと苦手だ、と
射撃兵は思った。
「ああ、確認できました。
やはり穴はあいています。
続けて撃ちます」
「待て。ここからじゃだめだ」
「え、ええっ?」
「至近距離から確実に破壊するんだ。
弾はあと5発しかない」
「しかし、それでは敵の攻撃が…」
「見ろ。
今の“グランドビーム”で、
敵は怯んでいる。今のうちだ」
確かに、
しつこくまとわりついていた敵の戦車や
宇宙艇の攻撃が、まばらになっている。
「了解。至近距離というと…」
「真上だ。
それ以外ではドームを傷つける
恐れがある。
それから、ジェット噴射は
目標地点直前まで使うな。
市民は地下に避難しているとはいっても、
ここは市街地だ。
むやみに傷つけるわけにはいかん」
「わかりました。
歩いて行くしかありませんね」
* * *
「げっ、正気かよ!」
新国連軍の宇宙艇を操縦していた
バイプ・レイヤー少尉は叫んだ。
「あ…あいつら、
味方のコロニー内で『ヘル・フレイム』を
ぶっ放しやがった!」
『黒いゴーレム』が
突然コロニー内に出現した時は驚いたが、
自分のいたS地区の
真反対の方角だったので、
バイプは胸をなで下ろした。
今回はこっちの奇襲が成功しているし、
戦局も有利。
やつらの目的が何だかわからんが、
自国コロニー内で
まともにドンパチやるつもりはなさそうだ。
無茶やらなきゃ生き残れるな。
そう思った矢先の出来事だった。
新国連軍は「総攻撃」指令を取り下げ、
『黒いゴーレム』と現在交戦中の部隊には
「中距離からの撹乱攻撃」に、
それ以外の部隊には「警戒しつつ待機」
指令に切り替えた。
敵の標的は都市中央の研究施設。
さすがにコロニーを破壊するつもりは
ないようだ。
どうやら、あの白亜の建物には
重要な軍事機密が隠されているらしい。
都市コロニー内で、あの対艦砲を使ってまで
破壊しなければならないほどのものが。
だが、それを確保するのは不可能に近い。
文字通り『地獄の炎(ヘル・フレイム)』で
一緒に焼き尽くされるのがオチだろう。
それに、今回の作戦では、
一般市民の人命尊重が
最優先事項とされている。
『圧政からの人民の解放』を旗印に、
歴史ある『自由都市』をほぼ無血制圧。
市内の一般兵も大方が
武器を捨てて投降したという。
これだけでも、
お釣りが来るほど充分な戦果であることに
違いはなかった。
妙な欲をかいて、
あの『黒いゴーレム』2機を相手に
被害を拡大させる愚をおかす気は、
新国連軍の作戦司令部には
全くなかったのである。
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