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殴られた彼は「怖かった。怖かったから〇〇〇」といった―殴り殴られのお話 その弐―

先週は「ひとに殴られた」お話、今週は、その逆「ひとを殴った」お話です。
と、その前に…。

先週の「有名人から打撃を受けた?」エピソードが好評だったので、それ系のお話をもう少し。

19歳のころ、千代の富士に腕相撲を挑んで瞬殺される💦
「手加減なしで、お願いします」といったら、(たぶん)本気を出してくれました。
さすがプロ、こうでなくっちゃね。
手加減するプロだって、そりゃあまぁ、いろいろ考えてのことでしょうけれど。。。

21歳のころ、帝京時代のヤワラちゃんに乱取りの相手をしてもらう。

自分も柔道の心得はあったわけですが、
性別も階級もちがうのに、ぐいぐいぐいぐい引っ張られ、脱臼寸前でした💦💦
これまた、容赦ないのが素晴らしい。

テーマからはだいぶ逸れますが・・・

20代のころのバイト先で、暇さえあれば筋トレしている同僚Aが居ました。
同世代、しかし自分のようにアレモコレモと興味を示すことはなく、ただひたすらに筋トレ、性欲さえも否定するフトドキモノ(^^;)で、たしかに見た目は完璧な逆三角形のアスリートボディを誇っていました。

職場のボスは、我々の20コほど上のドランカー。
ほぼ毎日呑みに出かけていたし、腹は膨れ、しかし腕はそれなりに太い。
そのボスがAに「腕相撲やろうか?」。

誰もがAの圧勝を予想していたのに、なんとボスに瞬殺される。
Aはショックを受け、トレーニングの量を倍にしたそうです。

それから半年後の再戦―。
結果は、やはり同じ。

Aが不憫でなりませんでしたが、日常の積み重ねで出来上がった筋肉のほうが実践・実戦的であり、筋トレで出来上がった筋肉は「必ずしも」実践・実戦に適すとはかぎらない、、、ということなのでしょう。

なるほど、大木を伐り雪道を走り抜けたロッキーと、薬を打ちマシンで鍛えていたドラゴのちがいか!(そうなのか?🙂)

プロの格闘家や喧嘩慣れしているひとは、相手の強さを見た目「だけでなく」身体に「軽く触れる」ことで予測する―そんな風にいわれていますが、そういえばボスは仕事帰りにAの背中を叩いて労わったりする素振りを見せており、そこで「まだまだだな」とか感じていたのかもしれません。
(山本“KID”徳郁がグローブタッチの際に相手の身体を触り、相手がそれを嫌がって手を払うことがありましたね=ジョー・ウォーレン戦)

…………………………………………

最初に断っておきますが、今回のエピソードのオチは、そーとーにくだらないです。
でも、これこそリアルなのだ!ということで・・・。

新聞奨学生のころのお話。

自分が所属する朝日新聞調布専売所は専業・学生ともに20~30代の男で占められており、男ばかりの部活動の延長線上―みたいなところがありました。
みんな汗臭く、作業場は煙草の煙が充満していて、話すことといえばエロ系ばかり…格好つける必要もなかったし、まぁ楽しい2年間を過ごせましたね。

専業さんに新井という仲良しの同世代が居て、コイツはべつに映画が好きってわけでもないのに、『コマンドー』だけは50回ちかく観ているというヘンなヤツ。
シュワ氏が好きというのともちがう、だって「『ターミネーター』は興味ない」っていうのだもの。

50回観ていれば内容や台詞だけでなく、テーマ曲も最初から最後まできちんと口ずさむことが出来る。

(ピンとこないかたは、こちらで確認どうぞ🔊)

新井は作業場でテーマ曲を口ずさみながら自分に近づいてきて、ファイティングポーズを取ります。
即座にそれに応える自分、ふたりは作業場を出てバイク置き場つまり屋外で取っ組み合いを始め、タックルを仕掛け、それを切り、やがてグラウンド(=寝技)の対決に展開していきます。

