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「イノベーションの地」高輪ゲートウェイシティで萌芽した、マクニカの未来のタネ【MET2026開催レポ】

2026年2月4日、高輪ゲートウェイシティのコンベンションセンターにて、「Macnica Exponential Technology 2026(以下、MET2026)」が開催されました。

2025年3月に一部施設が先行開業した高輪ゲートウェイシティは、「100年先の心豊かなくらしのための実験場」として常にアップデートを続けています。

そんなイノベーションの最前線で示された、マクニカの最新技術活用事例や社会課題解決への展望は、イベント終了後の現在においても、非常に重要なインサイトを含んでいます。

本レポートでは、当時のイベントの様子を改めて振り返りつつ、一部内容をご紹介します。

MET(Macnica Exponential Technology)とは
最先端テクノロジーの社会実装を加速させることを目的とした、マクニカ主催の年次テクノロジーカンファレンスです。AI・ロボティクス・サイバーセキュリティといった広範な領域において、マクニカが提唱する最新のポートフォリオと、パートナー企業との共創により、新たな価値を生み出す場となっています。


開放感ある会場に、約800人が来場


高輪ゲートウェイシティのコンベンションセンターは非常に開放感のある場所で、当日はなんと約800人が訪れました。まずは、主要エリアの様子を振ご紹介します。

高輪ゲートウェイシティ・コンベンションセンターへの入口
入口付近。右手のエスカレーターを降りていくと、コンベンションセンターに入れます。
MET2026のテーマやメッセージを記載したパネル
受付や展示エリアなどがあるB2には、MET2026のキャッチコピーや、
マクニカの強い信念を表すメッセージが書かれた巨大なパネルが設置されていました。
開場前の展示エリアの様子
開場前の展示エリア。広々とした空間が特徴で、
基本的に部屋の周囲や中央に展示ブースが展開されていました。
開場後の展示エリアの様子(その1)
開場後の展示エリアの様子(その2)
開場後の展示エリア。つねに多くのかたがブースを訪れ、大盛況の様子がうかがえました。
会場に設置したFuture Vision Map
展示エリアの中央に設置されていた巨大な「Future Vision Map」には、
マクニカが手がける事業が花やタネで表現されていました。

また、当日は「来場者のアイデアや課題を、絵師がイラスト化してマップに描き加えていく」
という企画も。その様子は、まさに会場全体で未来を共創しているかのようでした。
Future Vision Mapの拡大図
「Future Vision Map」を拡大したところ。「どこでもドアほしい」といった夢のような内容から、「子どもを見守る仕組みがほしい」といった現実的なものなど、
さまざまな書き込みが見受けられました。
エントランスの様子
エントランスにもさまざまな展示物が置かれていたほか、
セッション会場への入口もあり、こちらも大きな賑わいを見せていました。
セミナールームで開催されたワークショップの様子
B1のセミナールームでは、生成AIでアプリ開発体験ができるワークショップに参加したり、
サイバーセキュリティ、フィジカルAI×ロボティクスの講義を受講できたりしました。

写真はAIワークショップの様子で、初対面のかた同士でチームを組んで協力し合っていました。
走行中の自動運転EVバス「NavyaEVO3」
屋外の広場では、自動運転EVバス「NavyaEVO3」への乗車ができました。

この日は車体が横浜FCとのコラボ仕様になっていたほか、乗車中に横浜FCにまつわる
特別な動画を観つつ、スタジアムへ向かうというストーリーを体験できました。
「NavyaEVO3」の社内

知性と哲学が交錯した数々のセッション


会場の一角に設けられたセッションステージでは、マクニカが掲げる「テクノロジーの社会実装」という命題に対し、国内外の第一線で活躍する識者たちが、それぞれの視点から深く切り込みました。ここでは、その一部を抜粋してご紹介します。

オープニングセッション

開場からほどなくして、マクニカの代表取締役社長を務める原 一将がオープニングセッションに登壇しました。

オープニングセッションをする、マクニカの代表取締役社長・原 一将

原は創業以来54年にのぼるマクニカの歩みを振り返りつつ、「いかに高度な技術であっても、それ単体では完成ではなく、社会に実装されて人々の役に立って初めて真の価値が生まれる」という強い信念を強調。

また、「Future Vision Map」の意義にも触れ、「妄想が現実に変わるために必要なのは、皆様がもつ課題や発想の融合であり、それが大きな世界を変える価値になる」と説明しました。

