創価学会は朝鮮カルトではない
ネトウヨの間では長年公明党・創価学会のことを「自民党に寄生する反日思想の朝鮮カルト教団」などと呼ぶ風潮が当たり前だった。彼らの主戦場である匿名発言空間はもちろん、右翼色のない人も含めたネット原住民たちの動画文化の中心地のニコニコ動画などでもそれは一般論としてまかり通っていた。
だが本当にそうなのだろうか。筆者は創価学会の信者でもシンパでもないが、創価学会側の発信も、批判者の文献も含めて調べた結果、まったくのデタラメであることがわかった。在日コリアンが権力を牛耳っているとされる「在日特権」と同じくらいメジャーなデマの割に、それを打ち消す対抗言論がほぼないようなので、私がここで記す。
創価学会は朝鮮半島発祥ではなく日本発祥
創価学会は朝鮮半島に由来する宗教なのだろうか。違う。日本で誕生している。
創価学会は1930年に日本国・東京で「創価教育学会」の名で誕生した団体だ。初代会長は牧口常三郎氏で、白金尋常小学校(現在の港区立白金小学校)などの校長を歴任した教育者である。二代目会長の戸田城聖氏も教員である。教団側はこの二人を創設者としている。ちなみにいずれも日本人だ。
学会と名乗るだけあってもともとは教育団体だった。2人はともに日蓮正宗の信徒で、その思想を用いた教育改革のための研究団体として始まったのが創価学会の起こりである。それが戦後に「折伏」と呼ばれる信者獲得キャンペーンを通じ、日本最大の宗教団体に発展して今に至る。
たったこれだけで説明が終わってしまうことを、ネトウヨはずっと「朝鮮のカルト宗教である」と嘘をついていたのであるのだから罪深いものである
これは創価学会側が勝手にアナウンスしていることではなく、批判的な考察者の文献、たとえば『創価学会を斬る』(藤原弘達著・日新報道)などを見ても、朝鮮発祥という記述はない。もしそれが事実ならいの一番に批判者が飛びつくはずだ。ネットにしか指摘がないということは、完全にネトウヨ・オリジナルのデマなのだ。
韓国にも支部はあるが、世界組織の1つ
韓国の影響を受けている、韓国に肩入れしているから朝鮮カルトなのだという指摘もある。
だがこれも偏った見方だ。確かに創価学会は韓国にも支部があるが、拡大に伴い進出した1つにすぎない。なお海外組織は「SGI」という団体であって「創価学会」がそのまま外に出ることはない。
SGIは1960年にアメリカ大陸で誕生。以来世界各国に進出し、いまでは192ヶ国地域に広がっている。池田大作名誉会長が初めて韓国を訪問したのは1990年と遅い。正式に韓国SGIが現地で法人登録されたのは金大中政権下の2000年のことである。80年代には100か国を越えていたというから、韓国展開は後発だ。
在日コリアンの信者拡大は60年代から。でもそれは他宗教も同じ
ただ、実際には1960年代から在日韓国人の信者がおり、帰国によって韓国に伝わっていたという指摘もある。知恵のあるネトウヨはおそらくここに食いついている。ただ戦前の記憶が色濃い当時の韓国政府は日本の精神的侵略の「倭色宗教団体」として1964年に布教禁止処分を下している。
つまり韓国とつながった宗教どころか、韓国政府が「日本的である」として警戒し排除される側だったのだ。この事実をもっても、やはりネトウヨの指摘は嘘なのだ。ちなみに立正佼成会も韓国展開しているし、天理教に至っては明治時代から朝鮮半島に進出している。隣国だからてっとり早い展開先になるのは当たり前のことだ。
創価学会に在日コリアンの信者が増えた理由は「弱者の拠り所としてメジャーだったから」にほかならないだろう。戦後昭和において在日外国人で最も多いのはコリア系だった。韓国はただ近いだけでなく旧植民地でもあり、戦前から日本出身者と比べた貧困問題があったし、第二次大戦後は朝鮮戦争による分断国家になったため、苦しい境遇で生きるために日本にとどまる人や、命からがら半島から逃げてきた人が大勢いた。
戦後の創価学会が急拡大をしたのは、高度成長期の右肩上がりの恩恵に取り残された人たちに特化した効果的な折伏を行い、彼らの拠り所として機能したからだ。特に大都市の工業地帯では、身寄りのない貧しい出稼ぎ労働者が、拠り所や互助集団の機能を求めて入信した。そうした貧困な労働者層には、戦前には植民地出身者が多く、戦後も在日の人たちが大勢いる。
池田大作名誉会長も日本人
ネトウヨの間では「教祖・池田大作は朝鮮人である」と言う指摘がある。しかしこれも間違いだ。そもそもベースが日蓮正宗の信徒が立ち上げたグループ(つまり「講」と同じ)だから、教祖は日蓮である。組織としての創設者も牧口・戸田氏であって池田氏が始まりではない。
池田大作氏は戦後に入信し、青年部の若手リーダーとして高度成長期の組織拡大に尽力し、後に会長、名誉会長を歴任した。長らく教団のトップではあったが、「教祖」ではないのである。
しかも池田氏は日本で生まれ育った日本国籍の日本人である。出身は東京・大森で、代々海苔屋を営む家の生まれだ。朝鮮半島出身者ではない。また池田氏と同世代の古株の在日コリアンや日本語教育世代だった韓国人は朝鮮語を母語とするがゆえの特有の「訛り」があるが、池田氏の喋りにはそのようなものはない。