もちろんこれは、おふざけ。

バカでしょう屋外だよ?
敷地内とはいえ、すぐそばに高校や旧大映撮影所(現角川スタジオ)があって、通行人も多いというのに。
だから部活の延長線上と表現したわけですが、
しかし、おふざけとはいっても、ともに格闘技の「中途半端な」経験があって、だから「芯のないプライドのかけら?」みたいなものだけは有しており、負けたくないっていう気持ちもあるのです、ゆえに、そこそこ本気で力比べをしているようなところがありました。
もちろん、怪我を負わせない程度の加減はしているわけですが・・・。

こんなことを週1~2回の頻度で繰り返し、とりあえずの勝ち負けを決め、負けたほうが缶コーヒーを奢ると。
ネットがない時代の、じつに野蛮な、金のかからない娯楽。
しかし、この頻度がよくなかったのかもしれません。勘違いさせてしまったのかもしれません。

このおふざけをいつも、少し離れた場所で見ていた奨学生の宮崎くん。

たしかに。
たしかに、空気が読めないところはあったのですが・・・・・。

ある日、いつものようにおふざけを始めたふたり。
グラウンドの勝負で自分が下の体勢になったとき、この宮崎くんが近づいてきて、自分の頭部を蹴り始めたのです。

けっこうな威力で。

・・・・・へ?
と思いました。
あまりの威力に、新井も驚いて手を止めちゃった。

プロレスでいう加勢。
見よう見まねでやってみました、ということなのだと思います。
仲間に入りたがっていたっぽいし。

しかし。
いかんせん加減を知らない。

白けた新井は自分から離れ立ち上がりました。
けれどもまだ、宮崎くんは蹴りを止めない。
笑いながら蹴っている、あぁほんとうに、これでいいんだな、おふざけに参加出来ているんだなと思い込んでしまっている。

上半身だけ起こした自分は、「やめろって」。
背中を蹴る宮崎くん。

「やめろ」
「(蹴る)」
「だから、やめろって!」
「(やっと、足が止まる)」
「(一息つき、立ち上がる)」
「(笑顔)きょうは、もう終わり?」

・・・・・ダメだコイツ。

腹が立った自分は、「加減しろや、こっちは遊びでやってんだから!」と怒鳴りながら宮崎くんの腹を思いっ切り殴りました。

衝撃と、驚きもあったのでしょう、尻もちをつく宮崎くん。

自分は歩道へと進み、そこを突っ切り、ガードレールに腰掛け、気を落ち着かせようと煙草に火をつけました。

手が震えています。
だって生まれてはじめて、ひとに暴力を振るったから。

尻もちをついたままの宮崎くん、しばらくして立ち上がり、無言のままカブに乗って自宅アパートへと戻ります。

煙草を吸いつづける自分。
新井もガードレールまでやってきて、同じように煙草に火をつけましたが、気を使ってか、自分とは少し距離を取っています。

あぁ手の震えが止まらない。
いわゆる、暴力の快楽(=『わらの犬』)というものは訪れず、かといって良心が疼くこともないし、後悔もありませんでした。
だからこの手の震えは、単に「初めてやったこと」に対する興奮から生じたものなのでしょう。

5分・・・いや10分くらい経ったのか。
宮崎くんが、カブに乗って再登場。
自分に近づいてくるなり、こういったのです。

「生まれて初めて殴られたよ。怖かった。すごく怖かった。怖かった…から、うんち漏らしちゃった」

・・・・・・・・・・え??

「だから、パンツ取り替えてきた」

・・・・・・・・・・。

いや、まぁ、あぁ、そうですか。としか。

いうかね、しかし。
そこは恥ずかしがっていいのではないか。
「痛かった、怖かった」だけでいいし、いや、べつに戻ってこなくてもよかったし。
うんち漏らしてパンツ取り替えたことを、報告するためだけに戻ってきたわけでしょう?
現に、すぐに君はまたカブに乗って去っていったじゃん。

初めてひとを殴った奇妙な感覚も、この💩発言でどこかに飛んでいってしまったよ!

以上、とってもくだらないオチのエピソードでした。

(了)

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