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第六章 問いを持つ者たち

「その仮説は面白いですね。」

そう言ったのは、宗教学者の朝倉教授だった。

大学の共同研究室には、専門分野の違う研究者が集められていた。

脳科学。

考古学。

心理学。

宗教学。

AI工学。

私は机の上に資料を並べる。

「今日は結論を出すためではありません。」

そう前置きして、私はスクリーンに四つの言葉を映した。

光。

安心。

境界。

選択。

「世界各地の臨死体験から、文化的な要素を除いていくと、この四つが高い頻度で残ります。」

部屋は静かだった。

最初に口を開いたのは、心理学者だった。

「死を前にした脳の防衛反応では?」

私はうなずく。

「十分考えられます。」

次にAI研究者が話し始めた。

「大量データの解析では、この四つの一致は統計的に偶然とは言い切れません。」

考古学者が腕を組む。

「ただし、昔の記録は信頼性にばらつきがあります。」

「その通りです。」

私は答えた。

「だから古代の資料だけを根拠にはできません。」

すると宗教学者が静かに笑った。

「皆さん、面白いですね。」

全員が顔を上げる。

「科学者は脳から考える。」

「宗教学者は物語から考える。」

「考古学者は遺物から考える。」

「AI研究者はデータから考える。」

教授は少し間を置いた。

「でも、見ようとしているものは、皆同じです。」

その言葉に、誰もすぐには返事ができなかった。

違う道を歩いてきた研究者たちが、同じ山を登ろうとしている。

そんな気がした。

会議が終わり、私は一人で資料を片付けていた。

机の上には、付箋だらけのノートが残っている。

その一枚に、ふと目が止まった。

そこには数日前、自分で書いた言葉があった。

『人間は、生まれる前から何かを知っているのだろうか。』

私はペンを手に取り、その下へ新しい一文を書き加えた。

『それとも、人間は何千年も同じ問いを問い続けているだけなのだろうか。』

窓の外では、夕焼けが街を赤く染めていた。

その光を見ながら、私は思う。

人類は火を手に入れた。

文字を生み出した。

文明を築いた。

それでもなお、最後まで答えを見つけられない問いがある。

だからこそ、人は神話を語り、

宗教を生み、

科学を積み重ねてきたのかもしれない。

私はノートを閉じた。

そして、次に向かう場所を決める。

世界中の神話でもない。

古代エジプトでもない。

次に知るべきなのは――

「子どもたちは、死をどう語るのか。」

感想やフォロー、大歓迎です😊
最後まで読んでくださって、ありがとうございました😌

前回の記事:第五章 神話という記憶

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