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「革命家の成分」/ 短篇小説(冷笑実験文学)#075

   実験室には、革命家が一人いた。                筋肉質で、髪と髭が生え放題だった。            総じて、年齢不詳だった。
  白い壁。
  白い床。
  白い椅子。
その革命家は、椅子に縛られていた。
「私は革命家だ !! 」実験室に大声が響いた。
研究員たちは、記録用紙から顔を上げなかった。
「はいはいっ」
「私は、この国を変える !!! 」
「そうですか … 」
「歴史を動かすんだ !!!! 」
「それは、大変ですね … 」
革命家は、悔しそうに眉をひそめた。
  若い研究員が採血管を一本、机に置く。
「では、成分を調べます。」「ウィーン … 」
モニターに数字が並んだ。
  怒り 18.7%
  正義感 14.2%
  孤独 13.6%
  自己顕示欲 11.9%
  恐怖 10.4%
  嫉妬 8.8%
  希望 7.1%
  空腹 5.3%
若い研究員は電卓を叩いた。
「合計、90.0%」
「それじゃあ、残りの10%は何だ?」          主任研究員は、冷静に尋ねた。
革命家が身を乗り出す。
若い研究員は少し考えた。
「まだ測ってません。」
「それが革命の核心かもしれない。」
「う〜ん、たぶん違うと思います。」
革命家は、その会話を聞いて、怒鳴り散らした。
「私は命を懸けているんだぞ !! 」
「はい … 」
「同じ意思を持った、仲間もいる !!! 」
「はい、はい … 」
「民衆たちも、必ず私を待っている。」
「それはそれは、便利ですねぇ … 」
  革命家は、紐を引きちぎり、椅子から立ち上がった。元々、縛り付けた紐は、その様な仕様だった。
  椅子を蹴飛ばし、監視カメラを壊し、鉄格子をへし折った。
  研究員たちは、時計を見る。
「11分42秒」
「何がだ !! 」革命家が、活きった。
「いつもこの辺りで、革命家は逃げます。」
「私を何だと思っている !!! 」
「別に … 単なる、統計ですよ。」
  革命家は廊下へ飛び出した。
そこには大勢の人間がいた。
「革命だ !!! 」
革命家が叫ぶ。
群衆も叫んだ。
「そうだー、革命だ !!!! 」
革命家は、うれし涙を流した。
研究員たちは、その様子を、遠くから双眼鏡で眺めていた。
「感動していますね。」
助手が尋ねる。
「成功ですか?」
「まあ … 」若い研究員が、小さく答えた。
「革命が?」
「いや、実験が」
若い研究員は、記録用紙に丸をつけた。
  革命家の自己評価――97.3%
「随分と高いですね。」
「本人が自分を好きなんでしょう。」
「革命家なのに ? 」
「革命家だからでしょう。」
二人は少し笑った。
  そのとき、モニターに新しい数字が表示された。
  怒り 18.7%
  正義感 14.2%
  孤独 13.6%
  自己顕示欲 11.9%
  恐怖 10.4%
  嫉妬 8.8%
  希望 7.1%
  空腹 5.3%
そして、
  読者への期待 10.0%
  助手が首をかしげた。
「これ、誰の成分ですか?」
若い研究員は画面を見た。
「さあ … 」
「じゃあ、消しますか?」
「いや」
若い研究員は笑った。
「この10%があるから、彼は革命家に見えるんです。」
  ガラスの向こうで、革命家と群衆が、拳を突き上げている。
  主任研究員は、小さなあくびをした。
「まあ、本人には言わないでください。」
「なぜです?」
「かわいそうだから。」
少し間を置いて、
「 … あと、実験が終わっちゃうから。」        若い研究員と助手は、再び笑った。
                                                                                    記録用紙の最後に、若い研究員はこう書いた。
「革命家の成分 ― 本人より、見ている側のほうが多い。」

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