資金繰りが苦しい経営者ほど、最初に手放すべき仕事がある
資金繰りに困っている経営者へ
来月の支払いが、頭から離れない。
朝起きた瞬間に、口座残高を考える。
入金予定を確認する。
給与の支払日を数える。
金融機関に何を説明するかを考える。
追加で資金を確保できる先を探す。
営業をしなければならない。
商品を改善しなければならない。
社員の不安にも向き合わなければならない。
それでも、頭の中の大半を占めているのは資金繰りだ。
今、この状態にいる経営者に伝えたい
あなたの経営能力がなくなったわけではない。
資金繰りに、能力を使う時間を奪われている。
ただし、この状態を放置すれば、会社は本当に動けなくなる。
資金が減ると、経営者の判断は短期化する
資金繰りが厳しくなると、経営者の視線は近くなる。
今月をどう乗り切るか。
来月の給与をどう払うか。
どの支払いを先にするか。
金融機関に何を話すか。
どれも、避けて通れない問題だ。
しかし、この対応だけで一日が終わるようになると、会社の未来をつくる仕事が止まる。
顧客への提案が遅れる。
新しい商品を考えられなくなる。
社員との会話が減る。
重要な意思決定を先送りする。
さらに危険なのは、目の前の入金を優先するあまり、将来の負担を増やしてしまうことだ。
採算が悪くても受注する。
不利な支払い条件を受け入れる。
自社の強みと関係のない案件に手を出す。
売上をつくるためではなく、今月の入金をつくるために動き始める。
その結果、忙しいのに利益が残らない。
仕事は増えているのに、資金繰りは改善しない。
資金が減る。
資金繰りに時間を使う。
本来の営業や事業開発が止まる。
さらに資金が減る。
資金繰りは、財務だけの問題ではない
経営者の時間と判断を短期化させ、会社の動き方そのものを変えてしまう経営問題である。
優れた技術があっても、会社は資金繰りで止まる
私が支援した会社には、特許技術があった。
大手企業との取引実績もあった。
代表は、ゼロから新しいプロダクトをつくることを得意としていた。
創業時には資金調達にも成功しており、決して可能性のない会社ではなかった。
しかし、コロナ禍によって店舗営業と開発が止まり、当初の事業計画が大きく崩れた。
店舗ビジネスとハードウェアビジネスを抱えるなかで、資金は減っていった。
代表は次第に、金融機関への対応と資金繰りに、多くの時間を使うようになった。
本来、代表が考えるべきことは別にあった
どのような商品をつくるのか。
誰に、どのような価値を届けるのか。
どこで売上をつくるのか。
次の事業をどう伸ばすのか。
しかし、現実には口座残高を確認し、金融機関への説明を考え、資金を確保する方法を探していた。
新しいプロダクトの構想は止まった。
次の事業展開を考える余裕もなくなった
会社から技術が消えたわけではない。
代表から構想力が失われたわけでもない。
代表にしかできない仕事へ使う時間が、資金繰りによって消えていた。
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必要だったのは、資金を集めることだけではなかった
私は、
資金繰りが詰まり、経営者が事業に戻れなくなった会社で、
金融機関対応と事業計画の再設計をたくさん担ってきた。
この会社への支援も、資金調達から始まった。
ただし、借りられる金融機関を探すだけでは、根本的な解決にはならない。
最初に行ったのは、会社の数字と事業の状況をつなぎ直すこと
今後、どこから売上が生まれるのか。
調達した資金を何に使うのか。
返済原資をどこからつくるのか。
計画が外れた場合、何を止めるのか。
事業計画と資金計画を切り離さず、金融機関が判断できる形へ変えていった。
金融機関との交渉では、経営者の熱意も重要だ。
商品にどれだけ自信があるか。
会社を立て直す覚悟があるか。
事業をどこへ進めたいのか。
こうした思いがなければ、計画にも説得力は生まれない。
しかし、金融機関の担当者が組織内で稟議を通すには、思いとは別の材料が必要になる。
返済可能性を数字で示す。
資金使途を明確にする。
売上計画の根拠を説明する。
計画が外れた場合の対応策を示す。
担当者が上司や審査部門に説明できる材料をそろえる。
自社の事情を一方的に訴えるのではない。
自社の事業を、金融機関が判断できる言葉と数字に変換する。
資金調達を前へ進めるには、この翻訳が必要になる。
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代表に伝えたのは、「資金のことは任せてほしい」だった
私は代表に、資金面と金融機関対応は任せてほしいと伝えた。
その代わり、代表には売上づくりとプロダクト開発へ集中してもらった。
経営者がすべてを抱えることが、責任を果たすことだとは限らない。
