交差点の向こうに、雨と彼女たち(大宮)
7月2日 7時45分、大宮駅に着いた。
街はまだ眠っていたが、湿気だけが目覚めていた。
便意に追われ、閉ざされた百貨店の前で足を止める。街に溶け込むには、まず静かに勝たねばならない。間に合った。それだけで今日は少しマシな日になる気がした。
小雨の降る中、氷川神社へと向かった。
長い参道を進むと、白と赤の装束が雨に滲んで見えた。巫女たちの朝は、静かに始まっていた。
蛇の池の前で立ち止まる。揺れのない水面に、自分の顔が映る。こうして、今日も“誰かでない何者か”として存在している。
ルミネ2のスタバで本を開く。
右隣は、夏の匂いをまとった男。左隣には、PCに夢中なサラリーマン。
しばらくして、静かなマダムが朝食をとる。上品な所作だった。
席が変わり、制服姿の女子高生が現れた。ノートに目を落とし、ひとり静かに勉強していた。やがて友人らしき少女がやってきて、声が跳ねた。
彼女たちは、交差点の向こうで別の季節を生きていた。
昼前、蕎麦屋に向かったが休みだった。
行きつけのラーメン屋「桜花」は満席。酷暑が襲いかかり、食べる気力も失せた。結局、丸亀製麺でぶっかけうどんを啜る。味は悪くなかったが、妥協の味がした。
ドン・キホーテへ。
カラコンと香水を物色する。求めていた品はあったが、値札を見て諦めた。もう少し迷っていたい気分だった。
外に出ると湿度がさらに増していた。空気がねっとりと纏わりつき、夏が街を支配し始めていた。
涼を求めてアルシェへ逃げ込む。
店内を無言で回遊する。何も買わずに、ただ居ること。
この都市では、それすらも一つの存在証明だ。
DOMの喫茶店「WEST」に腰を落ち着ける。
注文したアイスコーヒーを運んできたのは、不器用そうな若い店員だった。彼女の動きに、どこか危なげな美しさがあった。
視線の先に揺れる胸元に、思わず気を取られる。サングラスをかけていてよかった。
あるいは、彼女にはすべて見透かされていたのかもしれない。
夕方、6時前の電車に乗って帰る。
紺のノーカラーシャツに黒のスラックス、水色のサングラス。反射したガラス越しに、アメリカの警官みたいな自分がいた。
街を歩いただけの日。
交差点の向こうで笑う彼女たちの声が、まだ耳の奥に残っている。
