白銀の騎士【note準拠版】(25)
前回の話
9.転機 act.1
「いったい、何が起きているんだ!?」
新国連軍の作戦本部は、
大スクリーンに映しだされる光景を見て
騒然とした。
無理もない。
廃墟と化した中央特別研究棟のドームから
見たこともない白い人型戦闘機が飛び出し、
ゴモン軍の『黒いゴーレム』を
一撃で屠り去ったのだ。
残った1機の『黒いゴーレム』は、
白い人型戦闘機としばらく対峙したあと、
おもむろに交戦をはじめた。
やがて、
あのおそるべき対艦砲『ヘル・フレイム』が
白い人型戦闘機の喉元に突きつけられ、
勝敗は決したように見えた。
だが、『黒いゴーレム』はとどめを刺さず、
まるで逃げるようにその場から飛び去った。
あとにはただ、廃墟に立ち尽くした
白い人型戦闘機が残された。
「何者なんだ、あれは…」
敵か、味方か。
それすらわからない。
その場にのしかかる
冷えきった沈黙を破った者がいた。
「わたしは、
あのパイロットを知っています」
皆が言葉の主に注目した。
新国連直属艦の艦載機パイロット、
バイプ・レイヤー少尉だ。
「彼は民間人で、
カク・シュジーン博士の息子です。
歳は15歳」
軍部のお偉いさんたちは顔を見合わせ、
ざわついた。
「…まさか、冗談じゃないだろうな」
睨みつける某国参謀長に、
バイプはうんざりとしながら答えた。
「本当です。残念ながら」
「ばかな。
民間人の子供が、
なぜあそこまで戦える?」
「それは“彼”に訊いてみないと
わからないでしょう」
嫌味か怒号を浴びせられる前に、
バイプは続けて言った。
「どうか出撃許可をください。
わたしが“彼”を説得します」
バイプは発進前の自機の中で
思いっきり伸びをした。
頭の固いオヤジどもめ、クソっくらえだ。
さっきもそうだった。
俺は事細かに状況を説明したつもりだが、
話半分に聞いていたとしか思えない。
死ぬような思いをして持ち帰った
シュジーン博士のアタッシュケースに、
「危険物が仕込んである
テロではないのかね?」
とか抜かしたバカがいやがった。
こんな猜疑心の塊みたいな
おっさんばかりがトップだなんて、
シュジーン博士も浮かばれねえ…っと、
彼はまだ生きてたっけ。
そんなこんなで、
博士のアタッシュケースは
まだ開けられていない。
いちおう危険物処理班が
遠隔操作ロボットで開封するんだと。
アホか。
ともかく、一瞬でも早く、
この勲章ばかり多い有象無象の巣窟を
離れられるだけでも嬉しかった。
「さてと、少年(ボーイ)。
いい子で言うこと聞いてくれよ」
バイプはせいせいした気分で操縦桿を握り、
発進のカウントダウンを待った。
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