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18年後、一番残った言葉。

夜、本棚の前で足が止まった。

指先が、
少し色あせた背表紙をなぞる。

『宇宙兄弟』。

18年半、
そこにあり続けた背表紙である。

その背表紙を見るだけで、
あの頃の自分を思い出す。

新刊が出るたびにページを開き、

笑って、

悩んで、

何度も勇気をもらった。

完結した今、

「一番好きな場面は?」

と聞かれたら、
きっと答えに迷う。

心に残る名言も、
数え切れないほどある。


でも、

一番残った言葉は、
意外と短い一言だった。

「俺の敵は だいたい俺です。」

初めて読んだ頃は、

「かっこいい言葉だな。」

くらいに思っていた。


でも、
50代になった今、
この一言はまったく違って聞こえる。

私は、
ずっと何かのせいにしていた。

時間がない。

年齢のせい。

仕事のせい。

環境のせい。

AIのせい。

本当は違った。

記事を書こうとして、
手が止まる日。

新しいことを始めようとして、

「今さらかな。」

と思ってしまう日。

そのたびに、
私の前に立ちはだかっていたのは、

誰かではなく、

いつも私だった。


思い返せば、
外国の方に初めて日本語を教える日もそうだった。

本当に伝わるだろうか。

うまく教えられるだろうか。

そんな不安を並べていたのは、
私自身だった。

AIを使い始めたときも同じである。

便利そうだと思いながら、

「自分には難しいかもしれない。」

と決めつけていたのも、
やはり私だった。

『宇宙兄弟』は、
宇宙飛行士の漫画である。

でも、
私が何度も救われたのは、

宇宙へ行く方法ではない。

地上で立ち止まる人の心だった。

だから、
この作品は18年半もの間、
多くの人に愛され続けたのだと思う。


夢を叶えたからではない。

完璧だったからでもない。

迷って、

転んで、

立ち止まりながらも、

また前を向く姿があったからである。

物語は終わった。


でも、
私たちの毎日は、
まだ続いている。

今日の記事を書くこと。

日本語を教えること。

新しいことに挑戦すること。

どれも、
宇宙へ行くような大きな夢ではない。

でも、
私にとっては、
十分すぎるくらい大切なミッションである。

18年半読み続けて、
最後に残ったのは、

宇宙の景色ではなかった。

たった一つの言葉である。

「俺の敵は だいたい俺です。」

そして今なら、

その続きを、
自分の言葉で書きたくなる。

敵だと思っていたのは、ずっと自分だった。

だから今日くらいは、自分の味方になってみようと思う。





たった一つの言葉が、人を支えてくれることがあります。

こちらは、教室で出会った「言葉」のお話です。




#宇宙兄弟

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