Vol.102 正露丸の匂いがする紅茶?イギリスで愛されるスモーキーな名茶「ラプサンスーチョン」の秘密
お茶を売り、お茶を学び、その魅力を共有する。 一杯の茶葉に詰まった歴史や健康の知恵を、皆さんと一緒に紐解いていく場です。
東京産茶葉の香りと共に、今日もお茶の奥深い世界をお届けします。
それでは、今日のテーマへ… note第102回目は、「セイロガンフレーバー」について。
みなさんは、イギリスのホテルで優雅にアフタヌーンティーを楽しんでいるとき、どこからともなく「あの懐かしい匂い」が漂ってきたらどう思いますか?
そう、日本人なら誰もが一度は嗅いだことがある、あの「正露丸」の匂いです。
「ラグジュアリーな空間に、なぜ正露丸…?」と耳を疑いたくなりますが、実はこれ、イギリスの格式高いアフタヌーンティーでは定番となっている、ある紅茶の香りなのです。
今回は、イギリスのアッパーミドルや紳士淑女に古くから愛されてきた、ちょっと意外で奥深い紅茶「ラプサンスーチョン(正山小種)」の秘密に迫ります。
■ 正露丸と紅茶の意外な共通点
この独特な香りを持つ紅茶の正体は、中国の武夷山(ぶいさん)にある桐木村で、今なお古くからの伝統的な製法で作られている「ラプサンスーチョン(中国語名:正山小種)」というお茶です。世界遺産にも登録されている美しい山水画のような土地で、この紅茶は生まれます。
驚くべきことに、この紅茶の香りは正露丸に「なんとなく似ている」というレベルではなく、科学的な理由があります。
ラプサンスーチョンは、茶葉を松の木で燻(いぶ)して作られるのですが、その際に生まれる独特な燻煙香(くんえんこう)が、正露丸の主成分である「木クレオソート(wood creosote)」の香りと非常に類似しているのです。
「正露丸の匂いの紅茶」と聞くと、日本人としては少し身構えてしまうかもしれませんが、イギリスではヴィクトリア時代後期に大ブームを巻き起こしました。当時の上流階級(アッパーグラス)の間でこのエキゾチックな香りがもてはやされ、今でも定番のメニューとして愛され続けています。
■ イギリス人にとって、それは「高級ウイスキー」の香り
当然ながら、イギリスの人々は日本の正露丸を知りません。では、彼らはこの強烈なインパクトを持つ香りを、一体どのように表現するのでしょうか。
彼らに「この紅茶はどんな香りですか?」と尋ねると、多くの方が口にするのが「スコッチウイスキー」という言葉です。
納得の理由として、モルトウイスキーも原料の麦芽を乾燥させるときに「ピート(泥炭)」で燻すため、独特のスモーキーフレーバーを持っています。正露丸を知らない文化圏の人々にとって、この燻製の香りは「大人の嗜好品であるウイスキーの上質な香り」として捉えられているのです。そう考えると、紳士淑女がこぞって愛飲してきた理由がよく分かりますよね。
■ お菓子じゃなくて「肉やチーズ」に合わせる
ラプサンスーチョンを飲むとき、一般的な紅茶のように甘いケーキやクッキーを合わせると、お茶の強い個性に負けてしまうことがあります。
そこでおすすめなのが、「チーズや肉料理」とのペアリングです。
お肉の脂っぽさや、チーズの濃厚なコクに対して、ラプサンスーチョンのスモーキーな風味が驚くほどマッチします。口の中でジャンルを超えた爽やかなマリアージュ(調和)を奏で、後味をさっぱりとさせてくれるのです。
■ 水の「硬度」で変わる、味わいのマジック
最後にもうひとつ、面白い雑学をご紹介します。それは、淹れる「水」によって味がガラリと変わるという点です。
実は、イギリスの硬水でラプサンスーチョンを淹れると、あの独特な香りがやわらかくなり、かなりライトでさっぱりとした味わいに仕上がります。
一方で、日本の軟水で淹れると、香りと個性がダイレクトに引き出されるため、より力強いスモーキーさを感じることになります。もし日本で飲んで「ちょっと香りが強すぎるな」と感じた方は、あえて硬水のミネラルウォーターを使って淹れてみると、イギリスの現地で愛されている本来の優しい味わいに出会えるかもしれません。
正露丸にそっくりな、ウイスキー香る紅茶。 その強烈な個性の裏には、歴史と文化、そして科学的なおもしろさが詰まっています。
もしどこかで見かける機会があれば、ぜひそのエキゾチックな香りと、お肉やチーズとのマリアージュを体験してみてはいかがでしょうか。
📌 次回は「世界のお茶(ロシア①)」についてお届けします♪ 最後まで読んでいただきありがとうございました!
それでは、また次回のnoteでお会いしましょう🍵 (スキ♡を押していただけると、勉強の励みになります!)
もし「毎日のお茶、ちゃんと飲んでみようかな」と思ったら、ぜひTre Leaf Tokyoの狭山茶ギフトを試してみてください🍃
🛒 Amazonはこちら
