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村山籌子の魅力【ネズミの逆転劇】

村山籌子(かずこ)童話集
「ママのおはなし」より
挿絵:村山知義


ごあいさつ

こんにちは。

なぜ、私が
村山籌子(かずこ)さんの童話に
これほど心惹かれるのか。

それは、
ときにシュールと思えるほど…
ファンタジーでありながら、
妙に現実的なところですかね。

それが、ドライでウィットにとんだ
ユーモアに繋がっています。

今日ご紹介するお話のテーマは
「猫とネズミの攻防」。

トムとジェリーを挙げるまでもなく、
古今東西どこにでもある
永遠のテーマですね。


「おはなを かじられた おねこさん」
~ゼリーは高価な憧れのお菓子だった

青空文庫
https://www.aozora.gr.jp/cards/001172/files/44975_45444.html

この本にも載っています
(アフェリエイトリンクではありません)


「きむずかしや」のお猫さん

気難し屋…
この表現じたい、
現在では馴染みのない言葉ですね。

自己チューで神経質…くらいに
思っていいかと思います。

このお話の「おねこさん」は、
そんな「気難し屋」の、
いい歳をしたオッサンです。

なぜ、そう推理したかといえば、
「新聞を読んでいる」からです。

当時(大正~昭和初期)、
まだまだ新聞は
女性の読むものではありませんでした。

なぜ年齢が若くないかといえば、
そのほうが、お話が面白いからです。

…というか、
昔は「気難しい」といえばオヤジ。
オヤジといえば「気難しい」と
相場が決まっておりましたので。


逆転劇のおもしろさ

この「おねこさん」
(気難しいオヤジ…たとえば
 佐藤浩市さんを想像してください)
…が。

元気いっぱいの三歳児
(くらいの、好奇心と行動力に
 満ちあふれた、赤ちゃんネズミ)
…に。

あろうことか、
居眠りしているスキに
お鼻をかじられてしまいます。

理由がまた、素敵です。

猫のお鼻の先に
おいしい ゼリーの かけらが
 くっついて いたから
」。

…そりゃあ、かじるわ。

謎の説得力があります。

ゼリーは、今でこそ
珍しくはありませんが、
このお話が書かれたのは昭和6年。

舶来品のハイカラなお菓子であり、
庶民には手の届きにくい
高級品であったと思われます。

…そりゃあ、
赤ちゃんネズミでなくとも
かじりたくなるというものです。


ガンコおやじ、叫ぶ

鼻をかじられたオヤジ猫は
目覚めて大声で叫びます。

『わあ、とらに かまれた。
 とらだ、とらだ。
 たすけて くれ――。』

虎に鼻をかまれた夢を見て
目覚めたからです。

いい歳をしたオヤジが
こんなふうに叫ぶのは、
みっともないものです。

けれども、
ご近所さんの動物たちは
なにごとか、と助けにやってきます。

もちろん、オヤジ猫の
日ごろの行動には
腹を立てていましたが…

トラ(893筋の強盗)に
殺されては「かわいそうだ」と
いうことで、
駆けつけてくれるのです。

まだ「ご近所さん」という
相互扶助の仕組みが
残っていた時代の話です。

それが「いい時代」…
だったかどうかは、
人によって
考えが異なると思いますが。


その結末

なにもなかったので、
助けにきてくれた
ご近所さんたちは、
腹を立てて帰ってしまいます。

そりゃあ、そうですね。

気難しいオヤジが
(佐藤浩市さんや…
 佐野史郎さんあたりを想像してください)
大きな悲鳴を上げたら
なにごとかと思いますものね。

ところが…
これからが、面白いのです。

家に帰った三歳児
(赤ちゃんねずみ)は、
オヤジ猫の家の大騒ぎが
自分のせいだとは知りません。

そこで、のんきに
母親に報告するのです。

オヤジ猫の鼻先に
ゼリーがついていたので
かじったこと。

そして
あんな ゼリー、
 おうちでも こさえてね。

まさかの
「ハイカラ洋菓子をお家で再現」
リクエストです。

余談ですが、
当時の婦人向け雑誌には、こういう
ちょっとハイカラな洋食の
レシピが載っていたものです。

ひょっとすると、籌子さんも
そういった雑誌記事から
お話の着想を得ることが
あったかもしれません。


ご近所の噂になってしまう

母親はびっくりしますが、
ネタがあまりに面白いので
黙っていられません。

あっという間に
事件の真相が、
ご近所に広まってしまいました。

「 まちじゅうは 大さわぎです。
 みんな まどから くびをだして、
 『アハハハハハ』
 と、大わらい いたしました。

そりゃあ…

気難しいオヤジ猫の、
あの死にそうな悲鳴が
三歳児ネズミに鼻先をかじられたせい
…しかも、ゼリーのせい…
だというんですからね。

鼻先にゼリーをつけて
居眠りをしていたということは、
オヤジ猫も、その直前まで
ゼリーを食べていたことになります。

気難し屋のオヤジが
(佐藤浩市さんや…
 佐野史郎さんあたりを想像してください)
ハイカラなゼリーを食べる…

しかも食べこぼしを
鼻につけたまま寝る…というのも
ミスマッチのおかしさがあります。


ついには事件がバズる

町じゅうに
恥が知れ渡ったオヤジ猫は、
そのとき牛乳を飲んでいました。

飲んでいた牛乳が
喉につかえて飲めなくなるほど
恥ずかしい思いです。

その、しかめっ面を
スクープした新聞記者
(犬のカメラマン)がいて…

翌朝の新聞に、
オヤジ猫の写真を載せたのです。

おそらく、
(お話では書かれていませんが)
事件のおもしろい顛末も
記事になったことでしょう。

さしずめ現代で言うなら、

「 えっくすの どうがとうこうで
 おねこさんの しかめっつらが
 大バズり いたしました。」

…というところでしょうかね。


驚くような幕引き

気難しいオヤジ猫が、
新聞でバズった自分の写真を見て
どうなったか。

「 じぶんながら その しかめつらが
 おかしく なったので、
 大わらい いたしました。

あんまり笑ったので、
その時から「怒る」ということを
忘れてしまい、

「 とても にこにこした
 いい おねこさんに なって、
 おしまいには、
 まちの にこにこクラブの
 かいちょうさんに なりましたそうです。

お話は、ここまでです。
すごい幕引きですね。

けれども、こういう
ちょっと強引なシメかたも
籌子童話の魅力のひとつだったりします。

…しかし、ちょっと待て。
「にこにこクラブ」とは何ぞや!?

さては…
町内会の親睦会みたいなものか?
商工会の〇〇部みたいなものか?

謎が、謎を呼ぶラストです。


シメ

本当は、もうひとつ
お話をご紹介しようと思ったのです。

しかし、ご存じのように
字数をかなり使ってしまいましたので
残念です。

村山籌子さんの童話は、
残念ながら現在のところ、
一般に広く知られているとは
いえないところがあります。

この記事でご紹介したのは
ほんの1話だけですが…

その奇抜で面白い世界に
触れるキッカケになってくれれば、
他に望むところはありません。

それでは、また。

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