これはいわゆる「在日認定」である。ネトウヨの中では、気に食わない有名人は在日朝鮮人だと勝手に決めつける言説が多い。小沢一郎氏や福島瑞穂氏らも勝手にそのように認定されているが、ネトウヨ以外には誰も信じないよ多話でしかない。
創価学会はカルトなのか
そして創価学会はそもそもカルト教団なのかという疑問が存在する。はっきり指摘しておくが、筆者は親族や知り合いに信者が一人もいないし、強引な勧誘などの嫌がらせを受けたこともない。そのようなニュートラルな立場から指摘するとこうだ。
まず現時点で、カルトによくみられる特徴はない。組織的なマインドコントロールもしないし、オウム真理教のサティアンのようなコミュニティを作り、社会の主流から隔離されて共同生活を送るような特徴もない。反社会的なテロリズムを企てていることも、当然ない。
筆者の実家では一度、親の仕事のお客さんの創価学会員の方からノルマのために聖教新聞を購読してほしいと頼まれたことがある。かなり低姿勢でお題は要りませんと言われ、指定された契約期間が終わるとぱったりと投函されなくなった。その間勧誘を受けたことは一度もないし、10年以上音沙汰がないので個人情報も抜かれていないだろう。海老名のエホバの証人の勧誘の方がよほど多く家に来る。
「フランスがカルト認定した」くらいしか根拠がない
ちなみにネトウヨがよくいうのが「フランス政府が創価学会をカルト認定しているからカルト教団なのだ」という主張だ。だがネトウヨの言葉を借りれば「ここは日本」である。東洋の日本と、ヨーロッパのフランスでは宗教の認識は異なるし、他国由来の新興宗教を実害はなくても警戒する発想は日本人にもあるだろう。
ネトウヨにしては珍しくフランス政府がカルトをリストアップしたのは事実のようだ。フランス国民議会のセクト調査委員会が1995年に作成した報告書(通称:ギュイヤール報告書)の中にはSGIフランスが含まれていた。公明党の議員も指摘しているが、定義があいまいでしかもSGIは2006年にはリストから外されている。
そもそもこのリスト自体、「信者の証言に偏りすぎている」「客観的な調査が不足している」といった批判が国内外の専門家や法曹界から相次ぎ2005年の首相通達によって政府の公的なリストではなくなっているものだ。なお、リストには日本の複数の新興宗教も掲載され、欧米なども含めカルトとは言えないただの宗教団体も盛り込まれていた。
ちなみにフランスは「ライシテ」に基づき、公的領域と宗教を徹底分離する国柄だ。仮にこれを日本にそのまま持ち込めば、ネトウヨが大好きな政治家の靖国参拝もできなくなるし、日本会議や神社本庁といった右派系新興宗教の政党・政治家への支援も困難だ。
昔は過激だったからカルトというのも無理筋
ちなみに創価学会の批判者の中には「折伏」の時代に強引な勧誘をしていたから、危険なカルトなのだという人がいる。
ニコニコ動画とかでよく引用された当時のニュース映画では、トラヴィンスキーの「春の祭典」のBGMもあいまって強引な勧誘風景を仰々しく感じるものだった。中学2年生の時にこの動画をYoutubeで初めて見た私はたしかにびっくりした記憶がある。
しかしこれ、1957年の出来事である。私の親も生まれる前の大昔だ。
その頃の日本は、いわゆる安保闘争の学生運動が盛んだったころだ。共産党が「六全協」で武装闘争路線を放棄し、共産党の中央と学生組織(のちの新左翼)の対立が最高潮に達していたタイミングでもある。
当時の日本人はみな、アツかったのだ。今となっては穏当なリベラル政党にいるような人たちも若い当時は過激なデモをやっていた。また自民党政権(岸信介首相周辺)も、アイゼンハワー大統領来日に抗議するデモ隊を抑え込むために、反社を動員しようとしていたと言われている。来日自体が中止となって実現しなかったが。
学生時代にネトウヨが「創価学会は国家転覆のクーデターを目論むテロ組織だった!」と主張しながら論拠として当時ベストセラーだった『黒い手帳』(矢野絢也著・講談社)をやたらとプッシュしていたことがあった。私も買って読んだが、ある一説に「冗談半分」の酒飲み話のようなエピソードが書いてあるだけだった。
それが日本人がみなエネルギッシュだった高度成長期なのである。いまではのんびりお爺さんがチラシ配りや演説をしている共産党も、田舎のお爺さんの集まりの自民党も、お婆さんが「婦人部」で盛り上がる創価学会も、昔はみんなギラついていたのだ。
自民党に寄生する反日思想の朝鮮カルトって…
ところでここまで振り返ると、あることに気づく。ネトウヨが創価学会の特徴としてよくいうような、自民党政権にべったりで、なおかつ日本国に敵対的な反日思想を持つ朝鮮半島由来のカルト教団といえば、私には別の団体が思い浮かぶ。
心なしかその教団につながりが深いとされる政治家ほど、ネトウヨは「神議員」として崇め、教団系の新聞や出版物・イベントに出てくる論客はネトウヨとほぼ同じことを主張している。あえて名前は上げない。
創価学会朝鮮カルト説はそんな「目くらまし」に利用されているだけではないかと、私は思うのだが、みなさんはどうだろうか?