さらに続けて「マクニカが作り出したい未来は、マクニカだけでは作れない未来。これが今回の“すべてのテクノロジーは未完成だ”というメッセージの裏に込められた、皆様へのラブコールです」「ぜひ時代の向かう先を感じていただいて、その驚きを体感いただければ幸いでございます」と述べ、あいさつを締めくくりました。

人間アバターは、人間社会を変えるか?~「いのちの未来」につながる物語

続くセッションには、大阪大学栄誉教授・ロボット学者の石黒 浩氏、Forbes Japan Web編集長の谷本 有香氏、マクニカ原の3名が登壇。

大阪大学栄誉教授・ロボット学者の石黒 浩氏
石黒 浩氏。「人間とは何か」という根源的な問いで、来場者を深い思索へと誘いました。
Forbes Japan Web編集長の谷本 有香氏
司会進行を務めた、谷本 有香氏。

石黒氏は大阪・関西万博のシグネチャーパビリオン「いのちの未来」のプロデューサーとしての知見を交え、アバター技術がもたらす「身体の解放」という未来像を提示。「テクノロジーは単なる便利な道具ではなく、心や身体を補完・拡張する“人間の一部”として捉える」ことについて言及しました。

石黒氏が考える大阪・関西万博の意義の図

また、アバターやロボットを介して、人が複数の身体を自在に使い分け、肉体的な限界や場所の制約から解き放たれて活動する社会のビジョンについても解説。「テクノロジーがいかに人間の可能性を広げ、存在そのものを定義し直していくか」という深遠な問いを投げかけました。

本セッションはマクニカが追求する社会実装の先に待つ、新たな人間の在り方や社会参画の形を強く予感させる、非常に刺激的な内容となりました。

原の分身「RAHA」と、石黒氏そっくりに作られたアンドロイド「ジェミノイド」の対話
「Mirrored body」によって誕生した原の分身「RAHA」と、石黒氏そっくりに作られた
アンドロイド「ジェミノイド」が対話するシーンも観られました。

テクノロジーがイノベーションに変わるまで~世界を変えるテクノロジーはいかにして生まれたか

MET2026最後のセッションには、カーネギーメロン大学 創始者記念全学教授の金出 武雄教授、早稲田大学ビジネススクール 教授 入山 章栄氏、マクニカ原の3名が登壇。

カーネギーメロン大学 創始者記念全学教授・金出 武雄教授
金出 武雄教授。自身のこれまでの研究や取り組みについてどこか懐かしむようにお話され、
そのユーモラスな内容は会場を歓声や笑いに包みました。
早稲田大学ビジネススクール 教授・入山 章栄氏
入山 章栄氏。METへの登壇は、MET2026で6回目とのことです。

金出氏は本セッションで、自身の哲学である「素人発想、玄人実行」の重要性を説きました。これは「固定観念にとらわれない自由な発想を、卓越した技術と経験によって形にするという姿勢」を指します。

「特にAI時代においては、答えを出すこと以上に“何を解くべきか”という問いを立てる力こそが人間の役割であり、AIはその創造性を引き出すための最良のパートナーになる」と金出氏は語りました。

また、最先端の理論をいかに泥臭く現場へと実装していくかという視点は、技術の社会実装を掲げるマクニカの姿勢と、深く共鳴します。知性を実社会の価値へと繋げるための具体的な指針は、会場に集まった多くのエンジニアやビジネスリーダーに、未来を切り拓くための大きな示唆を与えました。

金出氏の結論が記されたスライド

12カテゴリ73種類の豊富な展示物

マクニカの掲げる「思想」を、具体的な「実装」へと繋げる場。そのきっかけとなるのが、会場を埋め尽くした展示エリアです。

広大な空間には計12カテゴリ、73種類もの展示コーナーが設けられ、マクニカが世界中から見出し、パートナーと共に育ててきたテクノロジーの「タネ」が所狭しと並んでいました 。

ここでは、そのうち3つをピックアップしてご紹介します。

①環境制御型農業:生成AIとエッジAIが拓く「次世代の植物工場」

環境制御型農業の展示ブース

深刻な農業従事者の不足と、熟練者の技術継承という課題に対し、マクニカが提示しているのが、生成AIエージェントを活用した「環境制御型農業」のソリューションです。

この展示の核心は、植物工場内の温度・湿度・CO2濃度といった膨大なセンシングデータを、エッジAIでリアルタイムに処理し、生成AIが「熟練栽培者の脳」となって最適な管理指示を出す点にあります。

従来の植物工場では、環境調整に高度な経験値が必要とされる「属人化」が障壁となっていました。

しかし、AIが栽培環境を自律的に最適化することで、誰でも高品質な生産が可能になるのです。また、エッジ側でデータを処理するため、通信遅延のない高精度な制御が実現します。