むしろ、経営者にしかできない仕事を止めていることがある。
金融機関との折衝を任せる。
資金計画の作成を任せる。
事業計画を数字へ落とし込む作業を任せる。
そのうえで、経営者は顧客、商品、売上、組織に向き合う。
この会社の代表にしかできないことは、
新しいプロダクトの構想をつくることだった。
顧客の課題を捉えることだった。
次の事業機会を見つけることだった。
支援を進めるなかで、代表が使う時間の中身は変わった
資金の心配に使っていた時間が、商品と顧客を考える時間へ戻った。
止まっていたプロダクトの構想が、再び動き始めた。
目の前の支払いだけではなく、次の事業展開を考えられるようになった。
将来的な企業価値の向上や、EXITまで視野に入れられるようになった。
この変化を、資金調達だけの成果として捉えるべきではない。
資金を確保したことで、代表の役割を本来あるべき場所へ戻すことができた。
会社がもう一度動き始めたのは、代表が代表にしかできない仕事へ戻れたからだ。
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資金調達は、会社を変える時間を買う行為である
資金調達が実行されれば、会社が存続できる期間は延びる。
しかし、資金が入っただけでは、会社を立て直したことにはならない。
資金調達によって得られるものは、会社を変えるための時間だ。
その時間で、何を変えるのか。
誰が資金を管理するのか。
誰が金融機関と話すのか。
誰が事業計画を更新するのか。
誰が数字の異変を見つけるのか。
経営者は、何に集中するのか。
ここまで決めなければ、会社は再び同じ場所へ戻る。
資金調達後も、
経営者が支払い管理と金融機関対応を抱え続けていれば、会社の動き方は変わらない。
ランウェイが延びただけで、問題を先送りしたことになる。
資金調達はゴールではない。
会社の動き方を変えるための猶予を得る行為である。
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資金繰りが苦しいとき、今日確認すること
資金繰りが厳しいときに必要なのは、希望的な事業計画ではない。
まず、会社に残された時間を正確に把握する
今後13週間の入出金を見る。
現在の現預金で、いつまで会社を維持できるのか。
予定している入金は、本当に予定日に入るのか。
支払いが先で、入金が後になる案件はないか。
止められる支出と、止めてはいけない支出を分けられているか。
次に、相談する期限を決める
金融機関への相談を、資金が尽きる直前まで先送りしてはいけない。
残された時間が短くなるほど、金融機関が検討できる選択肢も減る。
最後に、経営者自身の時間の使い方を確認する
資金繰り表の更新。
金融機関向け資料の作成。
支払い予定の確認。
これらを経営者自身が抱えることで、次の売上をつくる活動が止まっていないか。
すべてを自分で確認することよりも、経営者にしかできない判断を止めないことの方が重要だ。
今日、置いてほしい問いは一つだけだ。
今、私にしかできない仕事は何か。
その仕事以外で一日が埋まっているなら、役割分担を変えなければならない。
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資金繰りが苦しい経営者へ
資金繰りが厳しくなると、経営者は自分を責める。
売上をつくれなかった。
投資の判断を間違えた。
固定費を増やしすぎた。
金融機関への相談が遅れた。
振り返りは必要だ。
しかし、自分を責め続けても、会社に残された時間は増えない。
必要なのは、現状を正確に見ることだ。
残された時間を確認する。
止めるものを決める。
必要な相手へ早く相談する。
経営者が抱える必要のない仕事を手放す。
そして、次の売上と事業の可能性へ時間を戻す。
この記事で残したいことは、ひとつです。
資金繰りの支援とは、
お金を集めることではない。
経営者が前を向き、本来の仕事に戻れる状態をつくることである。
今、資金繰りに苦しんでいたとしても、会社のすべてが終わったわけではない。
ただし、残された時間を曖昧にしたまま、同じ動き方を続けてはいけない。
危機は、資金が尽きた日に始まるのではない。
売上、顧客、現場、資金に出ていた異変を、一つの経営問題として扱わなかった時間によって深くなる。
危機が手遅れになるまでの構造と、
残された時間が少ない会社で何を優先すべきかは、こちらにまとめました。
「手遅れ|危機はこうして深くなる」
今、資金繰りに追われている経営者へ、この文章が届いてほしいと思っています。
周囲に思い当たる経営者がいるなら、この記事を届けてください。
この記事が役に立ったと感じたら、スキを押していただけると、同じ問題を抱えている経営者へ届きやすくなります。
