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ザンギエフと戦った件

離婚届を提出してからの私は、まるで新しい顔をもらったアンパンマンだった。

それまでの私は、元夫という名のばいきんまんに、顔(=人生)を濡らされ、カビだらけになって力が出なかった。 「顔が汚れて力が出ない!」 そう言ったところで、ジャムおじさんが新しい顔を焼いてくれるわけじゃない。自分で焼くしかない。 私は、離婚した喜びと、女友達との飲み会で得たパワーを小麦粉とイースト菌に例えて、自分の人生という名のパンを捏ね、人生という名の窯で焼き上げた。 そして、ようやく完成した新しい顔は、ピカピカに輝いていた。 「元気百倍!新しい私!」 そんな気分で、女友達と飲んだ帰り道、気分は最高潮だった。

「ねぇ、次、どこの店行く?」 「この前できた、あの立ち飲み屋、行ってみようよ!」 「いいね!」

酒を飲み、笑い、離婚話を肴に盛り上がる。 私たちは、人生の荒波を乗り越えてきた、まるで『新世紀エヴァンゲリオン』で互いのATフィールドを中和し合った使徒とパイロットだった。 居酒屋で、互いに心の壁(ATフィールド)を消し、ありのままの自分を見せ合う。 いるのは、私と同じく人生の荒波に揉まれた女友達だけ。 でも、彼女たちといると、どんな使徒だって怖くない。

私たちは、碇ゲンドウが求めていた「シンクロ率100%」を、酒の力で無理やり達成していた。 『あなたは死なないわ、私が守るもの』って、お互いがお互いを守り合う綾波レイになってた。いや、もう一人じゃない!って叫び合いながら、グラスをカチンとぶつけ合っていた。 そう、私たちは互いに励まし合い、心のシンクロ率を高めていた。

最高の気分で、終電を逃してしまった私たちは、タクシーで帰ることにした。 夜の静かな住宅街。 酔いも手伝って、私たちは「あはははは!」と大声で笑いながら歩いていた。 すると、どこからともなく、ゴソゴソと音がした。

「ん?」

静かな公園のベンチの陰から、黒いコートを着た男が、ぬるりと立ち上がった。 そして、そのコートを、バッと広げた。

「!」

そこに広がる、世にも恐ろしい光景。 私と友達は、一瞬で酔いが醒めた。 「え…」 いや、いや、待て。

満面な笑顔

禿で中年太りなシルエット

ズボンがない・・・

パンツもない・・・

下半身もろだし・・・

恐ろしいことに近づいてきた・・

この男、 まるで、『ストリートファイター』シリーズの「ザンギエフ」だ。 いや、ザンギエフは鍛え抜かれた筋肉で、もっと強そうなんだけど。

もろだしザンギエフは、なんだか自信満々で**、**「どうだ、俺の…」みたいな顔をしている。 ザンギエフは、戦うときにそんな顔しないだろ! もっとこう、豪快に、プロレスの技で戦う感じだろ! お前、ただの変態だろ! 私の心のATフィールドは、すでに全開。

その瞬間、私の心の中で鳴り響いたのは、今までのクズ男への怒りだった。

この怒りを、新たな力に変えることに決めた。まるで、フリーザに怒りを爆発させた悟空のように。

「オレはおこったぞー‼‼フリーザーッ‼‼」

私は、まず足からいった。

ローキック!

ドンッ、と鈍い音がして、男は呻いた。 そして、私は、持っていた、ちょっと重めのカバンを奪い取った。

そして、そのカバンを、思いっきり男の顔面に叩きつけた。

カバンフック!

これぞ、私なりの必殺技だ。 男は「ぐふっ」と情けない声を上げてよろめいた。 私は、さらに勢いを増して、何度もカバンを叩きつけ、ケツを蹴り上げといた。

私は、ただのヤケソクだ。 「誰が、カビだらけの顔(人生)に戻るか!」 「私はもう、お前みたいなやつに、顔を汚されないんだ!」 私は、心の中で叫びながら、カバンを叩きつけた。 友達は、その様子を、呆然と見ていた。 もろだしザンギエフは、鼻血を出し、コートを抱え、逃げていった。

夜道の帰り私は、自分のしたことを思い出し、少しだけ反省した。 いや、でも、いいんだ。

私には、新しい顔がある。

全身の荷物が、全部落ちたみたいに、ものすごくすっきりした。

もう、ばいきんまんには負けない。

夜眠る前にふと思い出した。

うまなみだったわ

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