単なる自動化を超え、AIが生産現場の知恵を学習・継承し続けるという、持続可能な農業の新たなモデルとして、多くの来場者の関心を集めていました。

植物工場の月次会議のデモを記したスライド
収集されたデータは専門分野ごとにカテゴリ分けされたAIエージェントが分析し、
栽培管理者は、それらのエージェントから得た情報をもとに植物工場を運営します。
植物工場で栽培されたレタス
実際に栽培されたレタス。スタートから収穫までの周期が30日と極めて早く、
植物工場と相性がよいのだとか。

②デジタルマップサービス:地域と情報を繋ぎ、都市の未来を視覚化

デジタルマップサービスの説明が書かれたパネル

Smart Mobilityのコーナーでは、地域に根ざしたデジタルインフラとしての「デジタルマップサービス」が紹介されていました。

これは単なるナビゲーションツールではなく、街のOSとして機能するプラットフォームです。高精度な地図データの上に、人流、交通、インフラの状態といった動的な情報を重ね合わせることで、地域課題や観光情報などを、リアルタイムに可視化することができます。

今回の展示では、船舶の運行データや地域の防災情報など、多様なデータをデジタルマップ上で統合・利活用するデモンストレーションを実施。この技術があることで、自治体や企業は効率的な都市設計やサービスの最適化が可能になります。

「技術を地図という共通言語でつなぐ」ことで、市民の利便性を高め、地域の活力を創出していく。そんなマクニカが描くスマートシティの解像度を一段階引き上げる、実践的な展示内容となっていました。

ちなみに、このデジタルマップは一部地域ですでに運用されています。実物をご覧になりたいかたは、こちらのリンク(尾道のデジタルマップ)からどうぞ。

デジタルマップ表示情報のサンプル
リアルタイムに情報を確認できるのが強みです。画像だけでなく動画(YouTubeと連動)も
添付できるので、観光地であれば「こんな景色を観られます」というPRにも。
デジタルマップで地元のオススメスポットを紹介しているところ
地元のオススメスポットを紹介しているところ。

③においセンシング:見えない感覚を数値化し、新たな価値を創出

においセンシングの説明が書かれたポスター

人間の五感の中で最もデジタル化が難しいとされる「におい」を可視化する「においセンシング」の展示は、技術の新たなフロンティアを感じさせるものでした。

そのコアとなるのは高度な嗅覚センサーとAI解析の合体技で、特定のにおい成分を分子レベルで識別し、「目に見えない香りの特徴を瞬時にデータへと変換できる」そうです。

その活用シーンは、たとえば食品の品質管理や工場の異常検知といった産業用途はもちろん、空間の香りをデザインするブランディング、バイタルデータと組み合わせたヘルスケア領域など、驚くほど多岐にわたります。

曖昧だった「感覚」が共通言語である「データ」へと変わることで、これまで経験と勘に頼っていた現場に劇的なイノベーションをもたらされることは間違いないでしょう。

なお、会場では実際にセンサーがにおいを識別するデモ体験のほか、データから生成された香りを実際に嗅ぐこともできました(たとえば「マリリン・モンローの香り」と言われたら、一体どんな感じか気になりませんか?)。

「世の中のあらゆるモノを香りに」という強烈なキャッチフレーズを掲げた、この技術の今後の展開が楽しみです。

におい再現ディフューザー「Hearom」と、センシングデバイス「Obre」を紹介するパネル
ディフューザーに連動させたスマートフォンで選べるにおい
専用のディフューザーを使えば、「やる気が出る」「落ち着き」など、気分に合わせた香りを
ボタンひとつで即座に出すこともできます。展示員によれば、あるメーカーから
「ぜひ車の中にこれを搭載できないか」という問い合わせもきているのだとか。

「未完成」を価値へと変える、共創の旅の始まり

「すべてのテクノロジーは未完成だ。」という、技術のあり方を深く問い直すようなメッセージと共に幕を開けたMET2026。

会場を埋め尽くした約800人の熱気と、来場者のアイデアが次々に描き加えられていく「Future Vision Map」の光景は、NET2026のテーマが未来への前向きな期待として受け入れられていることを雄弁に物語っていました。

かつて日本初の鉄道が開通し、未知の技術が人々の日常を劇的に変えた高輪の地。150年の時を経て、この場所で芽吹いた「妄想」や「対話」は、やがて世界を動かす驚き(Grow Wonder)へと結実していくはずです。

そして、未完成な技術を共に完成へと導く「共創」の旅は、これからが本番となります。

それでは、次回のMETでまたお会いしましょう!