十九歳の地図⑤―アンブレイカブル・マン―
次週より数週間にわたって新聞奨学生のメインエピソード(=死んでもいい)を展開していくので、今週は閑話休題の「閑話」というか、
軽いタッチのものを、
…いや内容的には重いというか痛い、、、のだけれど、
新聞屋ならではの「発想」と「偶然」により生じた、「こんなこともあるのね」みたいなエピソードをお届けします。
なんのことだか分からないでしょうが、読み終えると「なるほど!」と思えるはずですよ^^
さて自分は呑み会などで積極的に武勇伝を話すタイプではありませんが、
ただ、怪我自慢みたいなことはしちゃいますね。
そのくらい怪我が多い。てっぺんからつま先まで、各部位で「なんらかの怪我」を負っています。
けれども、このときは、このとき「だけ」は・・・・・??
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現在の自分は大晦日といえば「必ず格闘技の生観戦」に出かけますが、新聞奨学生やっているころはそんな余裕はありませんでした。
元日の配達がしんどいからです。
元日の新聞は本紙ではなく、折り込まれるチラシや別紙が異常な量で1部が週刊誌以上の厚さになる。
ポストにおさまらないこともあるし、そもそも荷台にはすべてを載せられないし!
通常の1.5~2倍くらいの時間を要して配達、
それを終えてからやっと、同志たちと新年を祝うというか。
その年―元日配達を終えると、奨学生の先輩Aに「明日は休刊日だから富士山に日の出を見に行こう」と誘われました。
「元日=初」ではないので、あくまでも単なる「日の出拝み」。
免許を取ったばかりのAは車でどこかに行きたくてたまらなかったのでしょう、レンタカーを借りるから一緒に行こうよと。
ドライバー役のA、そして自分を含む後輩3人で元日深夜に出発、楽しいドライブが始まりました…。
目指すは、山梨県側の大石公園。
それはそれは、おしっこちびるほどの絶景でしたよ。

・・・って、行きの道中のことは記さないのかって?
そう、メインテーマは帰りの道中だから・・・というか、ここからのインパクトが強過ぎて、はっきりいって行きの道中のことは「まるで」覚えていない、だから記しようがないのでした。
結論から先に記してしまうと、凍結した道路で衝突事故を起こしてしまったのです。
緩やかな下りを運転しながらAが「まずいまずい、やばりやばい!」と大声を出したことをはっきりと覚えています。
ブレーキが利かない、そこへきて前方に、やはり同じようにうまく運転が出来なかったであろう軽自動車が停まっていてソコに突っ込んでしまったと。
助手席側から相手の車に突っ込んだ形で、サイドウィンドウはもちろんドアーも大破、したものだから、みんな、助手席に乗っていた自分が「死んだ」あるいは「大怪我を負った」と思ったらしい。
じつは自分も「あ、自分死んだ…?」と思いましたね。
しかし。
あれ。
あれ?
身体のあちこちを触ってみても、どこも痛くない。
ガラスの破片を頭からかぶったはずなのに、流血もしていない。
キ、セ、キ・・・?
時代がちがえば、2000年以降であればきっと「アンブレイカブルマン」と呼ばれていたことでしょう。
とりあえず、えがったえがった^^
みんなもほっと胸をなでおろし・・・いやもうAなんて、泣きそうな顔から満面の笑顔へと。まぁ事故っていることにちがいはないのだがね!!
しかし話はこれで終わったわけではありません、キレイすぎるオチがつくのです。
交通警察が到着し、それぞれに事故の詳細を聞き取っています。
動揺の激しいAの代わりにと思ったのか、同期のひとりはなかなかに喧嘩腰で「向こうがヘンなところに停めてたのが悪いんですよ!」と興奮気味に証言。
すごいな、自分はそんなことはいえないな…というのも、いろいろなことが初めてなので、
車壊れちゃったし、どうやって調布まで帰るのだろう?
とか、
保険のこととか分からんし、レンタカーの修理代どうするのだろう?
とか、
考えること多過ぎるし、
でも、とりあえず自分は死んでないからいいや、なので相手のこと悪くいう気は起きないよとか、頭のなかでぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐると。
すると交通警察のかたが、こんなことをいうのです。
「あらためて、向こうのひとと話してみますか」
Aが「はい?」と聞き返すと、
「ふつうは勧めないんですけどね、今回ばかりは」
「ばかりは…?」
「なんか、同業者みたいですよ」
えっ。
スリップして停車した読売新聞の専業さんの車に、朝日新聞の奨学生が運転する車が突っ込んだ―そういう事故だというのです。
地域はちがえど―コッチは調布地区、向こうは目黒地区だったかな―関係者全員が、ひぃひぃいいながら元日の新聞を配達し、
初日の出が拝めなかったからと、休刊日を利用して富士山ちかくまでやってきたというわけ。
新聞屋ならではの発想と偶然により生じた、なんか笑ってしまう交通事故。
まるで『マグノリア』冒頭のエピソードみたいだけれど、

こうなってくると、相手を責める気もなくなってしまうわな(^^;)(^^;)
実際に彼らと話し、握手をして、途中まで同じ電車に乗って帰路に着いた、、、そんな、ある年の1月2日の出来事でした。
(了)
