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80兆円が、メモリで生まれた日——テンセントを抜いた中国の「赤い刺客」

まーです。

2026年8月13日、中国の半導体メモリー大手、長鑫存儲技術(CXMT)の親会社である長鑫科技集団の株式時価総額が3兆5,367億元(約83兆円)に達し、香港市場に上場するテンセント(騰訊控股)を上回りました。中国企業として時価総額首位に立ったのです。

ただ、この「逆転」には、実は前段があります。CXMTが上海証券取引所の科創板に新規上場したのは、2026年7月27日。その上場初日、株価は一時55元を突破し、時価総額は3兆7,000億元近くまで達して、瞬間的にテンセントを上回る場面がありました。しかしその日の終値では3兆2,800億元まで押し戻され、テンセントの後塵を拝することになりました。

つまり8月13日の逆転は、「一度は超えたが、その場では守り切れなかった王座を、3週間あまりを経て、終値ベースで初めて奪還した」という出来事です。一度きりの瞬間的な現象ではなく、市場がこの企業の価値を、時間をかけて再評価し続けている——そう捉えるのが正確だと思います。

投資運用会社アルスプリング・グローバル・インベストメンツのポートフォリオマネジャー、ゲイリー・タン氏は、この逆転についてこう述べています。「長鑫科技の時価総額がテンセントを上回ったことは、一つのシグナルを発している。半導体が、新しい"クリック数"になりつつあるのだ」。インターネット・プラットフォーム企業が中国の時価総額ランキングの上位を占め続けてきた20年余りの構図が、ここに来て変わりつつあります。

今日は、この「記憶を売る会社」の実像と、その波紋がどこまで及ぶのかを、丁寧に見ていきます。


赤字163億元から、四半期黒字248億元へ

まず、CXMTという会社の財務の実態を確認します。この会社の急成長ぶりは、率直に言って尋常ではありません。

同社は2023年に163億元の赤字を計上していました。ところが2026年第1四半期(1〜3月)だけで、247億6,000万元の黒字を計上するまでになっています。『TechPowerUp』によれば、2026年第1四半期の売上高は約508億元(約75億ドル)で、前年同期比719%増。純利益の伸びは前年同期比1,200%超とされています。会社は2026年上半期の売上高を1,100億〜1,200億元、純利益を500億〜570億元と見込んでおり、これは前年同期比で600%を超える成長率です。純利益率に換算すると、実に45〜48%という水準になります。

粗利率でみても、第1四半期は40.99%に達し、これはサムスン電子やマイクロン・テクノロジーを上回り、SKハイニックスに次ぐ水準だとされています。世界のDRAM市場におけるシェアは約7.7〜8%で、サムスン・SKハイニックス・マイクロンの3強(合計で9割超)には及ばず、依然として4位という位置づけです。しかし前四半期比の成長率は115.1%に達しており、これは上位3社を大きく上回るペースです。

上場そのものの規模も、中国本土市場では史上最大級でした。公開価格8.66元に対し、初値は49.50元。公開価格を約470%上回る水準で取引が始まりました。調達額は約579億元(約86億ドル)で、追加のオーバーアロットメントオプションがすべて行使されれば、最大666億元(約1.6兆円)に達するとされています。CXMTは、この資金を生産能力の2〜3倍への拡大と、量産ラインの高度化に充てる計画を示しています。


「安価な代替品」だったはずが、サムスンより高く売れている

ここまでは、成長の勢いを示す数字です。しかし、この会社の変化をより鮮明に物語るのは、価格そのものです。

これまでCXMTは、市場で「安価な代替品」として位置づけられてきました。サムスン電子、SKハイニックス、マイクロン・テクノロジーという3強が決める価格に、少しだけ安く追随する存在。ところが『ロイター』が2026年7月24日に報じたところによれば、サーバー向け64GB DDR5メモリモジュールについて、CXMTはサムスン製の同等品(1個あたり約1,240ドル)を上回る価格で販売するようになっています。米『Notebookcheck』によれば、CXMT製チップを搭載した64GB DDR5-5600 RDIMMの小売価格は、1万8,999元(約2,800ドル)に達しており、サムスンの参考価格を明確に上回っています。

さらに象徴的なのが、値下げ要求への対応です。米国の制裁下でも独自の技術開発を続けてきた中国の代表的な技術企業であり、国内サプライヤーに対して強い交渉力を持つとされるHuaweiが値下げを求めたにもかかわらず、CXMTはこれに応じなかったと報じられています。安さを武器にしてきたはずの企業が、最大級の顧客の値引き要求すら突っぱねる——この事実だけで、市場における力関係の変化が伝わってきます。

なぜ、こんなことが起きているのか。背景にあるのは、AI向け高帯域幅メモリ(HBM)への生産シフトが、汎用DRAMの供給全体を締め上げているという、業界構造そのものの変化です。メーカー各社が、単価の高いHBM向け供給を優先した結果、DDR5のような汎用メモリの需給が逼迫し、価格が高騰しています。CXMTもまた、この供給不足という追い風を受けて、強気の価格設定に転じたと考えられます。

ただし、ここで一つ、正直に留保しておくべき点があります。CXMT自身は、AIサーバーで実際に使われるHBM分野では、なおマイクロン・サムスン・SKハイニックスに遅れを取っているとされています。つまり、CXMTの強さは、AI向けの最先端メモリそのものというより、AIブームによって供給が逼迫した「汎用DRAM」という周辺領域で発揮されているというのが、より正確な理解です。

さて、ここまではDRAMの話でした。しかし、この記事で本当に見るべき脅威は、実はもう一つ別の場所にあります。


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有料エリアでは、以下を扱います。

  • キオクシアにとって、CXMTよりも直接的な脅威となっている、もう一つの中国企業

  • 関連する日本企業への具体的な波及

  • 見落とされてはいけない死角と、監視すべきチェックリスト


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